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決着

 獣の咆哮が響き渡った時、自然とオレの頭の熱が全て冷めていくのが分かった。

 頭の中の無駄な感覚、意志がそぎ落とされる。


「エレーヌ、攻勢が始まった。いつでも動けるように準備を」


「は、はい……残念ですね……」


「ま、まぁ、それは後でな……」


 そう、あとでだ。あとで。

 ……絶対に生きて帰らなきゃな。

 色んな意味で! そう、色んな意味で!


「よし……」


 スクラマサクスを抜く。この剣はとてもしっくりとくる。

 子供の頃に母方のじっちゃんに剣道の練習させられたけど、その時に持たされたモノホンの刀に重さが似てるんだよな。

 だからなんとなくしっくりくる。

 しかし、なんでスポーツ用品のメーカーが軍刀なんて作ってたんだろうな。戦時中ってこわい。


「エレーヌも準備はいいな?」


「はい。問題ありません」


 その答えを聞いて呼吸を整える。

 接敵地点まで、ここからの距離は30メートル。

 オレの持ってる魔法の中で、最も威力の強いものをぶっ放してから強行突入するつもりだ。


 その突入のタイミングが重要になってくるが……。

 どう見極めればいいのか……。

 分からない。だが、やらなくてはならない。


 集中するんだ、オレ。

 心を研ぎ澄ませろ。

 一意専心の心構えだ。




 そして、森の中にぽっかりと空いた広場にコボルトたちが現れたと同時、それに応じてゴブリンたちが森の中から現れ始める。

 コボルトたちは全員が薄汚れた茶色い毛をした人型の犬と言ったところだ。

 人間のように見えるメスは一匹もいない。


 対するゴブリンたちは男も女も入り混じった混成部隊だ。

 恐らくだが、ゴブリンたちにはそもそも戦士団を構成するという考えが無いんだろう。

 昨日、男たちが潰走した後はメスゴブリンたちが突っ込んで来たものな。


 そんなことを考えていると、ゴブリンとコボルトたちの戦いが始まる。

 戦いは拮抗している様子だ。コボルトたちはゴブリンより体格がいいが、ゴブリンのちょこまかした動きに対応し切れていない。


 しかし、コボルトキングは一体どこに居るんだ?

 この戦いにはコボルトキングが出てくると踏んでいたのに。


 自分の心が焦れるのを感じる。

 もしもコボルトキングが出てこなければオレの作戦は瓦解する。

 元々穴だらけの作戦だったのだ。瓦解してもおかしくはない。

 だが、コボルトキングが出る可能性は高いと思っていたのに……。


 そう思った時、戦いが始まる前に森に響き渡ったあの咆哮が響き渡った。

 そして、コボルトたちが現れた側の森から、新たなコボルトが姿を現した。


 通常のコボルトの倍はあろうかという巨体。

 手には大型の剣。それをまるでナイフのように振り回しながら、森の中から歩みだしてくる。


 普段よりも遥かに精強なゴブリンたちに業を煮やしたのだろう。

 いまいちよくわからなかったが、あのゴブリンたちの動きの良さからしてベルセルクポーションを飲んでいるのは間違いない。

 それに焦れてコボルトキングが姿を現したのだ。


「エレーヌ、見えるか」


「はい。間違いなくキングです」


 あれを仕留めればオレがコボルトたちの長になれる。

 そして、それに追随してゴブリンたちの従属も得られる可能性が高い。


 仕掛けるタイミングを勘案する。


 だが、そう考える暇もなく、コボルトキングがその大型の剣を振り払って、ゴブリンを一刀両断した。

 それにひるむゴブリンたちではなく、次々と挑みかかっていくが、他のコボルトたちに妨害されて上手く行っていない。


「エレーヌ、仕掛けるぞ」


「いいのですか?」


「コボルトキングは勝利を確信してる。恐らく、この好機を生かすために全戦力を投入したんだ。そこをオレたちが邪魔する事で精神的なアドバンテージを取れる」


 そう言うや否や、オレはルーンを構築する。

 学術系魔法最強の威力を誇るドラゴンブロアー。

 ソウイル・テイワズ・スリサズ・テイワズ・ソウイル・テイワズ。

 六個のルーンを繋ぎ合わせた魔法だ。ソウイルが二つ、テイワズが三つ使われているが、一つ一つの意味合いが違う。

 ソウイルから順に、太陽・神・門・戦い・生命力・勝利。だ


 意味としては、太陽神の扉が開かれるとき戦いは始まり、太陽神の力が降り注ぎ術者は勝利を得る、と言ったところか。


 仰々しい名前に相応しく、最大威力でぶっ放せばドラゴンも一撃で吹き飛ばせる。

 ただし、一度使うとマナポイントを全部吐き出すので使ったら終わりだ。

 しかもマナポイント次第で威力が変わるので、ジョブ次第ではあんまり威力が出ない。

 オレが使ってもそんなに威力は出ないと思う。

 だが、コボルトたちを吹き飛ばすくらいは余裕だ。


「いっけぇ!」


 空中に力ある言葉が浮かび上がり、そこから凄まじい熱量が生み出されていく。

 そして、解き放たれたビームのような魔法が直線状の全てを薙ぎ払った。


 森の中にぽっかりと空いた穴。

 その先に居たコボルトたちの殆どが吹き飛ばされ、コボルトキングまでの道が拓かれる。


 やはりだがオレの魔法の威力は不足していたようで、コボルトたちを消し飛ばすたびに威力が減衰していた。

 コボルトキングに到達するまでにはほとんど威力もなくなってしまっていた。


 だが、ドラゴンブロアーの役目はただの露払い。何の問題もない。


「行きます!」


 エレーヌが飛び出す。そして、オレも同じく飛び出す。


 エレーヌが手にしたカットラスを閃かせる都度、コボルトが一刀両断されて地に付していく。

 強い。もしかしてオレより強いんじゃなかろうか。

 仲間たちにレベルはなかったし、エレーヌはそんなに強い方ではなかったのに……。


 いや、そんなことを考えてる場合じゃない。今はただ戦う事を考えて居なくては。

 そう心を決めて、オレはエレーヌの切り開いた道を突き進む。

 そして、コボルトキングの眼前にまでたどり着くと、エレーヌと立ち位置をスイッチ、入れ替える。


 エレーヌが周囲の警戒をし、オレとコボルトキングの一騎打ちに邪魔をさせないようにしているのだ。

 その期待に応えるべく、オレはコボルトキングに向けて声を張り上げた。


「コボルトキング! オレと勝負をしろ! オレの名はハヤテ! 人間の戦士、ハヤテだ!」


 そう宣言し、一拍を置いてオレはコボルトキングに切りかかった。

 意識の空白を突いたつもりだったのだが、コボルトキングはそこまで甘くはなかった。

 その手にした剣で、オレの突き出したスクラマサクスを受け止めていたのだ。


「ちぃっ!」


 今の一撃を止められるとは思っていなかった。

 地面を蹴って距離を取り、コボルトキングの振り回す剣の効力圏から逃れる。


「ウオオォォオォォォォン!」


 獣染みた咆哮。物理的な圧力すら持っているんじゃなかろうかと思えるほどだった。

 そして、咆哮を上げて開かれた口をコボルトキングはそのままオレへと向けて来た。


「くっ! 剛破拳!」


 バーバリアンのスキル剛破拳を放つ。

 剛破拳と大層な名前はついているが、ただ力いっぱいぶん殴るだけのスキルだ。

 しかし、その威力は確かでコボルトキングの頭を弾き返す事に成功していた。


「まだまだぁ! 蛇鞭蹴!」


 剛破拳と同じく力いっぱい蹴っ飛ばすだけの蛇鞭蹴。

 だがやはり威力は凄まじく、コボルトキングの足に向けて放った一撃は成功していた。

 オレの一撃で関節を潰されたコボルトキングが崩れ落ち、実にちょうどいい位置にコボルトキングの頭があった。


 ぐるりと体勢を変え、全力で腕を後ろへと引き絞る。

 背筋も動員した、全身全霊の突き。


「ぜぇぇぇあぁぁあぁぁっ!」


 その一撃は確かにコボルトキングの首に直撃し、その命脈を断っていた。

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