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Noir et Rouge 〜闇夜に開かれし宴〜  作者: 吾桜紫苑
第1幕 始まりの宴
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予感 〜Rouge〜

 オオカミもどきを一太刀で切り捨て、その隙を狙って飛びかかってきたイノシシもどきを切り刻む。


『水よ、刃となって敵を切り裂け!』

 ヴィルさんの呪文を聞いてさっと横に避けると、術式によって作り出された水の刃が、残りのイノシシを全て切り裂いた。


「これで、終わりっと♪」

 オオカミもどきを5体まとめて切り裂いて、私はヴィルさんの元に戻った。



「お疲れ様でーす!」

「随分と楽しそうだね……」


 上機嫌な私に、ヴィルさんは苦笑していた。何となく、青灰色の髪がくたびれて見える。紫色の目にも、何だか疲れが見えた。戦い疲れ、かな。


「まあ、ここまで続けて化け物切り刻める機会、最近無かったですから」



 最近不景気(ノワ談)とかで、化け物退治の依頼も少なく、とっても暇だったのだ。久しぶりの依頼はビルに侵入だから、心ゆくまで舞えなかった。やっぱり、化け物退治は広い場所に限る。



「そ、そう……」

 何故かびびった顔でそう言うと、ヴィルさんは馬車に入れてくれた。



 ヴィルさんも行き先が同じという事で、無事同乗させてもらえる事になった。最初は何故か反対されたんだけど、ノワがそこにいるんだもん! って言ったら、急に真剣な顔になってしばらく考え込んだ後、一緒に行こうという話になった。


 聞けば、ヴィルさんの妹さんもそこにいて、ヴィルさんは、彼女を助け出すべく集落に向かっているのだとか。



 ——ノワ、そこで何をしてるんだろう。


 ノワは化け物を激しく嫌っている。その中でも、吸血鬼は憎悪していたはずだ。たぶん私を追ってきたんだろうけれど、着いた先がそんな所では、今頃何をしているか分かったものではない。


 吸血鬼たちを跡形も無く消し去ろうとする、事は間違いないんだけど……


 魔力の波動を感じてしばらくした後、ノワの魔力が急に強くなって、直ぐにかき消えてしまった事が、妙に気になる。その強くなる感じは、前にも感じた事があったからだ。


 ノワは時々、魔力を暴走させる。未熟な精神や肉体が、その桁外れの魔力量を、コントロールしきれずに。


 魔力の暴走は、ノワの命に関わる。だから絶対に押さえろって、マスターに何度も言われていたんだけど、ノワはあまり耳を傾けていなかった。むしろ、強い化け物を倒すために、意図的に暴走させる事さえあった。

 もしノワが、多勢に無勢、追い込まれて、暴走させたのだとしたら……


「説教しないとね」

「え?」

 ヴィルさんが不思議そうに聞き返してくる。

「あ、ううん、独り言です」

 首を振ってみせると、ヴィルさんはとりあえず納得した様子で頷き、馬車を走らせ始めた。


 ——マスターがいない今、ノワが無茶したら、説教するのは私の仕事だ。



 そんな事を考えていると、不意に、ノワの魔力を感じた。魔力の波動から感じるのは、混乱。



 ノワが混乱するだなんて、あり得ない。私よりずっと頭が良く、どれだけピンチでも冷静に戦略を立てるノワは、動揺とか混乱という言葉とは無縁だ。

 そんなノワが混乱する事態って、いったい……



「……あの、ヴィルさん。その集落まで、あとどのくらいかかりますか?」

「一応近道を通ってはいるけど……、少なくとも7日はかかるよ」

「急げませんか?」

「いや、無理だ。これでもいっぱいいっぱいだよ」

 苦々しい顔に、ヴィルさんも焦っていると分かった。だから、それ以上は何も言わなかった。



 逸る気持ちを抑えて、私はノワの無事を願った。


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