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9 スカウト


朝食を食べ終えた私達はこれからについて話し合う事になった。

ハロルドさんは、もう森での用事も済んだという事なので私を連れて森を出てくれるらしい。問題はその後の事…



「レミア、お前はどこか行くあてはあるのか?故郷はその、なんだ…帰るに帰れないだろ?」



ハロルドさんは私の、両親に売られたという設定を気にしてなのか一部気不味そうに聞いてきた。

ハロルドさん、気を使わせてしまってごめんなさい。設定なんですとも言えるはずもなく、私は静かに頷く。もちろん故郷に帰れないという意味でだ。



「行くあてはないです。故郷にも戻れないので。」



あー!罪悪感で押し潰されそう。

罪悪感に顔を歪ませていると、ハロルドさんは眉を寄せ



「そんな顔をするな。行くあてがないのならうちに来ればいい」



「え?」



あれ?何か勘違いさせてしまった?いや、それよりも待って!今なんて?

ハロルドさんの家?いやいやいや、流石にそこまでお世話になる訳にはいかないでしょ!

私が困惑していると



「実は俺、これでも小説家なんだがそれだけでは食っていけなくて自宅でカフェもやってるんだ。レミア、お前が良ければ住み込みでカフェを手伝ってもらいたい。お前が手伝ってくれれば小説を書くのも捗るんだ」



なんて有難い提案なんだろう。

しかも私が気を使わないような言葉を選んでくれている辺り、ハロルドさんの優しさが見える。



「知り合ったばかりの私なんかでいいんですか?」



だって住み込みって、自宅でカフェをやってるって事はハロルドさんの家に一緒に住むって事だよね?

正体の知らない私を置こうだなんて…ハロルドさん、油断し過ぎじゃないかな?

いや、特に何か悪い事しようなんては考えてないんだけども。



「そんな高い給料は出せないが俺は一人暮らしで部屋は余っている。衣食住は保証できるんだがどうだろう?」



「すごく有難い話です。でもどうして会ったばかりで素性の知れない私にそこまでしてくれるんですか?」



同情だろうか?それでも私にとってはすごく助けになるんだけど。

衣食住保証とかすごくいい条件だもん。



「そうだな…レミアに会ったのがきっかけでスランプから抜け出せたんだ。昨日の夜から面白いぐらいネタが浮かんでくる。」



そう言ってハロルドさんは手元にあるノートを指差す。

あ、だからすごい勢いでノートに何か書いてたんだ?

でも何で私に会ったのがきっかけでスランプから抜け出したんだろ?

特に面白い事何もしてないんだけど?


それから一体何が原因でスランプから抜け出せたのかいくら聞いてもハロルドさんにクスリと笑われ何度もかわされて結局解らずじまいのままとなった。

もしかして寝顔がスランプを吹き飛ばす程凄かったとか!?

だったらショックで立ち直れないんだけど。



私がもしそうだったらと、落ち込んでいると。



「俺の所に来る話はそんなに嫌なのか?」



またもやハロルドさんにいらぬ勘違いさせてしまったようだ。

私は慌てて首を横に振り



「ち、違います!すごく有難いし嬉しいです!ハロルドさんさえ良ければ…お願いします!」



衣食住確保!

それにハロルドさんにはまだ恩返ししていない!

小説を書くのに役立てるのなら喜んでなんでもしたい!

私が拳を握り、やる気に満ちていると



「そうか、助かる。」



と、ホッとしたような微笑を浮かべる。

いえ、助かるのは私の方なんですけど…



それから私達は野宿に使った毛布などを片付け、森を出る為出口に向かって出発した。

ハロルドさんが言うには森を出るのに半日もかからないそうだ。

そして夕方までには町に着くだろうと教えてくれる。


おお、今夜は野宿じゃなく屋根のある所で眠れるんだ!

月や星は綺麗だったけどやっぱり外で寝るのは落ち着かないから助かる!



町に着くのが楽しみな私はご機嫌にハロルドさんの後に続いた。



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