第十三話 第一次カチャオ戦争 続
俺のチートは「ラブホ」だった件
第十三話 第一次カチャオ戦争 続
どこまでも続く夏の終わりを知らせるうろこ雲。
どこまでも続く業火に焼かれた川。
どこまでも続く業火に焼かれた川岸。
クリエント帝国とシュナイト王国の連合軍先遣隊は業火に包まれ大部分の兵を失い陣を北へ移した。
「くそ!外道が!騎士の戦いをなんと心得るのか!あの忌々しい似非魔術師が!」
そう周りの側近へ当たり散らし、そのでっぷりとした巨体を木製の椅子に腰を掛けたのはシュナイト王国に落ち延びたジョナサン3世の従兄にあたるクリントン=フォン=シモントであった。母であるクリスチャンの命にて先遣隊を指揮していたのであった。さらに報告により略奪した民や金品が
別動隊により奪い返されたことを聞くと怒り狂ったのである。
「覚えとけよ!本体がきたら、切り刻んでやる!」
ユウキ達はというと・・・
「クシュン。クシュン。」
「ユウキ。風邪?」
「いや、アリス。噂話されたかな。美女に。ニチャア」
「う。きもい。まあ、どうせ敵さんでしょ?あんな初手から外道な方法だったから・・・さすがに最初からあれはないんじゃない?」
「そんなに言わないでよ!僕ちん徹夜で仕込んだんだから!スキルっていっても大変なんだからね!」
「そんなにかわいく言ってもやったことはえげつないからね。味方までドン引きよ?」
「ははは。まいったな・・・だけど、これが戦争だよ・・・悲しいことにね。」
「ユウキ・・・。」
カチャオ領軍の反撃はここまでであった。連合軍本隊が到着しその数の差により奮戦むなしく元の防衛線の平城まで押し返された。
のはずだが連合軍の兵士たちの姿は悲壮漂うものになっていった。ぬるぬるに濡れている兵士。自慢の光輝く鎧が焦げて煤がついているもの。半分焼きただれた台車を引いている糧兵隊。全身植物の蔦が絡まっているもの。戦いに勝ち敵を責め立てているはずの軍隊の姿ではなかった。
ユウキはババアズを連れゲリラを仕掛けていたのであった。朝駆け夜討ちは当然で落とし穴やブービートラップなんでもありであった。
「はーはーはー。ははははは。さすがにきついな・・・もうあれから1週間か・・・。アリスたちは平城まで戻れたかな?」
「ええ。大丈夫ざます。さっき切り込んだ時に平城にアリス様の将旗が見えましたざます。」
「三人とも無茶させてごめんね。お手当ははずむからさ。勘弁して。」
「なんの。なんの。久しぶりに全開で燃やせたからワシは満足しとる。」
「私も久しぶりに森を生やせたからうれしかったわ。」
「私も久々に斬りまくったのですっきりしました。いい気分ざます。」
「たくっ。昔と同じじゃないか。三人とも。まったく、度し難いな俺たちは。はははははは。」
「え?私たちの事、覚えてたんですか?」
「忘れないさ。あんなに戦場で悲しい顔しながら戦ってた三人の顔はね・・・さてと。ゴホン。」
ユウキは柄でもない事を言ったせいで顔を珍しく赤くしユウキ達を囲んでいる連合軍兵士達を土壁代わりにしている大岩から眺めたのであった。