第十話 戦争の足音
俺のチートは「ラブホ」だった件
第十話 戦争の足音
どこまでも続く夏の終わりを知らせるうろこ雲。
どこまでも続く深緑の森林。
どこまでも続く黒土の街道。
HOTEL月の禍々しいピンクのネオン看板は心なしかさみしげである。
作業部屋で4人が同時に溜息をついていた。
「ひまじゃの。」
「ひまざます。」
「ちょっと、ユウキ。ひまじゃないの。」
「ひまだねー。」
HOTEL月。開業以来初めての閑古鳥が鳴いたのである。国王達の襲来依頼、客足が少しずつ遠のいて気づけば1日1組入ればいいほうである有様になった。
「まあ、戦争が始まったからね・・・うちの主力のお客様の冒険者たちが傭兵として戦場にいったからね・・・。」
「そうじゃの。冒険者もじゃが、貴族も来なくなったのお。」
「いやみさんが言うように貴族の皆さんも戦争や領地に詰めてるから王都にいないんですよねー。いやー参った。ははは。」
「ユウキさんも戦争に行くように陛下から依頼されてましたよね?」
「そうなんだ。ロリババアさん。『だが断る』って言ったけどさ。」
「なぜ見栄を張ったのじゃ?そなたのそのちっぽけなプライドのせいで暇なんじゃよ?」
「イヤミさん。そんなに言わないで。戦場は大変なんですよ?泣いちゃいますよ。」
「我ら3人とも人生のほとんどを戦場で過ごしてきておる。なれておる。」
「そうなんですね。少しお話を伺いましたが皆さん結構ハードな人生ですね。」
ジーゼル・マグスター
今はただの嫌味ババアだが「炎鬼」という二つ名を持つ古兵である。齢12歳より戦場に立ち戦場を転戦してきた。最終的には魔導士部隊の総司令官を務め引退しHOTEL月に来たのであった。彼女の通った後は燃え尽きた白い灰しか残らなった。
ヘンリエッタ・ミニアレム
今はただのざますババアだが「狂乱」という二つ名を持つ古兵である。元々某王国の騎士団長を務め他国からの侵略への防衛戦争にて笑いながら1万人を切り捨てたと言われる元騎士である。普段は知的な様子なのに戦場に出た時の真逆の狂い姿は歴戦の騎士たちも震え上がった。
シルフィール・レグイヤ
今はただの食いしん坊ロリババアだが「すべるもの」という二つ名を持つ古兵である。今は亡きレグイヤ森林のエルフ国が侵略された70年余り強大な侵略国相手に贖い続けた英雄である。彼女のいる戦場ではすべてのものが彼女に従うと言われるほど不自然に彼女の敵に自然の猛威が襲い掛かったのであった。彼女のいた戦場では屍から森ができると言われている。
3人はユウキと初対面を装っているが実は一方的に知っていたのである。ユウキが募集を出したときすぐに飛びついたのである。恩を返すために・・・
「よし!決めた。HOTEL月。戦場へ出張します!。」