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8/12

殿下のお話

「大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫です。少し休めば」


 シルヴァン殿下は私を空いている部屋に連れた。

 テラスに入るのは見られていないのだから、ここまで来れば気付かないだろう。


「飲み物でもお持ちしましょう」

「いえ、そんな…、お気になさらず」


 少しここにいてくださった方がありがたいのだが、シルヴァン殿下は私をソファーに座らせると、すぐに戻ると言って部屋を出て行ってしまった。


「ああっ。もう、どうすれば…っ」


 シルヴァン殿下の想いを知りながら、フェリシテお姉さまをテラスに連れるなど言語道断と言いたいところだが、お姉さまはいつも以上に楽しそうだった。

 フェリシテお姉さまがシルヴァン殿下と良い仲になれればと思っていたが、今のところシルヴァン殿下の想いは一方通行だ。だからお姉さまにその気になってほしいと思っていたのに、シルヴァン殿下の部下と良い雰囲気である。


 シルヴァン殿下に協力したいのは山々だが、一番の幸せはフェリシテお姉さまの幸せ。シルヴァン殿下がお姉さまに想いを寄せても、お姉さまの意思を尊重したい。


(先にお姉さまのお気持ちを確認すべきよね。今良い雰囲気のようだから、邪魔はしちゃいけないわ)


 フェリシテお姉さまには幸せになってほしいから、気になる方がいればその気持ちを大事にしてほしい。

 シルヴァン殿下のお気持ちを考えれば、シルヴァン殿下と恋仲になってほしいものだが。

 ため息しか出ない。賄賂だらけの私は協力一つできなさそうだ。

 ほうっ、と大きく息を吐いていると、ノックの音が響き、扉が開いた。


「あ、申し訳ありません。こちら使わせていただいてよろしいですか?」

「ええ。どうぞ。…どうかされましたか?」

「人にぶつかって、足を挫いてしまったようで」


 部屋に入ってきたのは二人の女性で、一人は痛そうに片足を引き摺っていた。私と違い、本当に足を痛めたようだ。

 仮面を被っているので誰だか分からないが、二人は別のソファーに座り込む。


「まあ、ドレスも汚れてしまっているわ。こちらを使ってください」

「ありがとう、ございます」


 私は女性にハンカチを差し出す。ぶつかって持っていたグラスを落としたのか、ドレスの裾が濡れていた。

 女性は少し泣いているのか、うわずった声で礼を言う。ショックだったのだろう。鼻を啜ってドレスを拭いた。


「ひどいわ。折角の素敵なドレスが。ぶつかってきた相手は覚えていらっしゃるの?」

 私が問うと、二人は一度口を閉じてお互いに顔を見合わせた。犯人が分かっているような顔だ。


「おそらくなんですけれど、バルバストル令嬢かと…」

「クリステル様、ですか? 王宮のパーティに??」


 シルヴァン殿下の元婚約者。クリステル・バルバストル。婚約破棄をされたとはいえ、王宮のパーティに招待されていても問題はないだろうが、王から叱咤されていながら招待を得られたのだろうか。


「どなたかを探していたようで、この子にぶつかっても睨み付けて罵ってきたんです。目元だけの仮面をされていましたが、その声が…」

「クリステル様に間違いありません。髪色が同じでしたし、あのような怒鳴り声と、居丈高な物言い。あのような失礼な方、他にいませんわ!」


 付き添いの令嬢が説明をしていると、痛みと悔しさか、怪我をした令嬢が嗚咽混じりに涙を流して言った。どうやら去り際に衣装についても文句を言われたらしい。捨て台詞で罵ってさっさと行ってしまったようだ。


「王宮のパーティですもの、シルヴァン殿下を探しに来たんだわ。婚約破棄の後お会いできていないのだろうし、未練があるに決まっているのよ!」


 婚約破棄の後、クリステル様は父親から謹慎させられている。王太子殿下の婚約破棄を王から言い渡された令嬢が社交界に戻るには時間が必要だろう。

 しばらく社交界に姿を現すことはないと思っていたが、クリステル様からすれば突然の婚約破棄。シルヴァン殿下をとられまいと関係のない令嬢たちを牽制していたほどなのだから、納得して謹慎しているわけではない。未練があって当然だった。


「招待などされるはずないのだから、誰かの招待状でも奪ったのよ。そうでなければ王が許すはずないわ」

 招待を受けていなくても、折しも仮面舞踏会。誰かの招待状を持っていればクリステル様でも会場には入られる。


「では、他人の紹介状を持って侵入しているかもしれないということですね。でしたら…、シルヴァン殿下を探しているんだわ」

「シルヴァン殿下もいらっしゃっているでしょうから、クリステル様はお話しする丁度良い機会と考えたのかもしれません」


 付き添いの令嬢は慮るように言うが、これが王に気付かれたら招待状を渡した人もクリステル様もタダでは済まないだろう。婚約破棄によりバルバストル様も立場を悪くされたが、もしクリステル様が再び問題を起こせば更に大きな問題になる。


 父親の立場などお構いなしで乗り込んできたのだろうか。

 これではディオンが言っていたように、バルバストル一族に多大な影響を及ぼすことになる。


「クリステル様はどちらの方に?」

「ダンスホールの方へ行かれました」


 私たちがこの部屋に入った時にすれ違っただろうか。シルヴァン殿下は帽子を取っているので、気付く人は多いだろう。

 飲み物を取ってくると言ってシルヴァン殿下はまだ戻っていない。もうクリステル様と鉢合わせたのではないだろうか。

 私は急いでダンスホールへと走った。


 クリステル様は真っ直ぐな銀髪と碧眼で細い肢体を持つ美しい女性だが、性格の悪さが滲み出る鋭い視線を向けてくる人。黙っていても目を眇めて横目で見てくるので、今日は誰があの目で睨まれているのかとつい視線を追ってしまうほどだった。


 シルヴァン殿下の前では大人しくニコニコ笑っていても、女性が近くに寄れば鼻持ちならないとわざと足を掛けたりグラスを傾けたりする。

 それはまだいい方で、シルヴァン殿下がいなければ途端暴言を吐いたり、嫌がらせなどを行った。


 シルヴァン殿下の婚約者は彼女一人なのだからおかしなことなどしなければ良かったのに、彼女はどうしてもシルヴァン殿下を独り占めしたいと、年頃の令嬢に釘を刺すような真似をしていた。


(美しい方なのに、自信がなかったのかしら。お父君の身分も高く、彼女の性格以外は問題なさそうだったのだけれど)


 わざわざ自ら欠点を晒すような真似、マイナスにしかならないのに、彼女はその態度を続けたのだ。

 愚かだと思われて当然だろう。

 そこまで彼女を浅慮にした理由は何なのだろうか。


(王太子殿下の婚約者という立場を自慢する雰囲気は幼い頃からあったけれど、さすがに子供の頃から嫌がらせはしていなかったわよね)


 彼女がそんな真似をし始めたのはいつだっただろうか。


 シルヴァン殿下を探していると、人々が同じような方向を向いているのに気付いた。ざわついているわけではないが、ぼそぼそと小声で話している者たちも多い。


 然もありなん。一人の女性がシルヴァン殿下の前に立ちはだかっていた。

 女性は仮面をしているようだが、顔は見えない。ただ髪は紛れもない銀髪で、カツラでなければクリステル様に違いなかった。


「……知らなかったとでもおっしゃるの? 初めから決められていたのでしょう。ずっと私を騙し、馬鹿にしてっ」

 そこまで大きな声ではなかったが、周囲がシンとしているので声が届く。クリステル様の声に間違いないが、シルヴァン殿下を批判しているようだ。


「それでこんなところまで来たのかい? このような真似をして、一体どうなるか、想像もしなかったと?」

「何もおっしゃらずに私を除け者したのはあなただわっ! 何もしていないのに、どうしてこんなことにならなければならないの!!」

 クリステル様は赤色の扇を片手で握っている。しかし、その扇がきらりと光った気がした。


「ならば、どれだけ注意をしても改善しなかったのは何故なのか、教えてほしいよ。君が行うこと全てに責任が伴うと知らなかったわけではないだろう」

 シルヴァン殿下は静かに答えたが、クリステル様は扇を握る手を震えさせた。


「選ばれた私を、蔑ろにするあなたが悪いのよ!」

「シルヴァン殿下!!」


 瞬間、クリステル様は扇を振り上げた。咄嗟に走り出した私が、クリステル様に体当たりをする。クリステル様は大勢を崩して床に転がったが、すぐに私をギッと睨みつけた。


「ブルレック家の…。また、お前なの!!」

 ぶつかった勢いで私の仮面が外れた。クリステル様は私を睨み付けると、まだ握っていた扇を再び振り下ろそうとした。


「結局、お前が!」

「リリアーヌ!!」


 クリステル様の振りかぶった腕がシルヴァン殿下に掴まれた。そのままクリステル様が一瞬で床に抑え込まれる。握られた手から離れた扇が、大きな金属音を伴って床に落ちた。


「ナイフが。扇にナイフが仕込まれている!」

「誰か、衛兵!!」

「女を抑えろ!!」


 周囲の声に兵が集まるとあっという間にクリステル様が捕らえられ、シルヴァン殿下が私に駆け寄った。


「リリアーヌ嬢!大丈夫ですか!?」

「私は、大丈夫ですが…」

「このあばずれ!お前のせいで、私はっ!!」

「さっさと連れて行け!」


 クリステル様が私を罵るのをシルヴァン殿下が怒鳴るように兵に命令して邪魔すると、すぐにクリステル様の声が遠のいていった。


「無謀にも、程がある! どうして、そうやって…っ!」

「シルヴァン殿下…?」

「何かあれば、どうする気だったんだ!!」


 シルヴァン殿下は言って私をぎゅっと抱きしめた。縋り付くように抱きしめてきた腕は震えているようだった。


「無事で、良かった…」


 私を抱きしめたまま囁くように呟いて、シルヴァン殿下はもう一度私を強く抱きしめた。





「何もなくて良かったわ」

「無謀だよ。隠しナイフを持ったやつに体当たりをするなんて」

「どこも怪我していないのだから、もうベッドから出ていいでしょう?」

「念の為よ。シルヴァン殿下から言われているでしょう」


 フェリシテお姉さまの言葉に、私はついため息をつく。

 屋敷に戻って、私はどこも痛くもないのに医者に調べられ、何故かベッドに寝かされ、フェリシテお姉さまとユベールに説教を食らっている。


 クリステル様に体当たりしただけで、ナイフで刺されたわけでも何でもないのに、精神的にショックもあるだろうからとベッドから離れることを許されなかった。


 あの後シルヴァン殿下は私を屋敷に送りたがったが、元婚約者が殺人未遂を起こしたことにより騒ぎを治める必要があり、私を馬車に乗せて見送った。

 そしてその後、シルヴァン殿下から送られた医者や警備の兵たちが屋敷に訪れ、私の状況を把握するためにアルフォンス様も派遣され、我が家は混乱に陥り私はしばらくベッドの上で待機である。


 今は部屋の扉前にアルフォンス様が見張り、廊下にも兵士がいることだろう。

 まるで監禁されているかのような気分になるのだが、それは間違いないと思う。


「クリステル様は、どうしてあんな真似をしたのかしら…」


 私はぽそりと呟いた。クリステル様は婚約破棄により社交界で肩身の狭い思いをすることが耐えられなかったのかもしれないが、仕込みナイフを持って王宮のパーティに来ただけでなく、シルヴァン殿下を狙おうとした。

 愛する方との道が途絶えたのは自分の行いのせいなのに、逆恨みでその相手を殺そうという発想が信じられない。


 私がそう言うと、ユベールは横目で私を見遣った。


「そもそも、バルバストル令嬢はシルヴァン殿下が好きだったわけ?」

「だって、あれだけ他の令嬢に嫌がらせしてたのよ?」

「嫌がらせをしていても、必ずしもその方を愛しているかは分からないでしょう」


 フェリシテお姉さまは視線をアルフォンス様に向けた。アルフォンス様はお姉さまの視線にほんのり眉を傾ける。


「バルバストル令嬢は王妃になることを望んでいた方です。バルバストル夫人もその意向が強く、それで婚約が決まったようなものでした」

 扉の前で直立したまま、アルフォンス様は淡々と答える。


「王妃の地位を目指されることに問題はありません。問題だったのは王妃の地位になれば、何をしても許されると思っていたことです」


 シルヴァン殿下の婚約者になれば次期王妃になったのも同然。その地位を奪われるわけにはいかないと女性たちを牽制していた。

 それだけでなく、王宮では我が儘も多く婚約者であることを笠に着て、侍女に暴力を振るったことも多々あったそうだ。

 それすら、許されると思っていたことが問題だったと言う。


「シルヴァン殿下とバルバストル令嬢の婚約はお二人が幼い頃に決まり、シルヴァン殿下もそれは納得されていましたが、バルバストル令嬢がいつ頃からか自らが地位の高い者だと勘違いをし始めたのです。シルヴァン殿下が何度となく注意をしてきましたが、それが正されることはありませんでした」


 それどころかシルヴァン殿下に、自分は婚約者になったのだから何故他の者を庇うのか、と反論してきたこともあったそうだ。


「バルバストル令嬢の愚行は看過できるものではありませんでした。かねてより周囲に横柄な態度をとっていましたが年々無視できないものになり、シルヴァン殿下が戒めても変わることがなく…」


 幼い頃はまだ子供だからと目を瞑ってきたが、大人になり我が儘が目に余るようになったため、シルヴァン殿下はクリステル様と行動を共にするのを控えたそうだ。

 それによって婚約者としての影響力が下がっていると本人に知らしめるためでもあったらしい。


 しかし、それで引き下がるようならば、婚約破棄にはならない。

 クリステル様はそれをシルヴァン殿下の心変わりと思い込み、逆に激昂してシルヴァン殿下にも暴言を吐いたりしたそうだ。


「バルバストル令嬢は自ら首を絞めただけです。もし素行が直らないならばシルヴァン殿下にも考えはあると、前々からバルバストル様にお伝えもしていました。それも何年も前に」

「何年も前に、ですか」

 ではやはり、ディオンが言っていたことは本当だったのだ。


「何年も前にです。それをバルバストル令嬢は反省することなく続けました。シルヴァン殿下には気付かれないようにしていたのかもしれませんが、周囲の反応は耳に届くものです。…詳しいお話は、殿下から直接聞かれるのが良いでしょう」


 アルフォンス様が話を終えると、丁度ノックの音が鳴り響いた。

 現れたのはシルヴァン殿下で、当たり前のように皆が部屋の外に出ていった。


「リリアーヌ嬢。お加減はいかがですか」

「私は、何も…」


 怪我も何もないのだから、お加減もないのだが、シルヴァン殿下が憂えげにベッドの側で跪いて問うてくるので、私は心配をお掛けしたことをまず詫びた。


「謝る必要などありません。謝るのはこちらの方です。あなたを危険な目に遭わせてしまった」

 シルヴァン殿下は逆に私に謝りながら、そっと手に触れた。


 何だかあれからやけにドキドキしてしまう。男耐性がないのにシルヴァン殿下に抱きしめられたからだろうか。やはりそこはシルヴァン殿下に麗しげな色気があるので、見つめられると心臓に悪いのだ。


「私が勝手に飛び出しただけなので」

 それに助けられたのはこちらだ。クリステル様は私に攻撃をしようとした。それを防いでくれたのはシルヴァン殿下だ。

 しかしシルヴァン殿下は首を振るとベッドの隣に座り、私の手を引き寄せた。


「大切なお話があります。聞いていただけますか?」

 シルヴァン殿下は私の手を握ったまま、じっと私を見つめる。ここで一体何の大切な話なのか想像もつかないのだが、シルヴァン殿下は真面目な面持ちをこちらに向けた。

 距離が近すぎて頭に熱がこもる気がする。心拍数が上がり切る前に私は何度も頷いた。


「本当は、パーティでお話しするつもりでした。リリアーヌ、婚約破棄から日も経たずこのような願いをお伝えする私を、不実だと思わないでいただきたい。

 私は私の名にかけて生涯の愛をあなたに誓います。どうか、私との結婚の申し出をお受けください」

「————————は?」


 一瞬耳を疑う言葉に、私は素っ頓狂な声を上げた。

(今、何とおっしゃった? 愛? 結婚?)


「わ、私ですか!?」

「ええ、あなたです。リリアーヌ。婚約破棄後にあなたの父君にもその話はさせていただいておりましたが、まずはあなたの意志を確認してからと釘を刺されてしまいました。ですので、何度もお声掛けさせていただきましたが、気付いてもらえない様子。ここは、はっきりとお伝えすべきと考えていましたが、このような事件に巻き込んでしまいました」


 婚約破棄後? それはいつの話になるのか。

 つまり、あの王の叱咤で起きた婚約破棄の後となれば、


「さ、最初から、ずっと…」

 シルヴァン殿下はお姉さまを誘うのではなく、初めから私を誘っていた。私がただ勘違いをしていただけで…。


「後日、お返事をお聞かせください。今日は色々なことがありすぎて混乱されていることでしょう。姉君のことも心配でしょうが、その心配もなくなるので」

「え、どういう意味…」

「次にお会いした時に、返事をお聞かせください」


 私が頭の中で狼狽えていると、シルヴァン殿下はそっと私の手を取り当然のようにその唇を近付けた。


(何で、キスをするんですか——————!?)


「本日はお休みください。またお会いしましょう」

 シルヴァン殿下はこちらの混乱に笑顔で返し、ゆっくりと立ち上がると部屋を出ていったのだ。

 私はただぽかんとその姿を見送って、ぎゅっと頬を捻ってみる。


「結婚、私が、殿下と?」

 夢だっただろうか。今起きたことは空耳ではなかろうか。

(シルヴァン殿下が私と結婚したい? お姉さまを差し置いて?)


「そんな馬鹿なことがあるはずっ、…ない、のに」

 シルヴァン殿下と話していると、冷静でいられなくなる。

 私が赤くなっている気がする頬をぱちぱち叩いていると、フェリシテお姉さまがにこにこ笑顔を湛えたまま部屋へ入ってきた。


「リリアーヌ、いいかしら?」

「は、はい。どうぞ、お姉さま」

「殿下と大切なお話はされた?」

 フェリシテお姉さまの言葉に私は頭から湯気が出そうになった。


「お、お姉さまは、ご存じで…?」

「ええ、前から知っていたわ」

 フェリシテお姉さまは当たり前のように、うふふと笑う。


 私がシルヴァン殿下とのきっかけを喜んでいたのを横目に、フェリシテお姉さまは私とシルヴァン殿下が話すことを逆に喜んでいたのだ。

 賄賂をもらった手前、フェリシテお姉さまを推していたつもりが、あれは普通にプレゼントでシルヴァン殿下に推されていたとは…。


(恥ずかしいどころか、シルヴァン殿下になんて失礼をしていたの!!)


「うふふ。私もね、大切なお話があるのよ」

 私が悶えていると、フェリシテお姉さまは幸せいっぱいだと、朗らかな笑顔を私に向けた。

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