接触 〜Rouge〜
(——聞こえるか、フウ?)
そろそろ侵入しようかというところで突然ノワの声が聞こえて、思わず飛び上がった。
「フージュ、どうかした?」
驚いたように尋ねてくるヴィルさんに、少し黙ってもらえるよう目で頼んで、私はノワに返事を返した。
(ノワ! 何があったの?)
(……声がでかい。まあ、無事なようだな)
やや辟易したような声が返ってきた。1番聞きたい事が抜けている。
(私の無事はよくって。何かずっと魔力の波動が弱かったけど、どっか怪我でもしたの?)
(結界を張ってるだけだ。今は魔力を感じられるだろ? ……まあ、今ここから出ることは事実上出来ないが)
いつも通りのノワの声に、苦々しさが混ざった。閉じ込められている自分が腹立たしい、といったところだろう。
どうしてそんな事になったのか、尋ねずにはいられなかった。
(ねえノワ、本当に何があったの?)
(……フウ、悪いが今は話せない。今夜、ここに来れないか? 場所はもう分かっているだろう。時間になったら、窓から入ってきてくれ。お前なら、気付かれずに集落に侵入できるはずだ)
妙に真剣なノワの声に、何となく逆らえなかった。
(……分かった。ちゃんと説明してね)
(ああ。こっちとしても、話したいことがある。夜、連中がいなくなったら、合図を出す。その後で入って来てくれ)
指示を出して、ノワは通信を切った。
ずっと黙って待っていてくれたヴィルさんに、ざっと説明する。
「……いやもう、どうして2キロも離れた相手と話せるのか、とかはもう良いとして……。それじゃあ、夜に彼と話すんだね。僕も行った方が良いかな?」
何故か疲れたような顔のヴィルさんの問いかけに首を振った。
「ううん、ノワはヴィルさんに気付いているはずだけど、ヴィルさんの事何も言わなかったから、来て欲しくないんだと思う。私1人で行きます」
「……分かった。僕が心配することじゃないかもしれないけど、気をつけて」
心から心配してくれているらしいヴィルさんに頷いて見せ、私は夜に向けて準備を始めた。
お気に入り登録してくれている方、評価、感想下さった方、ありがとうございます。
これからも応援して頂けると幸いです。