出逢い
目の前に天使がいた。
私、死んだの?実は死んでた?
いや、待って
「寂しいんでしたらお姉さん、私と一緒に帰りませんか?」
「えっと、その......」
笑顔で小学生の女の子はニコニコとこっちを見ている。ツインテールに縛られた腰まで届いた黒髪に、小学生らしい小さな背丈にピンクのランドセル。
そして、過去の自分を思い返すかのような大きな瞳。下向きながらも、チラチラとその娘の顔を見てモゴモゴと口を動かしていると──
「早く、返事して下さい。お姉さん、それでも中学生ですか?」
天使の顔した小学生の娘に凄まれた。
なんだコレ可愛い。じゃなくて返事しなきゃ!私、仮にも年上なんだから!
「......はい、寂しいです。一緒に帰って下さい、お願いします」
「はい、喜んで。言えるじゃないですかお姉さん。じゃあ、そこの公園まで歩きましょう」
ナチュラルに手を繋いで私を引っ張っていく小学生。初対面なのに、初対面で既に年上と年下が見事にひっくり返っている。しっかりせねば。
「お、お嬢さん、名前はなんて言うのかな?」
「私は安逹川ひまりって言います、初めまして。小学3年生の女の子です!お姉さんは、よ──いえ、なんて言うんですか?」
「わ、私は、吉元りんご。中学2年生だよ。ひまりちゃんって呼んでいいのかな?」
「もう名前呼びですか!早い!早過ぎませんか?全然いいですけど......アリっちゃ、アリですけど。じゃあ私も......」
「りんごさんって呼んでいいですか?」
ひまりちゃんは、目を開いて驚いて、顔を赤くして、照れてそう言った。
最初見た時のクールな感じがしたひまりちゃんの、そのコロコロ変わる表情は
見ていると
なんかこちらも嬉しくなってしまい、年上年下関係なくなってきて私も笑顔で
「もちろん。よろしくね、ひまりちゃん」
「ちょ、ちょ!お姉さん!なんで泣いてるんでしか!?」
不意に涙がこぼれていた。先ほどまでの冷たい涙じゃなく、嬉しくてこぼれた、温かい涙が私の頬を伝っていた。辛いときに声をかけられるのが、こんなに染みるなんて──知らなかった。
「もー、そんなに私と名前呼びしあったのが嬉しかったのですか?確かに名前呼びは重要ですから、ドラマチックでいい感じではありますけど──大丈夫ですか、りんごさん?」
年下の小学生に手を引かれながら、嗚咽を堪えられない私は静かに泣いた。心配しながらも優しい笑顔でこちらを見るひまりちゃんだった。
続く