1 当選しました
気が付けば私は真っ白な場所に座り込んでいた。
そう、真っ白である。上も下も右も左も、どこを見渡しても真っ白なのだ。
はて?私はいつの間にこんな場所に移動していたのだろう?
確かさっきまで学校の帰りにスーパーに寄って今日の晩御飯の材料を色々買い「あ、ちょっと買い過ぎたかな…荷物が重いー!!」なんて寂しい独り言を言いながら帰路についてたはず!
しかしそこで何かが頭に引っかかった。
あれ?私、買い物した帰りに車に轢かれそうになった子供を助けようとして、代わりに轢かれなかったっけ?
そうだ、間違いない!私は目の前で車に轢かれそうになっている子供を助ける為に身を乗り出したんだ!
でも体のどこにも外傷は無いし、今着ている学校の制服も綺麗なまま、どこも破けたり汚れたりしていなかった。
どういうこと?と首を傾げていると、目の前にパッと光る球体が現れた。
「パンパカパーン!おめでとうございます!貴女はなんと!たった6人しか選ばれないありがたーいキャンペーンに見事当選致しました!!」
やだ、何!?このやけにテンションの高い球体!なんか喋ってるし、それにキャンペーンって一体。
私が目を見開いていると球体はふよふよと私の周りを飛び
「テンションが高い方がおめでたい感出てきますでしょ?そしてキャンペーンとは今日お亡くなりになられた方の中から特別に即転生出来るというとのです!普通ならば転生するのに何十年、何百年と待たなければならないのに即ですよ!即!!しかもオプション付きです!」
え?お亡くなりに?それって私ってやっぱり死んじゃったの?
まぁ、車に轢かれたんだから死んでもおかしくないけど、それでもやっぱり自分が死んだとかショック。
あれ?思ったよりもショックじゃないような?
たぶんあの球体の変なテンションのせいだよね。
「そうでございますよー!貴女は勇敢にも見ず知らずの子供を助け、亡くなられたのです!いやー、偉いですね!感心しちゃいます!」
この球体のテンション…なんだかだんだん腹が立ってきたぞ。というかこの球体、さっきから私の心読んでるし!
「おっと、気分を害されたなら申し訳ありません!取り敢えず説明を続けますねー!」
しかもこの球体、マイペースだ。
球体のペースに流されるしかないのか…逆らっても意味は無さそうなので大人しく聞いておくしかないかな。
「さて、貴女が気になるオプションですが、簡単に説明しますと要は、なんでも好きな物を貴女に授けるということですね!ちなみにこれから転生して頂く先は貴女が今まで暮らしていた世界とは別の世界、異世界ってやつです!そこには魔法あり、魔物ありの楽しそうな世界ですよ!」
まるで漫画や小説のような内容だなとしみじみ思う。
転生、異世界、魔法…思いっきりそうだよね?
っていうか魔物って言ったよね?
「はい、魔物ですよ!うじゃうじゃいますから気をつけて下さいね!」
なんだか不安になるじゃないか!たぶん今の私の顔、真っ青だよ?
ゲームとかなら魔物出て当たり前!それを倒すのも当たり前だけど、今までそんな危ない環境に居たことないのに!森で熊に出会うより危険じゃないか!
「まぁ、取り敢えずこのアンケート用紙にお答え下さい!」
どこまでも我が道をいく球体は私の反応をスルーしてどこからか紙とペンを私の手元に出現させた。
何もない所から紙とペンを出したって、もうこの喋る球体を目の当たりにしてたらその程度じゃ驚かない。…あれ?私ってこんなに適応力高かったっけ?
よし、考えるのはやめておこう!とにかく、今目の前にあるアンケート用紙に集中しよう!
「なになに…1、転生する性別、これは女かな」
うん、男の子になるとか想像出来ないし!
女の子の方が生きて行くのに楽とかそんな事ないからね?絶対にないったらない!
「2、転生する年齢、こんなのも選べるんだ?取り敢えず今の年齢のままでいいかな。」
また小さい頃からやり直すのだるーいとかそんな事思ってないし!
ほら、今が1番楽しい時期じゃない?
「といいますと16歳ですね!」
…何この球体!何で私の年齢知ってるのよ!?あれ?心読んだ?やだ怖い!
「フフフ」
この球体怖過ぎて何も言えないよ!
と、とにかく次だ次!
「3、転生する時に付けられるオプション、オプションかぁ」
ふと、ある事を思い出した。
「ねぇ、私の他にも5人転生出来る人達がいるんでしょ?その人達はどんなオプションを付けたの?」
未だによくオプションが理解出来ていない私は他の人達を参考にする事を思い付いた!私ってば天才!
「そうですね、億万長者になりたい方、世界一の美しさを望まれた方、魔法に長けた能力を求めた方、世界最強の剣技を欲した方などもいましたね」
「いち、にー、さん、しー…あれ?私を合わせて5人しかいなくない?」
指を折り、球体の言った内容を数えると6人いるはずが5人しかいなかった。
「それはですね、貴女で5人目で未だ6人目は決まっていないのですよ!みなさん同時に選ばれた訳ではなく、決まった時期はバラバラです!1番最初の方は18年ぐらい前でしたし」
「キャンペーン長っ!」
そんなもんなのか。
まぁいいや、取り敢えず再び用紙にペンを走らせる。
本当に私ってばあんまり気にしない人になってきてるよね?それすらも気にしないけど。
「3、オプションは、私はなし!普通が1番!」
「欲がございませんねー!」
確かに欲がないと言われればそうかもしれない。でも私にとってはある意味これが欲なのかもしれない。
「転生出来るだけで満足よ!それに変な能力を持ってたって何か厄介な事に巻き込まれるかもしれないし!」
平和がいいのだ。
誰かに能力に目をつけられ狙われるような事があっては安心して生きていけない。
だから普通が1番だと私は思った。
「わかりました。ではオプションは無しという事ですね。…でも普通がよろしいとの事でしたので言葉や文字はわかるようにだけさせて頂きますね!」
え?そのままだったら言葉も文字もわからないの!?だったら他の転生する人達はやばくない?
顔も知らない転生仲間の事を心配していると、球体はクスクスと笑い
「そこはまぁ…はい!なんとかなりますよ!貴女は何もお選びにならなかった…私はそんな貴女が気に入ってしまったので特別サービスでございます!」
いいのかな?…まぁ、私的にはすごく助かるんだけど。
他の人達、頑張って!と、強い念を送っておいた。
でも18年も前からならみんなはもう言葉や文字は理解してるのかもしれない…それに出会えるかわからないし、気にしなくてもいいかな?
「さぁ、長くなってしまいましたがそろそろお別れの時間でございます!」
長いって言ってもそんなに経ってないよね?1時間もここには居なかった気がするんだけど私の気のせいかな?
「寂しくなりますが、どうか転生した先でもお元気でお過ごし下さいませね!」
あ、はい、私の心の声はスルーなんですね!
「ではまたの機会があればお会い致しましょう!さようなら!グッドラック!!」
球体の言葉と共に目の前が目も開けられないほど強く光りだす。
きっと次に目を開けた時にはもう転生しているんだろうなぁ…と、どこか冷静な私がいた。
紫峰 麗美亜
16歳、キャンペーンに当選して転生しました。
初めての投稿でドキドキ