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Le matin 〜Noir〜

今日まででpv11000越え、ありがとうございます!

これからも頑張って更新しますので、応援よろしくお願いします。

 目が覚めると、俺はベッドに身を横たえていた。


「…………」


 身を起こすと、軽く眩暈がした。さほど酷くはないので無視して、記憶を探る。


「現実……か」

 慣れ親しんだ己の魔力と共に、異質なもの——妖気を感じて、溜息混じりに漏らした。


 現状は俺にとって限りなく不愉快なものだったが、自分の行動には後悔していない。



 ベッドから降りる。フウの気配が俺の部屋に近付くのを感じて、ドアに歩み寄り、開けた。

 視線を下げると、目を丸くしたフウと視線がかち合う。


「部屋に運んだのは、お前か。きちんと依頼は果たしたろうな」

 こちらから声をかけると、フウが我を取り戻した。


「ノワ、寝てなきゃ駄目だよ!」

 急に間近で大声を出されて、思わず顔を顰める。


「大きな声を出すな。隣はあの兄妹だろう。起こしたら悪い」

 そう言いながら、フウを部屋の中へと誘う。ドアを閉じて、防音魔法を張り巡らせた。


「魔法は——」

「あのな、もう傷も癒えているし、貧血もほぼ治まっている。この程度の魔法で疲弊する俺ではない事くらい、知っているだろう」

「そうだけどー……」


 未だ釈然としない表情のフウの言葉を無視して、重ねて問いかける。

「それで? あいつは祓ったんだな?」


 唇を軽く尖らせつつ、フウは頷いた。

「うん、一応ヴィルさんには見せてないよ。ノワが、トラウマになるからって言ってたし」


 どうやら、一切の容赦なく切り刻んだらしい。以前に言っていた忠告をきちんと守ったことに、満足した。

 あれは、まともな神経の持ち主には、とても見られたものじゃない。


「だったら、後片付けをしないとならないな。いつまでも血まみれというのも、他の化け物を呼び寄せそうだ」

「あ、それはもうやったよ。夕べ、ノワ達を運んでから」


 それを聞いて確認してみると、確かに痕跡は——魔力にせよ血にせよ——一切残っていない。


「そうか、よくやった。……さて、朝食でも作るか」


 昨日屋敷を探査したときに、屋敷内の大まかな見取り図は頭の中で完成させてある。厨房や食料庫の在処も、その時に頭に入れていた。



 部屋を出ようとする俺を、フウが引き留めた。


「……ねえノワ、私まだ、よく分かってない。何があったの?」


 真剣な顔で尋ねられて、ここ1週間ほどの記憶が一気に蘇った。怒り、憎しみ、その他あらゆる負の感情が込み上げるのを、辛うじて押さえ込む。


「大体は分かっているんだろ。……俺を祓うか? フウ」

 フウははっきりと首を振った。


「ノワはノワだから。それに、ヴィルさんの妹さんも死んじゃうんでしょ? それは可哀想だよ」

「……そうか。分かった」


 とりあえず頷いて、俺はこれまでのことをかいつまんで説明した。

 話が終わったとき、フウはやや不満げな顔をしていた。


「……こんな事なら、もっともっと痛い思いさせてやるんだった……」


 さりげなく怖い事を呟いた気がしたが、聞こえなかった事にして、厨房へと向かった。


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