開拓準備
シャーマンの力がすごいことが分かったが、それでどうにかなるわけではなく。
朝食の席はつつがなく終わり、考えていた事を提案した。
「さすがにずっとジャン爺さんの家に逗留してるのもアレだし、家を整備しよう」
「そうですね……さすがに人数が増えて手狭になってきてしまいました」
「私は家の外でも構いませんが……」
「私たちもー」
「お外で生活するのは慣れてるもんねー」
「ねー」
いや、そういう問題じゃないだろ。
というか、モンスター娘たちはいいかもしれんが、オレの精神の安定のために外に住むのはやめれ。
「幸い、ここらには家の残骸がたくさんあるし、場所や材料には事欠かないだろ」
ちょっと直せば使えそうなのもあったし。
それを直せば今日にでもそっちに移れるだろう。
問題は家具だけど、そればっかりはどうにもならんかなぁ。
「そう遠慮せずともこちらに逗留していても構いませんが」
「いや、ずっと留まってるのも悪いし」
「いえいえ、そう遠慮なさらず」
どうしてそう強硬に引き止めるんだこの爺さん。
そしてさっきからモンスター娘たちに視線を送るのやめれ。
「とにかく、今日は住居の整備だ。予定は色々と詰まってるし、手早く終わらせよう」
何をするにしても、とにかく開拓をしなきゃいけない。
その一番の障害となっているゴブリンとコボルトたち。その二種族からは支持を得ることに成功した。
可能ならゴブリンとコボルトを和解させる……無理なら停戦条約でも結びたい。
出来る事ならゴブリンやコボルトを労働力として利用したいものだ。
森に慣れ親しんでいる種族が居れば、森を林に開拓していくのも楽になるだろう。
「とりあえず、ちょうどいい家を探そう」
「そうですね。出来る事ならあまり整備せずに使える家があればいいのですが」
そういうわけでさっそく家を探してみるが、割合状態のいい家が多い。
放置はされているが、ちょっと手入れをして掃除をすれば使えそうな家が大半だ。
どの家にするかちょっと迷ったが、家財道具が一番残っている家にした。
掃除はエレーヌとティルフィンに任せ、あちこちの家から家財道具をかき集めるのをオレとゴブリン娘たちで担当。
それらの家財道具を家に運び込んで、使えそうなものはそのまま使う。
使えなさそうなものは別の用途に使えるように一旦放置。
そして次は家の整備。屋内の掃除には時間がかかるので、その間にオレとゴブリンたちでやっておく。
家を整備するのに必要な木材は壊れた家から状態のいいやつを回収してきた。
痛んだ屋根を剥がし、そこに板を打ち込み……。
「釘が無い」
「こわれたお家から取ってくればいいんじゃないの?」
「錆びてて使えん」
どうしたもんかなぁと思いつつバックパックを漁る。
ピッキング用のキーピックがあった。
先端の方が尖ってるので打ち込んでみたら一応固定できたのでそれでよし。
「ご主人様、こんなので大丈夫なの?」
「さぁな。応急処置だからいいんだ」
そのうち町に出向かなきゃなぁ……。
開拓が成功してるって伝われば行商人も来てくれると思うんだが。
まぁ、今は辛抱だ。行商人が来てくれるまで間に合わせればいい。
「んー、とりあえずこんなもんでいいか」
腐ってた木材は全部取り換えたので、一応大丈夫だろう。
取り換えた上に、サメの皮を張って防水シート替わりにする。
ちなみに動物の皮は装備を作るの必要なアイテムなので割とたくさん持ってる。
「よし、屋根は完了だな?」
「うん。他に腐ってるところはないよー」
「ご主人様がへたくそだからブサイクになってるところはたくさんあるけど」
「それも愛嬌っ、だよね」
「ああ、いいんだ。そしてバーバリアンのオレに修理技能を期待するな」
間に合わせなんだから見た目がダサくたって何の問題もないんだ。
とりあえず屋根の修理は完了したので屋根から降り、次は壁の修理に取り掛かる。
雨が直撃しないから、こっちは簡単に済ませればいい。
適当にやればいいわけだからこっちはさっさと完了してしまい、あとは家の中だ。
とはいえ、屋内は風雨に晒されていなかったからあまり痛みはない。
雨漏りしてただろう辺りはちょっと痛んで居たが、そこも応急処置で済んだ。
「家の中の修理も完了だな」
「ハヤテどの、家具の修理も大体おわりましたぞ」
手伝ってくれているジャン爺さんは家具修理の担当だ。
歳だから屋根の上は危ないってことで屋内の家具を手伝ってもらってたのだ。
「おつかれさん、ジャン爺さん。使えない家具とかあった?」
「大体は使えましたな。痛みがあったので、一つベッドをバラして材料取りに使いましたが、とりあえず全員分のベッドは確保できましたぞ」
「ありがたい。後は寝具だな」
干したワラでもあれば、間に合わせではあるがそれを使えるんだが。
生憎と、ベッドに使えるほど大量のワラが無いらしい。
まぁ、ワラの用途って結構あるし仕方ない。
「毛皮でもあれば、それを敷けばいいのですがな。今は布を何枚か敷いて、という事になるでしょう」
「毛皮かぁ……」
ウサギの毛皮なら何枚かあるけど、足りないだろうなあ。
しかし、なんで加工後の皮はあるのに加工前の毛皮がバックパックに入ってないんだろう。
皮はチュートリアルで使うからか? けどサメ皮なんてチュートリアルで使わなかったと思うんだけど。
まぁいいや、考えても仕方ないし。
「とりあえず、私の家から幾らか寝具を持ってきたので、それを使うといいでしょう。二人分しかありませんが、分ければまぁなんとかなるでしょう」
「ありがとう。借りはいつか返すよ」
毛皮やら布をまとめて作られたシーツ。あのシーツの寝心地はかなり良かった。
毛皮の柔らかいモンスターか動物が居れば、それを狩って寝具にするんだがな。
あるいは綿花があれば綿を作って……。
いずれにしろ行商人が来てくれるか、あるいはオレたちが町に出向かなきゃ調達は不可能だな。
そう思いつつも、とりあえずシーツは放置しといてエレーヌを手伝って家の掃除に移る。
そうして、日が暮れる頃には家の整備は完了し、すぐにでも人が住める状態になった。
便利な道具が無いと、こんなにも時間がかかるのだと強く実感した。
ああ、文明社会が恋しい。
「ふー、とりあえず住めるようになりましたね」
「ああ、そうだな。これでとりあえずは一安心だ」
祝杯でも上げたいところだが、そこまで食糧に余裕がない。
この開拓村の食糧事情は毎朝ウサギやらを調達してるところからお察しだ。
「とはいえ、完了したのは住居だけなんだよな……」
「そうですね……開拓はまだまだこれからですね」
とりあえず農地を開拓して、それから畜産物を用意してだが……。
治水はとりあえず完了してるしから、農地と畜産を何とかして、が開拓になる。
でも畜産って何飼えばいいんだ。牛は利益率悪いって聞いた事あるけど。
農法はノーフォーク農法しか知らないぞ……しかも知ってるの名前だけだし。
「あー、人材が足りない……」
オレもエレーヌも戦う事しか出来ない。
唯一農作が行えるのはジャン爺さんくらいだ。
ゴブリンやコボルトは農耕民族ではないみたいだし。
「農夫ー、農夫居ないかー……」
もっと開拓を推し進めていって、開拓がうまく行ってると噂になれば誰かが来てくれるとは思うんだが。
それまでの道が遠いな……。
「まぁ、とにかく頑張らなきゃな。明日はまずゴブリンとコボルトたちとの和平交渉だ。無理なら停戦だな」
「そうですね。今は騎士様がゴブリンとコボルト双方の長ということになっているそうですし」
「ああ。明日はまずコボルトの集落に出向いてキングに就任する事を伝えてから交渉になるだろうな」
まだまだやらなきゃいけないことがいっぱいある。
コボルトやゴブリンも労働力として役立ってくれればいいんだけどな。
「さて、今日はもう寝ようか」
まだメシ食ってないけど、メシ自体用意出来てないし。
まぁ、一晩くらいなら何とかなるさー。
「明日は忙しい一日なるでしょうから、休息は大事ですね」
「ああ。というわけで、今日の業務は終了! 解散!」
そして各自部屋に散って……。
「なんでお前らついてくるの」
「約束だよー」
「忘れたとは言わさないよー」
「ご褒美たのしみにしてたんだよー?」
「今日、疲れてるから……」
「そういう倦怠期の夫婦みたいなこと言ってもダメー」
「いや、マジで疲れてるから勘弁して……」
などと言っても許してくれるゴブリンたちではなく。
その晩もオレはしっぽりと励むことになったのだった。




