支度 〜Rouge〜
ノワから襲撃点の指示を受けたのは、私とヴィルさんが集落へ無事侵入し、ノワのいる部屋の真下に辿り着いた時だった。
「屋敷の入り口から堂々と、か。ノワにしては珍しいな」
普段、ノワは慎重派だ。気にしすぎじゃないかと思えるほどあらゆる可能性を検討して、危険を極限まで排除する。どれほどの力の持ち主がいるかも分からない場所に、こうして堂々と侵入させるだなんて、珍しい。
「……危険じゃないか? 警備だっているだろうし、もっとこっそり入り込んだ方が——」
「いいえー。説明しましたけど、私の仕事は目立つことですから。心配しなくても、だいじょぶですよ」
不安げなヴィルさんにそう言って、ヴィルさんに手を差し出す。ヴィルさんはしばらく躊躇っていたけれど、緊張気味に私の手を握った。
体内に魔力を循環させ、強く地を蹴る。ふわりと躯が浮いて、窓枠に着地した。
ヴィルさんを見ると、肝の冷えた表情を浮かべている。
「無茶苦茶だな……」
怯えたような呟きは聞こえなかったことにして、私は窓を開けた。ノワが鍵を開けていてくれたので、あっさり侵入成功。
部屋の様子は、夕べとほとんど変わっていなかった。違うのは、ベッドに綺麗な銀髪の女の子が眠っていること。ノワの魔法で眠っているみたいだ。
「あ、多分呼んでも起きませんよ。魔法で眠っているみたいです。出来れば静かにお願いします」
声を上げかけたヴィルさんを止める。ヴィルさんは口を閉じて、無言でベッドに駆け寄った。
「じゃあ、私は行きますね。いいですか、ぜっっったい、ここから出ないで下さいね」
念押しして、ヴィルさんが頷くのを確認してから、もう1度窓から飛び降りた。
着地して、音を立てないように走り出す。そのまま、入り口に真っ直ぐ向かった。




