なんだかこの恋愛はおかしい 4
5月9日 昼 晴れ
すがすがしい天気だ。たくさんのポスターと看板。魅力的なマスコットキャラクターに巨大なタワー。
今、俺たちは愛知県沢岡市の沢村駅に来ていた。校長に頼んで一定期間の休みをもらった。
「うわぁー。本当に大都市っすね」
彼は山浦雷雨。高校二年生の悩み相談部部員だ。彼は俺の昔からの知り合いだ。
今日は彼、メイド、俺の三人で来ている。
川村は、桃色の誘拐で精神状態がうつろなので待機、山田はそれが脱走するのを防ぐために残した。
「皮肉だな。大都市なのに。人はほとんどいない。」
薄暗いこの都市で人探しだ。
「あ、いたいた。」
そこにいたのは一匹の猫だった。野良ではない。首輪が付いている。そこには桃色の文字がある。
まぁ簡単に魔法陣でもかいてっと。ぽんっ!
「ほぅ!一言で!すごいですね!」
隣の魔法オタクメイドが騒ぐ。
「静かにしてくださいメイドさん。結構疲れるんだから。これ。後でなんかおごれよ雷雨。」
「ひどいですよ。先輩。そんな大変じゃないくせに。それより巻き込まれたのは俺の方っすよ。」
「悪かった。」
「さっきからちんたらちんたらうるせえよ。あんたら何もんだよ!」
この猫生意気だな。
「俺は猫だが仮にも大魔法使いだぞ。お前らも耳にしたことがあるだろ。大魔法使いブレイン・キャットの名前を!」
「どちら様ですか?」
「おい。知ってるくせに。で、何の用だ。」
「あんたにかかってた強めの魔法を解いて人語をまたしゃべられるようにしてやった。桃色とこの町にまつわる話を教えてほしい。」
「ああー。説明していくぜ。」
物分かりがよくて結構結構。
◇◇◇
彼女は沢村市に住んでいた。ここ沢村市は観光地で人で賑わっていた。株式会社桃色はここ沢村市を大都市にまで発展させた。社長である桃色誠の娘である彼女は唐突な異変に気が付いていた。
最近彼女の記憶が突然消えていたりなどといったことが増えていた。鏡に目を向けると髪の色が変化していた。桃色の髪が自慢なのに鏡には水色の髪をした彼女がいた。
「爺!私の髪の色おかしい?」
「いや、別におかしくないですよ。ほら。鏡ですよ。別に普通ですよ。」
どうやらこの鏡だけそのようにうつってるらしい。
「おい。ここはどこだ?お前は誰だ?」
「え?喋った!なんで?」
「お嬢様どうなさりましたか?鏡に向かって話しかけて!」
彼女以外には見えてないようだ。まぁ実際問題この大魔法使いのブレイン・キャット先輩には見えてたんだけどな。
「爺。ちょっと体調があまりよくなさそうだから今日は休むわ。この階には誰も近くにこさせないで!」
「けど。それでは。危険ですよ!」
「そんなに毎日私が危険だったら困るわ。それより毎日車で送り迎えするだけでもみんなに噂されてるんだからね!大丈夫!この家のこのセキュリティーだから!」
「あ、そういうことでしたか。すみませんね。私自身レディの行為に関する知識が浅くて。無礼をお許しください。ほかの者にも伝えておきます。」
いろいろ勘違いした様子であのジジーは出てった。え?俺のほうがジジーだって?そりゃそうだ。俺様は何年生きたと思ってるんだよ。
「ねえ。貴方は何者なの?」
「俺が聞きたい。けどわかることは一つ。おそらく俺らは一つの体を共有することになるんだと思うぜ。」
「はぁ?」
「いや。だからおそらくお前の中に宿った新しい人格が俺だ。つまり二重人格とかいうやつかな。」
「それはわかったわ。けどなんで鏡の中であなたがいるの?あと私はどうすればいいの?」
「おそらく。うーん。わかりやすくいうとお前らの世界で言うところの転生ってやつだな。人は死ぬとほかの世界での人間となるんだが、俺はおそらくお前の体に転生してしまったようだ。」
「うーん。で、私はどうすればいいの?」
「このことは秘密にしておいてほしいんだ。その代償として俺はお前を守るぜ。」
なんだかその返答に心配を隠せない桃色がいた。まぁこれが絶大なフラグであることには勿論この大魔法使いはわかってたけどな!
◇◇◇
「わかった。大体の話は。それがなんで青い舌に狙われる原因になったか教えてくれ。」
俺は頼んだのだが、なかなかこいつは納得してくれない。よし猫じゃらしでも...
「それよりお前らは何者なんだよ。この世界では魔法は使えないはずだろ。しかも一言で!」
お、この猫鋭いな。元魔法使いなだけある。俺も実はそれでこのメイドの正体に気が付いたのだからな。
「あ、俺は使えないっすよ。ここの二人がおかしいだけっす。」
「おい、猫。さっきからの話、結構おかしくねえか?桃色が転生に関して理解するのが早すぎる。しかも鏡の少年も説明雑だし。」
俺の尋ねた質問にめんどくさそうに猫は答える。
「当たり前だろ。だって理解するために一日中話してたんだぜ。全部聞いてるか。そんなん。長話されたら猫は寝るのがセオリーだろうが!」
なんで逆ギレされているのだろう。
「とにかく教えてくれよ続き。」
「だから代償をくれよ。」
「わかった。わかった。この世界で魔法が使えるようにしてやろう。」
「なんだって!お前そんなことできるのかよ!」
わくわくしている猫を横目に俺はメイドを見ていた。さっきからやけに静かだと思っていたが。
「むにゃむにゃむにゃ。お嬢さま!待ってください!それは私のプリンです!お嬢様がわたしのプリンを食べたぁ!けどかわいいから許すぅ」
こいつも寝てるのかよ。というかどんな夢を見ているのだろうか。
「じゃあ続き話すぜ」
◇◇◇
彼女は彼に優しかった。身の回りの世話まですべてこなしていた。夜は彼が自由にできるようにと男用のお服を用意していた。夜の状態は水色の髪の男、昼は桃色髪の少女という生活を繰り返していた。原理は不明だが、なぜか寝てないのに眠いということはなかったようだ。
で、まぁ少なくとも彼には桃色に対する好意が生まれてきたわけだ。青春はいいねぇ。
それが原因からか彼の代償で自分が彼女を守るという発言が力強いものとなっていった。まぁ桃色は一切求めてる感じはしなかったがな。人の世話するのが好きだったのだろう。もともと。
ここからは俺が直接的に見たものじゃないから断片的な情報しかないが。
ある日桃色は怪我をして帰ってきた。その後、彼女は彼と会話することがなくなった。
しかも学校にも通わなくなり、転校をした。転校先でも浮いてろくに友達もできなかったようだ。
おそらく彼女は悪質ないじめを受けていた。彼女の体に生まれた新しい人格は確実に彼女の体に負荷をかけていた。彼女の左手は腐ってしまっていた。