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2 転生からのサバイバル?


目を開けると思っていた通り、さっきまで居た真っ白な空間とは全く違う場所。


今いるのはなんだか木が生い茂っている森みたいな所。そして空は木々の間から微かに見えていて、その色は少し薄暗い。



「今は夕方なのかな?」



と、思わず出た声に驚く。

その声は今までの自分の声よりも少し高く、澄んでいた。

転生したから変わったのだろうか?

もしかしたら声だけではなく姿も変わっているのかもしれない。

そう思い、取り敢えず今自分が着ている服を確認した。



「制服じゃなくなってる」



そう、先程まで学校の制服だったのに今私が着ているのはファンタジーな世界で村娘が着ていそうな少し地味な茶色のワンピース。

中には白いブラウスを着ていてワンピースから胸元と、肩から袖までが出ている。


もちろん顔は鏡がないから確認出来ないんだけど肩からサラリと溢れる髪の毛は相変わらずの黒髪。

長さは今までより少し長くて腰にまで届きそう。そしてなによりサラサラしてる。

これならシャンプーのCMで引っ張りだこじゃないかな?ってぐらいキューティクル!

球体様、キューティクルをありがとう!




取り敢えず一旦落ち着こう。

今自分の置かれている状況を考えなければ。



空の明るさ的にもうすぐ夜、そしてここは森らしき所。

日本という比較的平和な国で育ってきた私でもわかる。夜の森は危険だ。

そして事前に球体からこの世界は魔物が出ると聞いている。

勝手なイメージだけど魔物って夜になると凶暴化しそうなんだよね。

ほら、漫画とかゲームって大抵そうだった気がするし!

だから完全に日が落ちる前に食料と安全な寝床を探さないと危ない気がする。

自分が今どこにいるのかわからない上になんたって私は手ぶら。そう、手ぶらなのだ。

武器もないし食料もない。


転生して早速やばくない?

転生舐めてたわ。まさか転生していきなりサバイバルだなんてね。

なんで転生先がこんな森の中なの?確かに人目があったらいきなり現れた私なんてかなり怪しまれるけど、さすがに森の中でいきなりサバイバルとかないわー。

これから先不安しかないんだけど。



それからあてもなく森の中を歩き、ようやく木の実らしき物を発見した。

その木の実は多分元の世界には存在しないんじゃないかな?

だって形的には林檎だけど色は黄緑、そして赤い水玉の模様がある。

うん、こんなの存在してなかった!きっと異世界ならではだね!

模様にはびっくりだけど形的に林檎っぽいから食料にしよう!

私は手に届く高さにある林檎(仮)をもぎ取り手で軽く拭いてかぶり付く。

シャリッ、本物のような林檎の食感。だけど味はとても酸っぱくてすぐに吐き出した。



「うえっ!すっぱ!!!」



レモンなんて甘く感じるぐらい酸っぱいこの林檎(仮)。食料不採用!

期待して食べた分、落胆は激しかった。

やばい、お腹空いてきた。


そんな時だ、何やらいい匂いが辺りに漂ってきた。

何かを焼いているような香ばしい香り。

もしかして近くに誰かいるのだろうか?

私は匂いのする方へ足を動かした。


やったー!早速サバイバル脱出のチャンス!

テンションの上がった私はスキップ混じりに森の中を進んで行く。


草木を避け、匂いの方へ進んで行くと少し開けた場所で3人の男の人達が焚き火を囲んでいた。

その焚き火の周りには魚の串焼きがいくつか見られる。


あぁ、やばい!美味しそう!少し分けて貰えないかな?

私が物欲しそうに魚の串焼きを見ていると、3人の内1人が私に気付き



「誰だお前?」



低い声が私に向けられた。

そして他の2人の視線も私に集まる。

私は慌てて頭を下げ



「急にすみません!実は道に迷ってしまいまして、いい匂いがするなと思ってここへ来てみたらあなた方が居たもので」



迷ったというか元々知ってる道なんてないんだけど、いきなり転生して道も分からず〜なんて説明しても、は?何だこいつ?ってなるのが関の山。

なので簡単に、道に迷ったという理由にする事にした。


しかしよく見るとこの3人、ガラが悪いな。

何だかぱっと見山賊みたいな格好をしている。

いやいや、人を見た目で判断しちゃいけないよね!うん、きっと中身は人の良いおじさん達に違いない!


私が1人うんうん頷いていると、おじさんの内1人が手招きして私を呼ぶ。



「いつまでもそんな所さ居ねえでこっちさ来て火に当たれ。これから冷えてくるぞ」



「はい!ありがとうございます!」



なんだ、やっぱりいいおじさん達じゃないか!

私は嬉しくなりパチパチと音を立てて燃え上がる焚き火の側へ駆け寄った。

あー、焚き火ってこんなに暖かいんだ。なんだかホッとするなぁ。

焚き火に当たりながらほんわかしていると



「危機感のない娘っ子だな」



背後でおじさんの低く、冷たい声が放たれた。



「え?」



何が?と振り向くと、鋭く、光る何かがシュッと音を立てて私の首元を過ぎ去る。

一瞬の事で頭が追い付かない。

放心する私の首元から大量の血が溢れ出ていたのだ。


そして目に入ったのは赤く血塗られたナイフを手にするおじさんの姿。

あ、私、あのナイフで斬られたの?

そこで一気に首元に痛みが走る。

声にもならない悲鳴を上げながら私はその場から走り出した。

走り出したのはきっと本能。逃げなければ!と、とっさに体が反応したのだ。


駄目だ、あの人何の躊躇いも無く私を斬りつけた。

きっと簡単に人を殺す事が出来るんだ。

でも何で?私、あのおじさん達に悪い事何もしてないよ?

山賊?お金欲しさ?

いくら考えてもその答えは捕まらなければわからない。でも、捕まるわけにはいかない!

きっと捕まる=死なのだ。


血の出続けている首元を痛みを堪えながら押さえ、必死に森の中を走った。

後ろから私を追うおじさん達の何か言ってる大きな声が聞こえるけどそんなのちゃんと聞いてる余裕なんてない。

息もまともに出来なくて、ヒュー、ヒュー、と呼吸の音がおかしい。


苦しい!怖い!涙が溢れてくる。

人をこんなに怖く感じるなんて。

だって日本で暮らしてたらそうそう人に命を狙われる事なんてないよ?

球体が、魔物が出ると世界だって言ってて怖いとは思ったけど今は魔物なんかよりよっぽど人の方が怖い!

あぁ、もう痛みと恐怖で頭が混乱してる!

こんな時は冷静になって考えなければ!

先ずはあの人達から逃げてどこか安全な場所で傷の手当てをしないと!

いい加減血を止めないと出血多量で死んでしまう!

私はとにかく逃げる事を優先すると決め、走る事に集中した。



しかしだんだんと足にも力が入らなくなっていく。

あれ?これ駄目なやつっぽくない?

カクンと足の力が抜け、私はその場に倒れる。

倒れた場所が悪かったみたいだ。

丁度倒れた先は急な坂になっていて、私はそのまま下へ転がり落ちていく。


全身が痛い。落ちている最中にあちこちに体をぶつけたせいだろう。

それでも私は這い蹲りながらも移動する。


まだ、かろうじて体は動く。

捕まりたくない、死にたくない。必死になってあてもなく進んで行く。

すると草木の隙間に小さな洞窟を発見した。


あそこで少し休もう。

草木で隠れてるし、すぐには見つからないはず。

見つからないという根拠はどこにもない。だけどもう体は限界を迎えている。


ヒュー、ヒュー、となんとか息をするけども酸素が追い付かない。

血も止まらない。

もしかして斬られた所は急所だったのかな?

だったらここまで逃げて来れたのは逆に凄いのかもしれない。


洞窟の中で仰向けになり、目を閉じる。

もう動けそうにない。


転生したばかりなのにもう終わりなのかな。

せっかくのキャンペーン無駄にしちゃったなぁ。

どんだけ運がないんだ私。

自分の運の無さに嘆いていると



キィ…キィ…キィ…



洞窟の中に何かの音が響いた。

その音が止むと同時に



『お前、死ぬのか?』



誰のものかわからない声に目を開くと、洞窟の天井から赤く光る眼が私に向けられていた。


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