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4 運が悪過ぎてつらい


さて、ピンクのコウモリことピンコ様のお陰で命拾いした私ですが……これからどうしよう?


洞窟の外に出るのはまだ怖い。

だってさっきのおじさん達、まだその辺に居るかもだし、それに魔物だって出るかもしれない。


ピンコ様から命を貰ったついでに悪魔の力を手に入れたけど、本来強いと言われる悪魔の力。でも使い方を知らないんだから無いのと同じ。

普通を望む私だ。出来ればあまり使わずにやっていきたい。使うなら本当に困った時…ピンチの時!

まぁ、いざピンチの時に使えなかったら困るから最小限の練習は必要なんだろうけども、実際悪魔の力で何が出来るのかなんて検討も付かない。

ピンコ様は大抵のことは出来るみたいな事は言ってたけど。


取り敢えず夜はこのまま洞窟で過ごして、朝になったら早めにここを出て食料、あと平和そうな村か町を探そう。


そしてさっきみたいな目に遭わないためにも出来るだけ用心しよう。


危機感が無い。

おじさんに言われた事は事実だ。

平和ボケしていられないよね、ここは日本じゃないんだから。

危機感大事!何度も自分に言い聞かせ、朝まで休んだ。

もちろん、いつでも動ける状態で。




朝日が昇り、次第に辺りが明るくなってきた頃、私は移動するために洞窟を出た。


体の方はすっかり元気で、元の体よりかなり軽くなっているように思える。

これは身体能力が上がっているのだろうか?

今ならそう簡単にはへばらなさそうだ。


そして昨日は気付かなかったけど、髪の色が黒髪から薄桜色へと変わっていた。

この薄桜色、ピンコ様の体と同じ色。

ピンコ様から命を貰った影響なのだろうか?

薄桜色…ピンクの髪って正に異世界。

他にも赤とか青とか緑とかそういった異世界感たっぷりな髪の色を持った人達はいるのかな?

私だけピンクとかだったらかなり目立って怖いんだけど。

昨日のおじさん達も黒髪だったり茶髪だったりスキンヘッドだったり…参考にならなかったし。


うーん、と考え込んでいると、不意にお腹が盛大に音を立てた。

お腹空いた。

そういえば転生してからまともな物は何も口に出来ていない。

あの林檎(仮)はまともな物ではないから無かった事に!


さすがに悪魔でも餓死しちゃうんだろうなぁ。

早く何か食べないと!

そうして、私は昨日逃げて来た方向とは別の方へと歩き始めた。





日の高さが真上に昇った頃、私は未だに森の中にいた。

この森はどこまで続くんだろう?もしかしてかなり広大な森だったりするのかな?

いい加減、木は見飽きたよ!村とか町とか人の住む所に出たい!


あ、でも昨日人に殺されかけたばかりだからなんか怖いなぁ。

昨日の事を思い出して寒気がした。

そして今はもう傷のない首元に手を手で触れる。

ここ、人に斬られたんだよね。

いつの間にか体がカタカタと小さく震える。

そりゃあ誰だってあんな怖い思いをしたら、思い出しただけで震えるよ。

なんだかトラウマになりそう。

ハァ、と溜息をつき、止めていた足を再び動かす。

すると近くの茂みがガサガサと大きく揺れる。



「な、なに!?」



私は身構える。

もしかして昨日のおじさん達!?

そう考えただけで全身の血が引く。




ガサガサ、ガサガサガサ




音を立てて茂みから現れたのは犬…いや、狼?あれ?でも目が3つある。

普通狼の額に目なんてついてないよね?

それともこれも異世界ならでは?あ、これって魔物ってやつ?

私が狼を見つめて固まっていると



ガルルルルルッ!!



戦闘態勢に入っている狼が一歩、また一歩と私へ歩み寄る。

口元から鋭い牙がチラリと見える。

あれに噛まれたらひとたまりもなさそうだ。

それに気の所為だろうか?いや、気の所為であって欲しい。

そんな狼の後ろに、似たような狼があと2匹居る。


…うん、戦って勝てる訳がない。

そもそも戦い方なんて知らない。よし、全力で逃げよう!


私は狼達がいる方向とは反対の方へと駆け出す。

そしてそれに反応して狼達も私を追い始める。


なんで昨日の今日でまた追われないといけないの!?

特に悪い事をした覚えは無いのに!!


でも昨日と違うのは今の私は昨日と比べて身体能力が数倍に跳ね上がっているという事。

走る速度も昨日までの私とは比べ物にならない程。

これならオリンピックも夢じゃない!

なんて余裕をかましていたら、視界に大きな川が広がった。

あ、川で行き止まりだ。やばい!早く渡らないと狼達に追い付かれてしまう!

で、でも橋なんてどこにも見当たらないし、私泳げないし。


学校の授業で泳ぎ方を習わなかったのかって?

もちろん習いましたよ!

でもね、人には向き不向きってもんがあるんですよ!いくら泳ぎ方を理解してもそれを実行する能力がないんだから致し方あるまい。

ってそうこうしてるうちに狼達が追いついてきた。


どどどどど、どうしよう!

川を歩いて渡るにせよ、深そうだし流れだってかなり急だし、絶対溺れる自信あるし!


ええい、ままよ!

今こそ強化された私の力の見せ所!

泳げないなら飛び越えればいい!今の私に出来ないことは何もない!(泳ぐ事以外で)


私は足に力を入れ、数歩助走をつけて地面をこれでもかってぐらい思いっきり蹴って川を飛び越えようとジャンプした。


ジャンプ力には何の問題は無し!

いける!!私はそう確信した。

しかし次の瞬間、偶然なのかそれとも私の運の無さが招いた結果なのか、余所見をした大きな鳥が物凄いスピードで飛んできて私のお腹へ激突した。



「ぐへっ!」



私はそのまま鳥と共にドボン!と大きな水飛沫を上げ、川へダイブするはめに。



「うわっぷ!む、むり!およげない!!ゴボッ!」



川は思っていた通り足がつかない程深く、そして流れが激しい。

泳げない私は必死にジタバタするけど服が重く、体を上手く動かせず、水の流れに逆らえない。


や、やばい!どうにかして岸に向かわないと!でないと溺れちゃう!

なんとか水から顔だけを出して息をする。

でもその状態を維持する事は出来なくて何度も水中へ引き込まれてしまう。

何度も何度も水面に顔を出し、空気を取り込むの繰り返しをしていると嫌な音が耳に流れてくる。


どんだけベタな展開なんだろう。

流された先に滝が待ち構えているなんて。



「なんて日だ…ゴボッ」



私は抵抗する事も許されずそのまま滝つぼへ落ちていった。


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