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Noir et Rouge 〜闇夜に開かれし宴〜  作者: 吾桜紫苑
第1幕 始まりの宴
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接触 〜Noir〜

 部屋中が大きく揺れて、俺は驚いて躯を起こした。


「何だ……? 敵か?」


 あの吸血鬼に勝てる奴など、そういないとは思うが。まあ、死んでくれたらせいせいするのも確かだ。

 適当にそんな事を考えていると、再び部屋が揺れた。続いて、何かがひび割れかける音。


 ……ああ、そういう事か。


 結界を壊す、というのは本気だったらしい。ドアごと吹っ飛ばされかねないので、こちらから結界を解いてやった。


 ドアが開き、吸血鬼が部屋に入ってきた。俺を見るなり、表情を険しくする。


「何故結界を張った」

 随分ときつい口調で聞いてくる相手に、素っ気なく答えた。


「五月蠅いからだ。まさかこんな派手な方法を取るとはな。それで、用件は何だ?」

「用が無ければならないのか?」

「用も無いのに、結界を壊してまで来るな。出ていけ」


 簡単な魔法を使って、ドアへと数歩下がらせた。吸血鬼の表情が、さらに険しくなる。


「……血を飲ませに来た。飲む意思が無さそうだと聞いたからな」

 その言葉に奴の背後へと視線をやると、少女が不安げな表情で立っていた。まだ顔色が青い。視線を戻した。


「飲ませられる状態ではなさそうだが」

「お前が飲まないと危険な状態だ。彼女が倒れるぎりぎりで止めてやるから、飲め」

 拒絶の言葉を紡ぐ前に、吸血鬼が言葉を重ねた。

「言っておくが、拒否しても飲ませるぞ。どんな手段を使ってもだ。最後には飲む事になるんだ、お互い無駄な時間を費やすのは避けるべきだ。そうだろう?」


 今はまだ、こいつとやり合うだけの体力は回復していない。渋々頷いた。


 少しの間、俺を疑わしげな目で見つめてから、吸血鬼は少女を促した。少女が俺に歩み寄り、腕にナイフの刃を食い込ませた。


 血臭を嗅ぎとり、傷から滴る血を見た途端、俺は彼女の腕を掴み、口元へと運んだ。夢中になって、血を飲んでいく。

 完全に化け物の所行だなと内心自嘲しながら、しばらく血の味に酔いしれた。



「……そこまでだ」



 吸血鬼が、俺の手から彼女の腕を奪い取る。俺は我に返り、少女はますます青ざめた顔でよろけた。吸血鬼が彼女を支える。


「少し調子が戻ったようだな。随分回復が早い」

 観察するように俺を見つめてから、吸血鬼はそう言った。


「もう用事は済んだのだろう? とっとと失せろ」

 尽きる事の無い自身への嫌悪感を隠しもせずに、視線で出口を指し示す。吸血鬼は首を振った。


「まだだ。食事を摂れ。朝は食べなかったと聞いた」

「魔力には余裕がある」

「回復の一助になる。いいから食べろ」


 俺の拒絶を退け、強い口調で促してきた。溜息をついて、少女が手渡してきた食事を食べる。

 まあ事実、俺の計画を考えると、魔力は多ければ多い方がいい。出来るだけ回復しておくべきだ。



 食べ終わると、確かに魔力が回復したのを感じた。


「夜にまた来る。結界は張るな」

「断る。化け物どもの巣窟で防衛を怠るほど馬鹿じゃない。防音の機能は外しておこう。声をかければ、結界を解く」


 吸血鬼は不満げな顔で俺を見据えていたが、俺の意志が固いのを見て取ったらしく、少女を連れて、黙って部屋を出て行った。鍵のかかる音が響く。



 結界を張った。補充した魔力の大半を回復に費やしつつ、残りの魔力でフウの位置を探る。


 驚いた事に、フウは直ぐ近くにいた。俺の閉じ込められている場所から、直線距離にして約2キロ。


 ついでにこの周辺の様子を探ると、どうやらここは集落のような場所のど真ん中、とてつもなくでかい屋敷の1室のようだ。フウは、誰かと集落の境界の外にいる。


 フウに向かって、言葉を送った。



(——聞こえるか、フウ?)


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