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調査と文明 〜Rouge〜

ああ、自分に課していたルールが……

またフウ側です。

 ノックをすると、魔力が一気に収束するのを感じた。

 返事を待って部屋に入る。ノワが、椅子に座ったまま振り返った。


「ノワ、ヴィルさんに話聞いてきたよ」

「それで、どうだった?」


 ノワが向かいの椅子を勧めてくれつつ、説明を促した。顔を顰めてみせる。


「私が説明するのが苦手なの、知ってるくせにー。っていうか、ノワが聞けば良かったじゃん」

「説明まで求めていない。印象だ。後で細かいことは読んで(・・・)やるから、話を聞いた感触を話せ」


 私の愚痴を無視して、ノワが話を進めた。聞く耳持たずのノワに舌を突き出して見せてから、答える。

「んー、趣味悪いなあって。あと、呪いを解く方法っていうのも、胡散臭い。それにあれ、本当に魔物の呪いかなあ」


 ノワが頷いて、手をすっと伸ばした。指先を私の額に当てる。目を閉じ、ヴィルさんとの会話を頭の中で思い浮かべた。



 ノワの魔力が私の中に流れ込み、見えないもの——私の記憶を引き抜く。



 ノワの指が離れたのを感じて目を開けると、ノワが不機嫌な顔で虚空を睨んでいた。

「どう?」

「最悪だな。性質が悪い上、殺すことを前提にしていない。……呪い自体は魔物のものだが、それにしては、フウの言う通り人間くさい」


 苛立たしげなノワに、気になっていることを聞いてみる。

「……呪い、解けるの?」

「それについてはあの兄妹と相談だ。それに……」


 そこで一旦言いさして、ノワは先程傍らに置いた本を手に取った。


「……この世界、気が遠くなるほど時代遅れだ」


 ノワの手元を覗き込むと、分厚い本はどうやら魔術書みたいだ。よく分からない文字が使われている。多分、この世界の言葉だろう。


「ノワ、読めるの?」

「……ああ、魔術とやらのおかげでな」

 皮肉めいた言葉にちょっと首をすくめつつ、質問を重ねる。


「時代遅れって?」

「術式と魔術と魔法の分類もされていない。理論も穴だらけ、分からない事は全て神のおかげときた。挙げ句に、神に祈りを捧げて浄化の力を授かるのが解呪方法だそうだ。平安時代の祈祷師だな」


 ノワの言葉に呆気にとられた。


「……それって、私達の世界では資格も取れないんじゃ……」

「これで取れるとしたら、俺は取る気も起きないな」


 肩をすくめ、ノワがまた手を伸ばし、額に触れてきた。

 いきなり強い光が目の前で閃き、思わず目を閉じる。


「ちょっと、ノワ! 一言くらい——」

 言いかけて魔術書が目に入り、私は言葉を失った。


 さっきまでミミズがのたくっているようにしか見えなかった文字が、馴染み深い英語になっていた。


「ま、好きに読め。今のところ、欠伸が出るほど下らん内容しかないがな」

 びっくりしている私に、ノワが簡単に言った。


「うわー、流石……」

 感心している私を放って、ノワが立ち上がった。長身の背中が、書棚の奥に消える。


「ねー、どれくらい読んだの?」

「簡単にスキャンしただけだ、手前半分くらいだな。左端の棚の2段5列目の魔術書がお前向きだ」


 さりげなく聞きたいことまで答えてくれたノワにお礼を言って、私は示された魔術書を取りに行った。


フウとヴィルの実力差は、知識の差もあるようですよ、という話。

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