〜電話〜
「もしもし、コバケンだけど......浩太か?」
「もしもし……って、え? コバケンってあのコバケン?」
「そうだよ! 話すの久しぶりだな。何年ぶりだ?」
小学生の頃の親友、小林健太からの約10年ぶりの電話だった。
「ははっ、マジかよ! 今お前なにしてんだよ」
「俺は実家の酪農継いだよ。もう結婚もしてるしな。お前こそなにしてんだよ」
「えええ! 知らなかった。俺か? 俺は上京して大学出て、新卒の会社員やってるよ。もう毎日バタバタで休まる気がしねぇ。もう東京の一人暮らしには慣れたけどそろそろ彼女の一人や二人は欲しいなぁって」
「いや、彼女は一人じゃなきゃ駄目だろ」
久しぶりに聞く健太の声は成人男性らしい野太い声にはなっているが喋り方の癖やイントネーションは昔と全く変わっていない。
俺のちょっとしたジョークにもちゃんと聞き逃さず反応して、すかさずツッコミを入れてくれる。やっぱりコバケンは最高の親友であり相棒だ。
「ていうか彼女が欲しいって言ってるけどよ、みっちゃんとは連絡取り合ってないのかよ。イイ感じだったじゃん」
「イイ感じ……だったかどうかは知らねえけど、小学校卒業して引っ越してからは没交渉だよ。みっちゃんか、懐かしいな」
みっちゃんとは近所に住んでいた中野美里のことである。
幼馴染というやつで恋愛対象に見たことはない。
なのにいつも一緒に遊んでいたから周りが勝手に勘違いして、いつの間にか一部からはカップル扱いされていた、みたいな。
そんな感じだ。
でも健太は俺と美里がそういう関係じゃなかったことをよく知っているはずである。
「でもなんで急に電話なんか」
「浩太。卒業式の時にみんなで埋めたタイムカプセルを覚えてるか? その中身を開けようって約束した日付けが来週の日曜日なんだよ。新卒で忙しいと思うけど……来れない?」
そういえばそんなものを埋めた気がする。
すっかり記憶から抜けていた。
「ちょっと予定確認してみる……」
予定を確認したら来週の土日は何もないし、月曜日も祝日で三連休だ。
来週地元の田舎に戻ることが決定した。