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まぼろしに溶ける
街の中心にある高い塔。
そこに連れていかれたらもう二度と戻らないのだと、誰かが言っていた。
僕達は孤児だった。
当時、僕のいた孤児院は、戦争で親を亡くした、あるいは見捨てられた子供達で溢れかえっていた。
僕と、同じ日に引き取られた弟分の子は、路地裏に捨てられていたところを保護されたらしい。
と言っても、実際その時には意識などとうになく、なにがあったのかもほとんど覚えていなかったけど。
それでも、親に向けられた殺意と、その濁りきった瞳だけは覚えていて、だからこそかなり早い段階で僕は希望に縋ることをやめた。
孤児院ではたまたま一番年上だったからという理由でみんなの兄になった。
兄、というのはほとんど名ばかりで、弟達にいろんなことを教わった。
孤児院でのルール、マナーなど、一人でなんとかするしかなかった僕にとっては新鮮だった。