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5/12

お散歩

「リリアーヌ、お夕食用にドレスをいただいたの。一緒に着ましょう?」


 部屋の案内が終わり旅の疲れに少し部屋でくつろいでいるところ、お姉さまが部屋にやってきた。後ろにメイドを従えて、これから一体どこのパーティに行くのかというように。


「その、後ろの方々は…?」

「お手伝いをしてくださるんですって。ほら、用意をしましょう」

「え、いえ。フェリシテお姉さま、そのドレス、いただいたって、私もですか??」

「あなたのドレスよ。リリアーヌに似合う色ね」


 そのドレスは白と青を基調にしたドレスで、お姉さまのドレスは白にオレンジや金色が混じっている。瞳や髪の色を考えたらドレスは逆のように思えた。


「あの、お姉さまがこちらの青のドレスではないのですか?」

「いいえ、こちらがあなたのドレスよ」

 メイドたちが私に青のドレスを合わせ、お姉さまにオレンジのドレスを合わせる。


(好きな色を先ほど聞かれたばかりなのに、私とお姉さまの好きな色…?)


 フェリシテお姉さまの好きな色は知らなくとも、瞳の色ではなく髪の色で合わせて作ったのかもしれない。髪に合わせたお姉さまのドレスを暖色にすれば、別の色として私のドレスは寒色になる。お姉さまに似合うドレスを先に作ったのならば納得だ。

 食事のためにドレスを用意してくれているのも驚きだが、私の分まであり、そしてサイズがぴったりなのが恐ろしい。


(賄賂、賄賂が嵩んでいくんですけれども!)

 ドレスまで用意して、シルヴァン殿下の本気が伝わってくる。


「フェリシテお姉さま、素敵です!!」

 着替えたフェリシテお姉さまを見て私はうっとりしてしまった。メイドたちもお姉さまの美しさにほうっと息を吐く。メイドたちまで虜にしてしまうその姿。シルヴァン殿下は惚れ直すだろう。


「あら、あなたも素敵よ、リリアーヌ。そのネックレスにも合っているわ」

 いただいたネックレスは青色だったので、ドレスにも丁度良かったが、あまり突っ込まれたくない。今の私の姿は賄賂の塊である。


(最低な妹と罵ってください。お姉さま)


 シルヴァン殿下はあの後も質問を続けた。時折自分に聞いているのではないかと勘違いしそうになったが、色々尋ねられて私はそれにしっかり答えたつもりだ。


(賄賂のためにお姉さまを売ったわけではありません。殿下はお姉さまにお似合いだと思い、情報を殿下にお渡ししたまでで!!)


 賄賂がすぎて私は心の中でフェリシテお姉さまに長い言い訳をする。こんな賄賂をいただかなくても、お姉さまを推すのに、なぜここまで至れり尽くせりなのか。

 フェリシテお姉さまだけを優遇するわけにはいかないのは分かるが、賄賂が重い。




 食事のために部屋を移動すると、そこにはすでにシルヴァン殿下やアルフォンス様たちが席に着いていた。


「やあ、二人とも素敵ですよ」

「このようなドレスまで用意していただき、ありがとうございます」


 フェリシテお姉さまがシルヴァン殿下に礼を言う隣で、私も同じように礼を言う。

 シルヴァン殿下はお姉さまが部屋に入った瞬間少しだけ呆気にとられたような表情を見せたが、すぐに嬉しそうに微笑んだ。

 きっとお姉さまの美しさに目が眩んだのだろう。


「どうぞ、座ってください」

 その促しに、なぜかフェリシテお姉さまがアルフォンス様の前に座ろうとする。

 席はシルヴァン殿下、アルフォンス様、エディット様の順に座っている。エディット様の前はすでにユベールが座っていたので、空いているのはシルヴァン殿下とアルフォンス様の前だ。

 だが、フェリシテお姉さまが座るのはシルヴァン殿下の前だろう。


「お、お姉さま、お姉さまはこちらに」

 ぽそぽそ耳打ちする私にフェリシテお姉さまは気付かないか、そのまま席に座ってしまった。


(お姉さまあ、何でそこに座るんですか!! 順番からいってもお姉さまが殿下の前でしょう???)


「さあ、リリアーヌ嬢も座ってください」

 もう座ってしまったフェリシテお姉さまを動かすのは諦めたか、シルヴァン殿下は私に自分の前に座るよう言ってくる。


(お姉さまより先に座るべきだったわ。お姉さまは殿下の前に座ろうなどと考えもしないのだから)

 仕方なく私がシルヴァン殿下の前に座り、フェリシテお姉さまがアルフォンス様の前に座るという図になってしまった。


 アルフォンス様は少なからず歓迎しているだろう。どこか嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。アルフォンス様はシルヴァン殿下の部下でありお友達のような方なのだから、シルヴァン殿下がフェリシテお姉さまを狙っているのは分かっているはずだ。

 ここでシルヴァン殿下の足を引っ張る真似はしないと信じたい。

 なのに、フェリシテお姉さまはアルフォンス様の正面だからと、アルフォンス様の方に視線を向けた。


(お姉さま、そこは気にせず殿下の方を向いてください〜〜〜!)


「口に合いますか?」

「とても美味しいです」


 シルヴァン殿下は前にいる私に仕方なく話しかける。気にせずフェリシテお姉さまに話し掛けていただきたいのだが。いや、ここは私が誘導する番だ。


「お姉さま、こちらとても美味しいですね。お姉さまの好みの味付けではないですか?」

「ええ。とても美味しいわ。この味はあなたも好きでしょう?」

「はい。私も大好きな味付けです!」


 お肉のソースはこってりな濃い味付けではなく、柑橘系のさっぱりした味付けだ。フェリシテお姉さまも好きだが私も好む味付けである。おかげでぱくぱく食べられてしまって、食の進みが早い。


「それは良かったです。デザートもありますから、ゆっくり食べてください」

 シルヴァン殿下は微笑ましそうに言ってくれたが、私が一生懸命食べてどうするというのだ。フェリシテお姉さまもお姉さまで私に反応を聞かなくていいだろう。


 頬張っている間に、フェリシテお姉さまはアルフォンス様と雰囲気良く話しだした。味付けの話題から派生してどんな料理を好むのか、なぜかお姉さまがアルフォンス様に聞いている。

 しかも同じ料理が好きだと、フェリシテお姉さまは目を細めて喜んだ。


(お姉さま、どうして殿下にそれを聞かないんですか!? 殿下も、そこは一緒に話してくださいよ!!)


 私の心知らず、フェリシテお姉さまはアルフォンス様の方を向いたまま。シルヴァン殿下に至っては、こちらを見てにっこり微笑んだ。


(殿下、微笑んでいないで。おたくの部下がお姉さまに粉かけてますよ! あれ、何とかした方がよろしいんじゃないんですか!?)


 まずはアルフォンス様に遠慮してもらわなければ。私はシルヴァン様に目で訴えるが、シルヴァン様は、麗しい笑顔を向けてきた。


(私にその笑顔を向けて、どうなさるんですかあ!!)


「明日は近くの湖にご案内します。珍しい鳥が渡ってきていて、美しい場所なんですよ」

「素敵ですわ。お姉さま、楽しみですね!」

「ええ、楽しみにしております」


 シルヴァン殿下のお誘いに、私はすぐフェリシテお姉さまに同意を求める。せっかくのドレスをいただいても、お姉さまは律儀に前にいるアルフォンス様に視線を合わせてしまうのだ。


(くっ、駄目だわ。こうなれば私が接点を持たせるしかない。安心してください、殿下。邪魔の入らぬよう、明日はちゃんとお手伝いいたします!)


 簡単な誘導では無理だと悟った私は、強硬手段に出るしかないと決意したのだ。





「ですので、早朝、お散歩なんていかがですか?」

「そんなことで、わざわざ私の部屋に?」


(そんなことではないでしょう。あなたのことよ!)


 私は夕食後、殿下のお部屋の前に訪れていた。

 フェリシテお姉さまと夜、庭園でも散歩をしてほしい気持ちもあったが、さすがに婚約前の男女が二人で夜の庭園を歩くのは外聞が良くないので、早朝はどうかと提案をしにきたのだ。

 あのままではシルヴァン殿下もフェリシテお姉さまも進展がなさそうなのだし、ここは偶然を装って早朝会うよう仕向けたい。


「少し、お茶をしましょうか」

 どこか笑顔が強張っているように見えたが、シルヴァン殿下は私に部屋に入るよう促す。


 夕食後、そこまで遅い時間ではないが、男性の部屋に一人で入るのはそれこそ外聞がよろしくない。

 追い掛ける足が遅くてシルヴァン殿下のお部屋の前になってしまっただけで、お部屋の中に入る気はさらさらなかった。

 しかし、躊躇っていると、シルヴァン殿下がぽそりと呟く。


「そこにずっと立っていた方が、メイドたちはどう思うだろうか?」

「も、申し訳ありません!」


 私は急いでシルヴァン殿下のお部屋に入り込む。お部屋はシンプルでもとても重厚なあつらえで威厳さえ感じるような部屋だった。

 私が入るようなお部屋ではない。お部屋というより執務室のようで、仕事でもするのか大きな机が部屋の中を陣取っている。


 いや、シルヴァン殿下は仕事があるのではないだろうか。

 フェリシテお姉さまのために時間をつくったのだろうし、一人でいられる時間は仕事をするつもりだったのかもしれない。それで早朝などと言っては、シルヴァン殿下に無理をさせてしまう。


「お仕事を、なさる予定だったんですね。散歩の件は私の早計でした」

「…構わないですよ。そうだな。では、早朝散歩をしましょう。約束しましたよ?」

「は、はい! 承知しました!!」

「君はいつも一生懸命ですね」


 シルヴァン殿下は私の返事に、ふっと笑うと、そろりと私の髪に触れた。

「明日の朝、楽しみにしていますよ」


 そう言って、シルヴァン殿下はその髪に口付けたのである。





(私には殿下は刺激が強すぎる! お姉さまならあれくらい、いつものにっこり笑顔で返すでしょうけれど、私には無理!!)


 シルヴァン殿下は婚約者がいた身。女性に対して慣れもあるのだろうが、ああいう慣れた真似はフェリシテお姉さまだけにしてほしい。

 顔が火照った気がするが、見られる前に逃げられたと思う。シルヴァン殿下はお仕事をしたかったのに私が邪魔をしたせいで少し機嫌が悪かったのかもしれない。


(私が男慣れしていないことを感知し、髪に触れたのでは? もしくはもっとちゃんと協力しろと言う、無言の圧力!)

 ここは明日朝の散歩を必ず成功させなければならない。


「あら、リリアーヌどこへ行っていたの。ユベールと探したのよ。お茶でもどう?」

「お姉さま、明日の朝、庭園のお散歩をしましょう!!」

「散歩? 明日、皆と行ったらどうかしら?」

「いえ、早朝の、澄み切った空気の中、お花の匂いを嗅ぎながら庭園を歩くのも一興かと! 朝はやっぱりお花の見え方も違うと思うのです!!」


「急に何、言ってん…っっ!」

 私はソファーに座るとフェリシテお姉さまに提案した。お姉さまの部屋で既にお茶をしていたユベールのお腹に肘打ちを繰り出して。


「それも素敵ねえ。三人で?」

「いいえ、私とお姉さまと、一緒に、二人で、お庭探索を!!」

「魂胆、がっ!」

「ユベール、もう眠ったら? お茶も飲んだでしょう?」


 私はしれっとユベールの足を踏み潰した。ユベールは悶えるようにしてカップを置くと、痛みを堪えるように立ち上がる。


「あら、もう眠るの、ユベール?」

「ああ、もう眠るよ」

「お姉さまも、もう眠ってください! 朝、私が起こしに参りますから!! 今日の肌は明日のために! 早寝、早起きですよ! いいですね!!」


 フェリシテお姉さまには早く眠ってもらい、明日に備えてほしい。そのためには私も早く眠らなければならない。お姉さまは朝がのんびりだ。間違っても遅刻など許されないのだから、私が早起きして起こす方が安全だ。


「リリアーヌ姉さん、気付いてないの?」

「何のこと?」

 フェリシテお姉さまの部屋を出るとユベールが聞いてきたが、脈絡がないので首を傾げる。


「いや、いいけど。明日、フェリシテ姉さんは絶対起きないに賭けるわ」

 捨て台詞が最悪である。ユベールはそう言って自分の部屋に戻ってしまった。

「何なの! 分かってるわよ。私が、お姉さまを起こしに来るから!」


 そうして決意した次の日の朝、私は急いで用意をしてフェリシテお姉さまの部屋へ向かった。

 散歩に行こうからの、忘れ物をしたから好きに回っていてと言ってフェリシテお姉さまを庭園に置いていく計画だ。待ち合わせ場所に置いて行けば、シルヴァン殿下が丁度来てくれるという算段である。

 そのためには、少し早く待ち合わせ場所にいなければならない。


「お姉さま、おはようございます。お姉さま! 起きてください。もう朝ですよ!!」

 案の定、フェリシテお姉さまは起きてもいなかった。

 私は急いで掛け布団を引っ剥がそうとする。しかし、フェリシテお姉さまも然る者。お布団をがっちり掴んで離さない。


「お、ねえ、さ、まあああ!!」

「もう少し、眠らせてえ〜。眠るの、遅かったのよお〜」

「何でですか! 早く眠ってくださいとお伝えしたのに!!」

「枕が違って、眠れなかったのお〜」


 フェリシテお姉さまがそんな神経質のはずがない。枕ごときで眠れなくなるようなか細い神経など持ち合わせてはいない。むしろ私の方が早起きをするぞと考えすぎて、ほとんど眠れなかった。


「起きて、お肌のお手入れして、髪の毛も綺麗に、お化粧もして、私が、手伝いますからああ!」

「無理。無理よお〜。体調が悪いの〜」

「お姉さまああ!」

「もう少し眠らせてええ。体調が、ゲホゲホ。少し咳も〜」


 フェリシテお姉さまは梃子でも動かぬと、お布団の中で丸まった。

 これは、シルヴァン殿下に謝って来なければならない案件ではなかろうか。こちらから早朝の散歩をお誘いしておいて、フェリシテお姉さまが行けないなどと、何たる不敬。

 賄賂をいただいておきながら、この体たらく。


「私、抹殺されないかしら…」

 昨夜はお部屋が寒かっただろうか。外は少し涼しかったのに、フェリシテお姉さまは窓を開けたまま眠ってしまったのかもしれない。

 少し咳もしていたし、それを理由にお断りするのも申し訳ないが、しかしフェリシテお姉さまはベッドから出ようとしないのだから、とにかく謝りに行かなければならない。


 気が重い。折角約束を取り付けたのに、すぐ反故にするなど。

 シルヴァン殿下は楽しみにしていただろうに。


 待ち合わせ場所の庭園。ふらふらしながら入り口にある乙女の像の前に行くと、そこにはシルヴァン殿下がポツネンと立ち尽くしていた。


(え、どうして。まだ時間には早いのに。もういらっしゃっている)


「お、おはようございます。でん、」

 駆け寄ろうと走り出したら、何かにつまずいた。勢いよく転びそうになった瞬間、何かにぼすんとぶつかる。

「大丈夫かい?」

「で、殿下!」


 まさかのシルヴァン殿下が受け止めてくれた。最悪なことにシルヴァン殿下に抱きつく形になって、私は礼を言って急いで体を起こした。


「あ、ありがとうございます! 申し訳ありません。お待たせしてしまって!」

「少し早く来てしまったのは私の方だから、気にしなくていいですよ」


 朝から穏やかな笑みを見せられて、私は顔が赤らむのを感じた。

(早朝から間近で見る顔ではないわ。目に毒すぎる)

 シルヴァン殿下は藍色の瞳をこちらに向けるが、つい視線を逸らしてしまった。直視するには眩しすぎるのだ。


「あの、こちらからお誘いしておきながら、お姉さまの体調が悪く、お姉さまを連れて来ることができませんでした。申し訳ありません」


 私は深く頭を下げた。折角の二人きりになれる機会だったのに、フェリシテお姉さまが来られないとは、シルヴァン殿下はがっかりしただろう。

 ちろりと見上げると、シルヴァン殿下は微笑みを湛えていた。怒ってはおらず、優しげに笑んでくる。


「せっかく来たのですから、このまま庭園を歩きましょう」

「ですが、お姉さまは…」

「フェリシテ嬢は少し離れた場所に来て疲れてしまったのかもしれませんね。体調が悪いのであれば、湖にも行けそうにないでしょうか?」

「い、いえ! きっと大丈夫です。今、眠っていれば!!」

「そうですか。では、もう少し休ませてあげた方が良いでしょう。時間はありますから、庭園の散歩をしませんか?」


 シルヴァン殿下は手を差し出してきた。その手を受けるのは私の予定ではなかったが、フェリシテお姉さまのためにも時間を稼がなければならない。

 私がその手を取ると、シルヴァン殿下はゆるりと笑んだ。


(お優しい方なのね。無理を言って来ていただいたのに)


 シルヴァン殿下は私の足の歩幅に合わせてゆっくり歩くと、庭園の説明をしてくれる。

 初夏に近いこの時期、春の花から夏の花に変わり始めていたため、花の種類は多い。朝露に濡れた花々は美しく、恋人同士が歩くにはもってこいの場所だった。

 夜であればもっと雰囲気が良いだろう。フェリシテお姉さまがここにいるはずだったのにと思うと、私も気落ちしそうになるが、庭園の美しさに時折感嘆のため息をついた。


「良い香りがしますね」

「本当ですね。たくさんお花が咲いていて」

「あなたのことです。リリアーヌ嬢」

 シルヴァン殿下は、そろりと髪に触れる。


(どうして髪に触れるのですかああ!?)


「お、お部屋にあったものを使わせていただいたので、その香りだと思います。寝台にあった香水がとても素敵な香りだったので、使わせていただきました」

 私はさっと一歩下がり、その手から逃れる。

 お部屋には色々なアメニティがあり香水も置かれていた。香りの種類も豊富で選んでいるだけでも楽しかったのだが、


「私の好きな香りです」

(それを狙って選んだわけではありません——————!!)


「気に入っていただけたのであれば、この香りをプレゼントさせてください」

 気に入っても、そんな物をもらったら、また賄賂をもらうことになってしまう。さすがに物をいただきすぎだし、フェリシテお姉さまも手にしていない物をもらうわけにはいかない。


「お姉さまには…」

「アルフォンスが渡しているでしょう」


 いつの間にかシルヴァン殿下はアルフォンス様に香水を渡していたようだ。ならば、私の香水はおまけと言ったところか。それならばと安堵する。


「では、いただいてもよろしいでしょうか?」

「もちろんです。あとでお送りしましょう」

「ありがとうございます」


 礼を言いながら私は思う。

 賄賂が増えていく………。まだフェリシテお姉さまと二人きりにもできていないのに。


 その後、結局私はシルヴァン殿下の案内で、早朝から二人きりの時間をゆっくりと過ごしてしまったのである。

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