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第二話

一応ヒロイン登場です。

僕は夢を見る。


果てしなく、長い夢。


そして、その夢の先にあるのは……



世界の真の姿。





―――ああ、世界はこんなにも美しい姿をしているんだ―――




(あれ?いつもならここで夢が覚めるはずなのに……どういうことだろうか?まだ夢を見ている?)


 とも思ったが見渡す限り真っ暗。闇の中だ。暫く待ってみても、一向に目が覚める気配はない。


(まさか、僕は一生このまま目を覚ませないとか……そ、そんなわけ、ないよね?ね?)


 闇は何も答えない。


(え?嘘でしょ?)


 誰も答えるものは居ない。だが、少しするとそれは始まった。





―――ザッ、ザーッ――――



「ふぅ、ゲームはこのくらいにして、学校に行きますか」


(あっ、また変な言葉・・・でも、あれ?昨日とは違って聞き取れてる?)


 すると見たことのない部屋がそこのはある。やはり、昨日見た建物同様、変な鉄が置いてあったり、陶器のようなものがたくさんおいてある部屋。でも、貴族様みたいな大きな部屋ではない。これは一体どういう部屋なのだろうか。


「今日の予定は~っと」


 カバンのようなものからとてもきれいに作られた本が出てきた。


(やっぱり、貴族様なのかな?)


「ん~、ああ、そっか。来週の演奏会の合わせあるんだった……サボれないし……でも、徹夜明けじゃまともに声も出ないしな~……ん~、練習室で寝よ」


(い、言ってることがわけわからない。いや、何を言ってるかは聞き取れるんだけど……)


 すると、彼は家を出た。そして、僕は驚いた。


(え?なにこれ)


 そこには今まで見たことない光景が広がっていた。


「さてと、この時間はまだ学食開いてないから、コンビニかな?」


 灰色の石できれいに整地された道。レンガではない石で出来た建物。草木は少ない。そこまでは良かったが「コンビニ」に何より驚いた。


(う、嘘!建物の中が、光の魔道具でいっぱい!何でこんな大量に光を放つ魔道具を!こんなに大量に使ったら、お金がいくらあっても足りないじゃないか!)


「おっ、おにぎり100円セールやってるし……10個は買おう」


 彼は陳列している商品を手に取り、店員へと持っていき、商品を見たことのない、紙のようなものと硬貨で支払いをしている。


(ここは、店なのか?あの硬貨は一体いくらぐらいなのだろうか?それと、あの紙はなんだ?紙がないと買えないのだろうか?それにしても、大きなお店だ・・・見たことないものが大量に置いてある・・・すごい)


 彼は店を後にすると、目的の場所へと歩きだす。しばらくすると、とても大きな場所へとたどり着いた。そして、彼は建物の中へ入っていく。


(こんな、建物、どうしたら人の手で建てられるんだ?昨日の夢で見た建物もすごかったけど、改めて見ると、人間が作ったとは思えない……ここは魔物と共存しているのだろうか?)


 暫く歩いていくと、小さな部屋が大量にあるところへ来た。そして、おもむろにその部屋へと入っていく。そこには黒い物体があった。


(これ、なんだろ?)


「よし、飯食って少し練習して、寝よ」


(さっきも言ってたけど練習って何をするんだ?)


 彼は先程買った物を取り出し、透明な袋をきれいに取ると、それを食べ始めた。


(え!?これ、食べ物だったの?この、真っ黒いのが?あっ、中は白い?お、美味しいのだろうか?)


 そんな疑問を持ちつつも、彼は先程買った商品をあら方食べると、黒い物体に向かって蓋を開いた。


(え?これ、何?)


「ん~、ちょっと弾くか」


 すると、白と黒のボタンをおもむろに両手で叩き始めた。


(うわ~、きれいな音、これ、楽器だったのか?ってことはこの人、何らかの楽団に入っているのだろうか?)


 少しの間、この楽器で演奏を続けた。


「さて、そろそろ現実逃避やめて、練習しよ。合わせの曲」


 彼はそう言うとカバンの中から本を出した。やはり貴族とかが持っていそうな立派な本だ。


「Die Katze lasst das Mausen nicht,Die Jungfern bleiben Coffeeschwestern.」


 彼は何度も同じフレーズを繰り返し、練習していた。


(なんてきれいな音楽なんだ……こんな音楽が世の中にはあったのか……)


「よし、まぁ、昨日のうちにさらってたから、これは大丈夫だろう。さてと、ソロの曲を歌いますか」


 そう言うと、違う本を取り出し、今度は変な曲を歌い始める。


「Si puo?...Si puo? Signore! Signori!...Scusatemi se da sol me presento.io sono il prorogo.....」


(これ、本当に音楽か?なんか適当に歌ってるだけのように聞こえるけど・・・)


 暫くして、他にもいろいろな曲を歌った。


「ふぅ、さてと、そんじゃま。今日は講義ないし、寝ますか。おやすみ~」


 と言うと、彼は眠り始めた。それと同時に僕は眠りから覚めた。




「ん、ああ、また、夢か」

 そう言いつつ体を起こす。

「今日は二度寝はやめよう。日も昇ってるし。今日は教会に行ってからおばさんのギルドハウスだな」


 教会では創造神を崇拝している。詳しいことはわからないけど、信者の中に必ず一定数【預言者】が現れる。この人達は神様から言葉を賜り、それを下賜する。それが、所謂【創造神の儀式】であり、その言葉を届けられて初めて【職業】とそれにまつわる【スキル】が文字通り下賜される。世の中には徳の高い【預言者】が、更に善行を積み上げて行くと職業が【神の代理人】になることがある。これは数百年、或いは数千年に一度くらいの出来事らしい。前回【神の代理人】の職業を得た人は1200年ぐらい前に現れたそうだ。

僕に関して言えば有史以来の出来事らしい。つまり、この世でたった一人【創造神の儀式】において、職業とスキルを入手できなかった人だ。とは言え、週に1回ある【創造神の儀式】に毎回参加している。基本的には年齢が10歳の誕生日(第一次成人)から数えて、一番近い儀式の日に【創造神の儀式】を行う。近い日と言っても、誕生日は迎えていないといけない。僕はこの日から有に7年もの間成功していない。

 【創造神の儀式】は第一次成人(10歳)、第二次成人(12歳)、第三次成人(15歳)と三回行われるのが通常だ。第一成人に【職業】と【スキル】を頂き、第二成人で再度儀式を行う。第一成人の時の儀式の【職業】と【スキル】を得て、基本的に自分が進む道が決まる。それが決まると第二成人までの間その特色を活かしいろいろな経験を積む。すると儀式で、更に新たな職業やスキルを得られたりする。現在はこの職業はこういうスキルがあり、どんなスキルがほしいかによってどう伸ばしていくかを考え、職業やスキルを昇華させ実行するのが当たり前となってきている。例えば【剣士】であれば剣を2本で戦っていけば後の儀式で【二刀流】のスキルがもらえたりする。こうして、最初に貰った職業とスキルから、ある程度の未来を予想し、10歳から15歳までの間に方向性を決めて強くなっていく。


(はずなんだけどな~はぁ~)


 憂鬱な気分になりながらも、日課になりつつある【創造神の儀式】に向かう。


「あの~、すみません~【創造神の儀式】を受けに来たんですが~」

「おや、クリス君。時間まではもう少しあるから、こっち来てお茶でも飲まないかい?」

 そう言うと好々爺のような表情でお菓子とお茶を持ってくる。

「あっ、ありがとうございます」

「毎度毎度すまないねぇ」

「いえ、慣れましたから」

「とは言え、こう毎回毎回失敗続きだとね・・・国の偉い人たちはこのことを知ってるし、君の周りの人間ももうかなりの数知ってしまってるから今更といえば今更なのだがね」


 そう。始めてきた時、最初に失敗した時、当時大騒ぎになった。どれくらい大騒ぎになったかというと、国王陛下が直々に見学に来て、儀式に立ち会い、あまつさえ、王家の人間しか利用できない神殿を使って儀式をするレベルだ。最初は国王陛下も訝しみ、実際失敗したのを見ると、驚いた。それならばと王家の神殿へ向かい、儀式を行い、失敗し。最後に国王陛下が「これは教会の権威の失墜にもつながる不祥事。必ず儀式を成功させてみよ」と仰せになり、頭を悩ませながら帰っていった。それ以降、特に急いでやろうがいつやろうが変わらず失敗。ということで、とりあえず、失敗前提で、毎週行う儀式には参加するように言われて今に至る訳だ。


「そういえば、今日は預言者様が?」

「いや、今日は……まぁ、私もよくわかっとらんのだがね。何やら特殊な人が来るらしい」

「ん?特殊な人?」

「教皇庁から新米が派遣されて来るとのことじゃ。とは言え、儂が辞めるとかそう言うわけではない。クリス君のために来るそうなのじゃ」

「え?新米ですか?しかも、僕のため?こういうのに新米も何もないとは思うのですが・・・関係があるので?」

「じゃから、儂も頭を悩ませておるのじゃ。それに、今日はなぜか神の声を聞くことが出来なんだ。こんなことは初めてなのじゃ……もしかしたら今日こそは成功するのではないか?」

「どうでしょうかね……」


 こうして、預言者様とお話をしている間に時間になった。が、その担当の新たな預言者様は現れなかった。


「しょうがない。今日は今日で済ませてしまおう」


 こうして、いつもの【創造神の儀式】が始まる。今回は子どもたちが12人。本来はまとめて全員一気にやるのだが、僕は外れる。意味がないからだ。だったらいつでも良いじゃないかとも思うが、儀式をするにあたり、作法があるらしい。【預言者】のスキルを持ってるものでないとわからないらしい。それを行うことによって、初めて儀式が成立するらしい。で、それを行うのに2,3時間かかるそうで。それをやった後でないと儀式は出来ないらしい。要するに儀式を行うための儀式だ。それを行うとその日の太陽が出ている間だけ儀式を行えるらしい。


「それでは始めましょう。皆さん羊皮紙は全員持っていますね。それを持ったまま神様にお祈りしてください」


 そう言うと預言者様は一列に並んでいる子どもたちの端から順番にスキル【神の祝福】を使っていく。すると子どもたちの目の前の羊皮紙が燃え、文字が刻まれていく。名前、レベル、職業、スキル、ステータスが焼印のようなもので書かれていく。因みに僕の場合だと、文字が一切浮かんでこないということになる。

 数分もすると終了する。こうして笑顔を浮かべた子どもたちが散り散りに帰ってゆく。


「お疲れ様です預言者様」

「おお、クリス君。ありがとう。それで、クリス君の儀式、始めてもいいかね?」

「あっ、はい。大丈夫です。でも、その、待たなくて良いんですか?」

「お、おお、そうじゃった。じゃが、時間が過ぎておるしのぉ~、そろそろ帰らないとマスターキティに申し訳ないか」

「いえ、おばさんはそういうことで、とやかく言ったりはしないと思うのですが……まぁ、そうですね。儀式が遅れることを伝えに言ってこようかと思います」

「そうしなさい。儂は待ってるから行っておいで」

「はい!」


 そう言うと僕は教会を出ておばさんのギルドハウスへと向かった。

 そして、ギルドハウスへと向かう途中にそれは起こった。


「泥棒よ!助けて!」


 その声を聞き振り返ると、荷物を持ち、血相を変えて突っ込んでくる人が居た。

 一瞬硬直したが、助けなきゃという思いで、泥棒と対峙する。


「てめぇ、邪魔だ!どけ!」


 男は短剣を持っていた。

 もともとお人好しな性格もあったが、こういう命が関わりそうな場面でまで助けようなどと思うような人物ではないと自負する。が、何故か気になってしまっていた。


(ああ、あの荷物盗まれた人、死んだ母さんに似てるのか)


 そう思いながら、こちらも父の形見の剣を抜く。が、対人戦は初めてだ。どうも体が思うように動かない。この感情は恐怖?

 そう考えたのは一瞬だった。だが、その一瞬が仇となった。


「ええい、邪魔だ!」


 という声とともに下腹部に熱が迸る。


「え?」


 泥棒は逃げてゆく。追いかけようとしても体が動かない。そして下腹部が熱くて。これは、痛み?


「うっ、ぐ、ぁ」


(ああ、まずい。泥棒に逃げられちゃう・・・ああ、僕刺されたのか・・・これで、死ぬのは嫌だな・・・)


 泥棒は少し振り返り、動揺する。が、再度何かに取り憑かれたかのように一心不乱に逃げる。そして、その逃げた先には見た目は10代になったかならないかぐらいの少女が立っていた。いや、訂正しよう。美少女が立っていた。


(あれ、僕こんな死の間際にそんなこと考えてる余裕が?ってあれ?痛みが引いていく?)


「お、おい、て、てめぇもあいつみたいになりたいのか!!?なりたくなければどけ!!」


 周りに居た人たちは更にその泥棒から距離を取る。が、女の子は動く気配がない。

 あと、数秒で女の子が刺される。周りの人たちもそう思い、息を飲み、目をそらす。その瞬間。


「【天罰】」


 女の子が鈴のような声でそう発した後、世界が真っ白になった。



 数瞬の後、泥棒の方を見ると、泥棒だけが焦げていた。彼の着ている服は焼けていない。もちろん持ち物や盗んだものも焼けていない。何が起こったかわからず、呆然としていたら、その女の子が泥棒の荷物を持ち、おばさんの方へ向かって歩いてゆく。

 そして、おばさんに荷物を渡した後、こちらに歩いてくる。


「【ヒール】……大丈夫?怪我の具合はどう?ちゃんと治ってると思うけど。まだ痛いところある?」


 これがミスティアとのファーストコンタクトだった。

お読みいただきありがとうございます。

誤字、脱字等ありましたらお知らせいただけると幸いです。

よろしければ、普通に感想やコメント、ブックマークと評価(最新話の下の方に評価欄があります)をしていただけるとエタらず頑張れると思うので、よろしくおねがいします♪

活動報告の方に書きましたが、ツイッター始めました。よろしければこちらもどうぞ~


https://twitter.com/euch_nicht_OK

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