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開拓開始……?

 開拓村にまで戻るとエレーヌに怒られた。

 三日もどこにいってたんですか、とガミガミお説教。

 三日も瞑想してたのか、オレ……。


「聞いてらっしゃるんですか、騎士様!」


「聞いてます。すいませんでした」


「本当に心配したのですからね! ティルフィンが探しても見つからないというし、何かに襲われたのかと思ったのですよ!」


 たぶん、ドリュアスの結界でティルフィンは立ち入れなかっただけだな……。


「まったく……今後はこのような事が無いようにお願いします、騎士様」


「分かった」


 シャーマンのレベルは相当上がったし、今後特に瞑想の必要は感じない。

 心霊治療は結構高レベルなシャーマン魔法なのだ。

 それが使える時点で相当レベルが上がったのは確かだ。


「ところでティルフィンは?」


「山にイモを掘りに行きましたよ」


「イモ……ああ、自然薯か」


 そういえば調査に出かける前の朝飯に自然薯を摺ったものがあったな。

 苦手だから食わなかったけど。


「って、今は春だろ」


「はい? そうですけど、それが何か?」


「いや、自然薯って秋の……」


 どんぐりがある時点でそんなのはナンセンスな話か……。

 考えてみりゃ、たびたび捕まえて食ってるウサギとか春なのに毛が白いし。

 ここらの動植物に季節云々とか言っても無駄だ。


「えーと、ミルクたちは?」


「薪を拾いにいっています」


「そうか」


 薪拾いか、すっかり忘れてたな。

 考えてみりゃ、薪ってかなり長いこと乾燥させなきゃ使えないんだよな……。

 参ったな、開拓が進めば住人が増えるだろうし、燃料不足が問題になるぞ。

 現状、開拓出来てて安全な森が極一部しかないんだし……。


「うーん……」


 伐採した木は売るんじゃなくて、薪として保存しておく必要がありそうだな。

 けど薪って伐採してすぐに使えるようになるもんじゃないし……。


「しばらく木こりの生活しないといけないな……」


 魔法でズバッと乾燥させるような技法でもありゃいいのに。

 まぁ、そんな魔法無いけどな。魔法は戦闘用のものだ。

 とはいっても探せばあるのかもしれないが、少なくともオレには使えない。


「あー、それから水だ。水」


 今ある井戸はたっぷりと水を蓄えているが、数百人規模の喉を潤おせるほどじゃない。

 ため池でも作るか、湖から川を引いてくるか……。


「えーと、それから食糧だろ、農地だろ、水の分配だろ……ああ、農作をするには飲水よりもっと大量の水が……」


 開拓って死ぬほど難しくね……?


 まぁ、オレが考えなくても後々入植してきた奴らがなんか考えるだろ。たぶん。

 他力本願? 知らねえよ。オレは開拓しに来ただけで責任者じゃない。


「とりあえず、オレ、森のほうで木倒してくるわ」


「あ、はい。いってらっしゃいませ」


「エレーヌは今日どうすんの?」


「はい。水道が必要になるだろうと思って、新しく井戸を掘っています」


「ん、そっか。必要ならオレも手伝うから気軽に相談してね」


「はい! ありがとうございます! がんばりますね!」


 そんな感じで談笑してから斧を担いで森まで出向いた。

 戦闘用の斧だが、まぁ大丈夫だろうという事で何本か木を切り倒し、それをロープで縛って持ってきた。


 ジャン爺さんを呼び出して手伝わせ、木から枝を落として皮を剥ぎ……。

 それが終わったら長い丸太を分割して、それをバカバカ割っていく。


「いやはや、仕事が早いですなぁ。歳を喰うと薪割りが大変なのですが、若いというのはいいですなぁ」


「爺さんもまだまだ若いって」


 そんな雑談をしつつ、丸太をバカバカ叩き割って、こないだ家財道具を拝借した適当な家に放り込んでおいた。

 野ざらしにしてたら腐るし、雨に当たったら乾燥が無駄になっちゃうからなぁ。


 そんな作業を続けていると、出かけていたティルフィンやミルクたちも帰ってくる。

 そのたびにエレーヌに怒られたのと同じような内容で怒られた。ほんとすまん。


 その後は総出で薪割りの作業を続けた。

 燃料が必須なのは確かだし。

 ただ、どうにもこうにも人手が足りないので作業の進みは遅い。


「人手が足らんな。ゴブリンとかコボルトとかを使えないかな」


「ご主人様が言えばすぐだと思うよー?」


「キングのいう事はちゃんと聞いてくれるもん」


 そういえばそうか……。


「よし、じゃあミルクたちは伝令に行ってくれ。薪割り作業を手伝うようにな」


「りょうかーい!」


「いってきまーす!」


「帰ってきたらご褒美ちょうだいね!」


「はいはい、いってらっしゃい」


 斧を捨てて走り出したミルクたちを見送る。


「ティルフィンもコボルトに伝令を頼む。コボルトには井戸掘りを手伝ってもらおう」


「はっ、承知しました!」


 忍者みたいなやつだなぁと思いつつ走り出したティルフィンを見送る。

 さて、オレは作業を続けるか。木を切り倒すにはオレの方がいいだろう。


「ジャン爺さん、オレは新しく木を採ってくる」


「おお、分かりましたぞ」


 ジャン爺さんに言って、森へ。

 そしてまた何本も木を切り倒し、その都度村へと運び続ける。


「しかし……」


 オレ、いつの間にかとんでもない怪力になっちゃってんな。

 まぁ、一本ずつ運んでるし、そこまでトンデモない話ではないだろ。


 その後、村に集められたゴブリンのおかげで作業は目覚ましい進歩を見せた。

 一番力の必要な辺りをオレが担当して、バカスカ薪を割らせていれば、あっという間に木が一本丸ごと丸太になった。


 その日は結局一日中薪割りを続けた。

 そして、夜はミルクたちとしっぽり楽しんだ。


 ロリっぽいのも、たまにはいいよね!







 さて、開拓に来てるんだか林業に来てるんだかわからんような生活を一週間ほど続けて。

 数件の家が切った薪で一杯になり、一軒の家が拾って来た薪で半分ほど埋まった。


 乾燥してない薪は色々試してみたところ、火付きが悪いのと少々匂いが出るくらいだ。

 火付きが悪く、爆ぜる事を除けば使用にあまり問題はない気がする。

 まぁ、匂いが出るのはちょっとアレだが、そこらへんは我慢が肝要だろう。


 そして林業で賑わいを見せ始めた村に、行商人が来た。


「行商人? なんでまたこんなとこに」


「さー? よくわからないけど来てるよー」


「村の入り口のところで待っててもらってるー」


「私たちの同族を見ちゃったら驚くよねー?」


「あー、確かになー」


 ゴブリンがわんさかいるからなぁ、この村。

 コボルトたちはあちこちに散って井戸を掘ってるんで、この村にはあまり姿が見えないが。

 対照的にゴブリンたちは井戸を掘る事が出来ないので薪割りを手伝わせ続けている。


「しゃあなし、オレがちょっと出向いてくる」


 というわけで、村の入り口の方へと出向くと、そこには確かに行商人が居た。

 幌馬車が一台に、御者兼行商人、そして護衛だろう腰に剣をぶら下げたおっさんが一人。


「おやっ? ジャン爺さんは?」


「調子に乗って一昨日腰をやったから寝てる」


「それはまた何とも……それで、あなたは?」


「オレはハヤテ。この村の開拓に来た者だ。先週頃から開拓を始めてる。で、あんたの用件は?」


「ええ、見ての通り行商でして。ジャン爺さんには昔の恩もありまして、この通りここまで色々と必需品を運んでおります」


 ふーん、人脈の広い爺だなぁ。


「何を持ってきてるんだ?」


「香水と布、それから小麦に豆、塩、胡椒、エールが二樽、あとはまぁ色々と小物を少々」


「なるほど。こっちは何を出せばいい?」


「まぁなんでもいいですな。ウサギの毛皮や、ゴブリンの牙だとか」


「薪は?」


「薪ですか。値段は安いですが、量次第では……」


 だろうな。

 とはいえ、都市を支えるに足る薪を調達するのは楽な事じゃない。

 首都にまで向かう運河が開通出来れば、薪の流通で相当な儲けが出せそうだが……。


「とりあえず、あんたの運んで来たもんを全部買うにはどれだけ薪があればいい?」


「香水を除けばこの馬車がいっぱいになるくらいあれば、と言ったところですかな。もう一つ馬車がいっぱいになる量があれば、香水もおゆずりしましょう」


「じゃあ香水は要らん。……ああ、いや。香水の代金はコイツで払えるか?」


 バックパックからポーションを取り出す。

 いちばん効果の低いマイナーヒーリングポーションだが、結構高いはずだ。


「もう一つ欲しいところですな」


「もってけ」


 もう一個取り出して渡した。


「まいどありぃ」


 ポーション二個と引き換えに香水を手に入れ、それから薪を持ってきて馬車に積み込み。

 そして、それと引き換えに持ってこられた品全てを手に入れた。


「次、いつ来るんだ?」


「そうですな、まぁまた一月後と言ったところでしょうか」


「もうちょっと早めになんないか? それから持ってくるものは毛布とかの布類を多めに頼みたい。前金にポーションを幾つか払う」


「分かりました。なるたけ便宜を図りましょう」


「それと、ここいらで開拓民を募集してるって伝えて欲しい。まぁ、あんたの客に適当に言うくらいで構わないからさ」


「その程度でしたら容易いことです」


「悪いね。じゃ、頼んだよ」


 立ち去っていく行商人を見送り、新しい開拓民が来ればいいんだが……と思いつつも、再び仕事へと戻った。

 まだまだやらなければならないことはたくさんある。

 休んでる暇はない。……たまには休日欲しいけどな。

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