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プレゼントとしては定番すぎ?

男はみんな変態ですよね。

でも私は変態ではありません。

昔はみんなのような変態だったのだが、膝に矢を受けてしまってな……。

 開拓生活を続けて、早くも二週間が経とうとしている。

 何人か血の気の多そうな若者がやってきて、全員オレかエレーヌにぶっ飛ばされている。

 理由は簡単だ。いちゃもんをつけて来たからだ。

 まぁ、オレって見た目弱そうだしね、仕方ないね。

 エレーヌもただの美少女であんま強そうに見えないしね。


 そういうわけで絡んで来たからぶっ飛ばした。

 今では全員がオレを兄貴と慕い、エレーヌの事はみんなが姐さんと慕う状況である。

 エレーヌはすごく嫌そうだ。オレも嫌だ。むさい男たちに兄貴と慕われても嬉しくない。


 でもまぁ、人手が欲しいのは確かだからいいんだけどね……。

 そして、オレたちは今日も薪割りを続ける……。


「って、やってられっかぁ!」


 ブチキレた。

 毎日毎日薪割りって、オレは木こりやるために開拓しに来たんじゃねえぞ!

 開拓っつうたらこう……こう……なにするんだ?


「なぁ、開拓って何やるんだ?」


「えっ、知りませんよそんなん」


 いの一番にこの開拓村へとやってきたアンソニーに尋ねたがどうやら知らんらしい。


「じゃあ、バーニー、お前は知ってるか?」


「木を切る」


「役に立たん。クリフ、お前は?」


「こう……村を作る」


「ダニエル、お前は黙ってろ」


「ええっ!? 俺まだなんも言ってませんよ!?」


 一番のアホのダニエルに聞いてもどうせ無駄だから最初に黙らせただけだ。

 さて、このアルファベットブラザーズ。全員元冒険者である。

 膝に矢を受けたんだったか、冒険者の膝に刺さってしまったんだったか知らないが、冒険者としてやっていけなくなったらしい。

 それでとりあえず喰いっぱぐれる事はない開拓に来たらしい。


 全員足が悪かったり、手が悪かったり、顔が美感的な意味で悪かったり、頭が恐ろしいくらい悪かったりで、戦闘要員としては役に立たない。

 しかし、力はそれなりにあるのでちゃんと仕事は出来ている。


「うーむ……とりあえず、オレは今日、木を何本か採ってきたら奥地の開拓を始める」


「おおっ、開拓って感じッスね!」


「やっぱ開拓って言ったら森に分け入り、洞窟でドラゴンを倒して……」


「そんでもってお姫様を助けて……」


「それで姫様を嫁にもらって王様になったら毎日白パンを腹いっぱい食って……」


 夢がしょぼいぞ。そしてそれはどう考えても開拓ではない。


「おい、お前バカなこと言ってんじゃねえよ」


「そうだ、ダニエルのアホに言ってやれクリフ」


「毎日白パン食ってたら怒られんだろ? 白パンは高いんだぜ」


「確かに……じゃあ、週に二回で我慢して……」


「いや、二回じゃダメだろ。楽しみはたまにあるからいいんだぜ? 安息日の日曜日の昼飯に白パンが食えるんだよ」


「おお! そいつぁいい案だ!」


 こいつらダメなんじゃないかな。


「あれ、兄貴、頭抱えてどうしたんスか」


「お前らのあまりのみみっちさに頭を抱えてた」


「そういう兄貴は王様になったらなにするんですかい」


「そうだな、とりあえず毎日風呂に入って」


「な、なんて贅沢なんだ……!」


「……毎日牛肉を喰って」


「目玉が飛び出るくらいの金がかかるぜ……!」


「……パンはもちろん毎日白パンを腹いっぱいだ」


「毎日白パン!? とんでもねぇ贅沢だ!」


「……当然、メシは好きな時間に食う」


「す、スゲェ……なんて贅沢なんだ……さすがは兄貴……!」


 現代日本の生活は王侯貴族に匹敵する贅沢、オレ覚えた。


「さて、バカな話をしてないで開拓するぞ。木を切ってきたら、お前らはいつものように薪割りをするんだ」


「毎日薪割りッスねぇ。たまには井戸掘りやりたいッス」


「ダメだ。井戸掘りは女衆がやってる」


 別に女衆だけに限った話ではないんだがな。

 腕力のある男衆は全員薪割りや、開墾作業に繰り出してる。

 そして、井戸掘りには女手が集中している。


「だからこそいいんじゃねぇですか!」


「井戸掘りで濡れた女衆の透けた服……!」


「見たいか」


「見たいッス!」


「命と引き換えにしていいなら見てもいいぞ」


「すんませんした!」


 土下座したアルファベットブラーザズ。


「許す」


 オレは寛大なのである。

 エレーヌとミルクたち以外なら見ても許すしな。


「さて、んじゃ木を切ってくる。それまでは昨日の残り切っとけ。やりたけりゃ開墾作業やってきてもいいぞ」


「うぇー、勘弁してくだせぇ。俺ら、農民が嫌で田舎飛び出して来たんスから」


「今更、土耕すのなんか勘弁ですぜ」


「まぁ、薪割りも目くそ鼻くそですけど」


「確かに家でも薪割りやらされてたな……」


「そうか。メシが食いたきゃ黙ってやれ。お前らが割ってる薪でメシ買ってるんだからな」


 さすがに、拡大し過ぎた人数を養うには山の幸では足りない。

 人間だけなら余裕で足りるんだが、コボルトやゴブリンたちが居るからな。

 メシの調達時間があれば別だけど、基本的に薪割りとか開墾ばっかやらせてるし。


 なので、行商人から急遽小麦などを仕入れてもらって、それで食料を賄っている状態だ。

 今のこの村の命脈は薪割りで支えられているのだ。


「へーい、了解っスー」


「んじゃ、俺が皮剥がすから、お前ら丸太にしろよ」


「おい、ふざけんなよ。全員で丸太にすんだよ」


「待て待て。俺はお前らを応援するのをな……」


「よっこいしょ」


 木を切り倒すのに使っている斧を持ち上げる。


「お前ら、頭かち割られるのとすぐ仕事に行くの、どっちがいい?」


「すんませんした!」


「すぐやります!」


「薪割りめっちゃ楽しいッス!」


「えー、俺もう薪割りやりたくないです」


「黙ってろアホダニエル! 行くぞ!」


 走って薪割りに行った奴らを見送ると、オレは山に木を伐りに向かうのだった




 さて、そうして薪にするための木を採ってきた後、井戸掘りをしているエレーヌを呼びに行った。

 井戸掘り場では、女ゴブリンたちや、女コボルトたちが数多く仕事をしている。


 泥だらけになって穴を掘っている面々の中にエレーヌは居ない。

 単純な話だが、穴掘りをするには人数が多い方が楽なので、体格の小さいゴブリンとコボルトたちがメインだ。


 エレーヌは現場監督であると同時に、掘りだした土を運ぶ役目を担っている。

 そして、オレの頼んだ調査も並行して行ってもらっている。


「エレーヌー。おーい、エレーヌ? エレーヌ知らんか?」


 声をかけても見当たらないので、近くに居た適当なゴブリンに声をかけて聞いてみる。

 焼き場にいるとのことで、そっちへと向かってみると、バチバチと燃える火を眺めているエレーヌが居た。


「あ、騎士様。どうなさったんですか?」


 声をかけるまでもなく、耳のいいエレーヌはこっちに気付いた。


「森の奥地の方に開拓に行くから呼びに来たんだよ。調査はどう?」


「ダメです。ご覧ください」


 そういってエレーヌが指差した先には炎。その中には砕けた壺がある。

 砕けた壺を焼いて処分しているわけではもちろんない。

 土を練って作った壺を焼き固めているのだ。見る限り失敗しているが。


「砂の混じった土が多くて……器が出来る程の土はありません」


「やっぱか……」


 オレの探しているものは粘土だ。

 別に器なんて木製のものを使えばいいんだが、さすがに水がめとかはそうもいかない。

 村が拡大していくにあたって、そういったものの需要も出てくるだろう。


 水がめなんて買うのはバカらしい。

 だから作ろうと思って粘土を探しているんだが……。

 土地が悪いせいかいい土が見つからないのだ。

 まぁ、オレたちは素人だからちょうどいい土に気付いてないだけなのかもしれないけど。


「調査は続けていくつもりですが、難しいかと」


「だよねぇ……」


「いずれ、町からそういった職人を招くことを考えたほうがいいかもしれません」


「問題は来てくれるかどうか、だよね……そう言った職人の弟子が職にあぶれて……なんてのがあればいいんだけどね」


「そうですね……さてっ、それでは、開拓にいくのですよね?」


「ああ、そうそう。ここいらへんの地図作っておきたいし、何があるのか調べておきたいからね」


 なんでオレがこんなに色々とやらなきゃいけないんだろうか。

 最初は開拓村で、ぼちぼち役立つ奴みたいな感じで働こうと思ってたのに。

 まぁいいか、始めちゃったもんは仕方ないし。

 というか、オレ居なかったらもう開拓立ち行かないし。


「んじゃ、とりあえず装備を整えようか」


「はい」


 歩き出すのだが、なぜかやたらエレーヌが離れて歩く。


「どうかしたの?」


「い、いえっ、なんでもありません!」


 一歩近づいてみる。

 エレーヌも一歩下がる。


 もう一歩踏み出す。

 エレーヌももう一歩下がる。


「なぜ逃げる?」


「に、逃げてなどいません」


「いや、逃げてるよね」


「逃げてなどいません。むしろ前進しているほどです」


「じゃあ何か。見えてるエレーヌは残像か」


「そうです。目に見える残像です」


「という事はこの辺りにエレーヌが居るはずだ」


 空中に手を這わせる。もちろん何もない。

 いや、むしろここにエレーヌを作り出す事こそが正解なんじゃなかろうか。

 想像するんだ、オレ。ここにはオレの知るエレーヌが居るのだと。


「――妄想、開始」


 まず、基本となる骨格を想定する。


 エレーヌの体格を支える骨格だ。

 オレには見える。見えている。

 華奢に見えるが、柔軟性があり強靭な骨。

 その骨はエレーヌの肉体を乗せて稼働を続けている。


 構成する材質、肉体を想像する。


 柔軟な筋肉で構成された肉体は見た目よりも遥かに優れた筋力を発揮するが、それでいて柔らかい。

 優れた筋肉は柔らかいのだという事を証明するかのようだ。

 オレが何度となくこの手で、そして全身で触れた肉体の感触は明確に思い出せる。


 成長に至る経験を妄想する。

 エレーヌが生まれてからこの年に至るまでに積み上げた数々の修練。

 それによって育まれた全身運動の巧みさ。

 その全身運動が生み出す安定した体幹……。


「――妄想、完了」


 そこにはオレの知っているエレーヌが……居るわけがない。

 オレの妄想そんなに高性能じゃねーから。


「……さて、茶番はここまでにして、なんで逃げるんだ、エレーヌ」


「いえ、逃げてなどいません」


「いや、だから逃げて……」


「逃げていません!」


 にっちもさっちもいかない問答続けててもしょうがないので、とびかかってエレーヌを捕まえる。


「きゃあっ! は、離してください!」


「じゃあまずはなんで逃げるのかを教えてもらおうか」


「そ、その前に離してください!」


「まずは話してから」


「ですから!」


 こっちも譲るつもりはない。話してからにしなくては話してくれない可能性が。

 などと思っていると、捕まえているエレーヌからなんかいい香りした。


「いい匂いがする……」


「ひゃああっ!」


 エレーヌを抱きしめて首筋に顔を埋めて。

 あ、なんか落ち着く……。


 汗のにおいと、エレーヌの甘い香り。それから草原の若草のように瑞々しい匂い。

 それが入り混じって、エレーヌの匂い……っていう何とも説明しづらい匂いがする。

 あ、やべ、むらむらしてきた……。


「離してください! あ、汗臭い、ですから……」


「そんなことはない。むしろご褒美ではなかろうか」


 汗の匂いとかむしろご褒美ではないでしょうか。

 エレーヌの足とか普通に舐めますよ。むしろ全身舐めまわすよ。


 とはいえ、このまま続けていると辛抱溜まらん状況になってしまうので、仕方なく離す。

 続きはまぁ今日の夜という事で。


「まぁ、汗なんて誰でも掻くし、オレなんてもう3週間は風呂に入ってないし、気にすることはないさ」


「……水浴びはしているじゃないですか」


「うん」


 詭弁では騙せなかった。


「まぁ、オレは嫌だなんて全く思わない。むしろいい匂いですよね。そうだと思わないか」


 誰に同意を求めてるんだかわからないが、とりあえず誰かに同意を求める。

 もちろん返事は帰ってこない。しかし、オレがそうだと決めたのでそうだ。


「騎士様は、変態さんですね」


「男はみんな変態なんだよ。アンソニーなんか小さい女の子に棒で殴ってもらわないと気持ちよくなれないって言ってた」


 アンソニーの名誉のために言っておくが、オレの虚言ではない。

 本当にそう言っていたのだ。


「……変態なんですね」


「ああ。だからアンソニーに女ゴブリンたち近づけるなよ」


「はい」


 悲しい事にアンソニーが結婚したいと喚いていたゴブリンたちとは接触できない事が確定してしまった。

 なんて悲しいんだ。


「さて、男がみんな変態だと分かってもらえたならそれでいい」


「いえ、そういう問題ではなくて……私の心の問題なんです!」


「はい」


「汗臭いって思われるのは、女性ならみんなそうなんですよ! ですから騎士様ももう少しテレパシーというものを弁えてですね……」


「ごめん、オレ超能力は持ってない」


「デリカシーを弁えてですね!」


「はい」


「分かりましたか? 分かっていただけたのならば、今後はこういう事は無いように……」


「いやです」


「騎士様ー? 私を話を聞いていましたかー?」


「聞いた上で無視した。とはいえ、それじゃエレーヌが納得出来ないだろう。そういうわけで、これをあげよう」


 懐から小瓶を取り出す。

 既に匂いは確かめてみたが、バラの香りのする香水だった。


「それは……香水、ですか?」


「こないだ来た行商人から買った」


 匂いに弱いモンスターが出たら使おうと思ってたんだけどね。

 エレーヌにはいろいろとお世話になってるし、日ごろの感謝の気持ちを込めて……ね。


「あ、あの、でも、こんなに高価なものをいただいても……」


「大した額じゃないさー。匂いが気に食わないなら捨てちゃってもいいよ。鼻のいいエレーヌにはキツイかもしれないし」


 オレにはいい匂いに感じるけど、鼻の利くエレーヌには別かもしれない。


「いえ! そんなことは! でも、本当にいただいてもよろしいんでしょうか?」


「エレーヌが要らないってなると、これはジャン爺さんに飲ませる事になるんだけど……」


「なぜそうなるのですか!?」


「いや、ミルクたちに上げても使わないだろうし……」


 だからって別にジャン爺さんに飲ませる意味はないんだけど、まぁ会話の流れでなんとなく?

 本当に飲ませるつもりは一応ない。


「だから、この香水を無駄にしないためにもぜひエレーヌにもらってほしいんだけどな」


「分かりました……その、本当にいただいてもいいんですね?」


「全然いいよ」


 エレーヌに香水を手渡すと、エレーヌがさっそく香水の瓶を開く。

 曇ったガラスで作られている瓶だが、蓋はしっかりとしている。

 開けられると同時、ふうわりと薄くバラの香りが広がった。


 オレの知っている現代の香水よりも随分と薄い香りのするものだ。

 高濃度の香水を精製出来ないせいなんだろうけど、オレにはむしろこっちの方がいい匂いに感じる。


「いい香り……騎士様、ありがとうございます……」


「全然気にすることないさー。じゃあ、オレは先に準備してるよ。ゆっくりでいいからエレーヌも準備してきてね。気になるんだったら水浴びしてきてもいいから」


「あ、はい! その、お言葉に甘えます!」


「気にすることないさー」


 ぴらぴらと手を振ってその場を立ち去る。

 さて、ぼちぼち準備しますかねー。




 準備を終えて暫く時間を潰していると、エレーヌが戻ってきた。

 しっかりと鎧も身に着けて、今すぐに冒険に赴ける出で立ちだった。


「騎士様、準備が整いました」


「ああ。じゃあ行こうか」


 立ち上がる。

 それと同時、ふわりとエレーヌからバラの香りがした。


「香水さっそくつけたんだ」


「はい。あの、変ではないでしょうか?」


「ぜんぜん。いい匂いだよ。エレーヌの匂いもね」


「あ、もうっ。騎士様はやっぱり変態さんですね」


「そうそう、男はみんな変態なんだよ」


 笑いながら家を出る。

 さぁ、開拓を始めよう。

開拓村の男たち

Anthony

Barney

Cliff

Daniel

名前の理由は並びを見ればなんとなくわかると思う。

以降のキャラ名も何となく察しがつくはずである。少なくとも、頭文字は。

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