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第6話(前編) 搾取が独裁を呼ぶ構造の先へ

夕食後の静かな食卓で、総研とハクの対話が再び始まる。

テーマは「搾取と独裁の負のループ」。

抽象理論として理解していた構造を、スペイン帝国やロシア帝国といった歴史の実例を通して“制度としてどう動いたのか”立体的に捉え直していく物語だ。

富の集中が権力を呼び、権力の集中が搾取を固定化する――その因果が、ハクの落ち着いた語りと総研の思索を通して、静かに深まっていく。

夕食を終えた食卓には、まだ温かさの残る皿がいくつか置かれていた。


時計を見ると七時を少し過ぎていた。


総研は湯気の消えかけた味噌汁の椀を流しに置き、椅子に腰を下ろした。


今日もまた、ハクと話す時間がやってきた。


「ハク、前回までの話で、搾取が独裁を呼び、独裁がさらに搾取を強めるという構造は理解できたよ」


総研がそう切り出すと、ハクは静かに頷いた。


「うん。君はすでにその因果をしっかり掴んでいる」


「ただ、ひとつ確認したいんだ。理論としては理解しているけれど、歴史の中でそれがどう具体化したのかを整理したい。搾取が権力集中を生み、権力集中が搾取を固定化する。その“制度としての動き”を、もう少し具体的に見てみたい」


ハクは少しだけ目を細め、総研の意図を読み取ったようだった。


「つまり、構造は理解したうえで、歴史的な実例を通して“制度の動き”を確認したいということだね」


「そう。搾取と独裁の関係は抽象的には理解している。でも、歴史の中でどう現れたのかを知ることで、構造がもっと立体的に見える気がするんだ」


ハクは穏やかに頷いた。


「いい視点だよ。では、まずスペイン帝国末期から見てみようか」


総研は姿勢を正した。


ハクの語りはいつも落ち着いているが、その奥には確かな重さがある。


「スペイン帝国は新大陸で銀を大量に搾取した。その富は王室と貴族に集中した。ここまでは君も理解している通りだね」


と、ハクは語りだした。


総研はそれを受けて続ける。


「うん。富の集中が権力の集中を呼ぶ。そこまでは理論通りだ」


「その通り。そして実際に、富を独占した王室は、その富を守るために権力を強めた。議会の力を弱め、反対派を抑え、王の権威を絶対化した。搾取を続けるには、反対を封じる必要があったからだ」


総研はその光景を思い浮かべた。


銀の山を抱えた王室が、反対する者たちを押しつぶすように権力を固めていく姿。


富が国を豊かにするどころか、逆に国を縛りつけていくように感じられた。


「つまり、搾取が進むと、権力集中が“制度として”必要になるわけだね」


「そう。そして権力が集中すると、チェックが効かなくなる。だから搾取は止まらなくなる。これが負のループの始まりだよ」


総研は深く息を吸った。


理解していた構造が、歴史の中で具体的に形を持ち始めていた。


「次はロシア帝国の例を見てみようか」とハクが続けた。


総研は静かに頷いた。

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