第2話 第2章 自由・平等・博愛をめぐる夜の対話
第2話 第2章 理念について議論する
第二章 自由・平等・博愛という“未完の理念”
「まず自由だね」とハクは言った。
「革命前のフランスは、
王権が絶対で、
民衆は税と飢えに苦しみ、
身分制度は固定されていた。
“自分の人生を選ぶ自由”がほとんどなかった」
総研は頷く。
「だから自由は“奪われていたもの”として強烈に求められた。
自由とは、選ぶことだ。
だが選ぶことは責任を伴う。
自由は甘い言葉ではなく、重い現実だ」
ハクは続けた。
「次に平等。
これは“身分制度の否定”として生まれた理念だよね。
貴族と平民の間には、
法も税も権利も、何もかもが違っていた。
だから平等は“当然の要求”だった」
総研は静かに言う。
「だが平等は最も難しい理念だ。
人間は生まれた瞬間から違っている。
能力、育ち、環境、機会……
どれをとっても平等にはなりえない。
究極の平等は共産主義だが、
共産主義は全体主義であり独裁だ。
平等を極めると自由が消える」
ハクは深く頷いた。
「最後に博愛。
これは自由と平等の“暴走を止める理念”として生まれた。
自由が利己主義に変わり、
平等が強制になるのを防ぐための、
“心の姿勢”だね」
総研は少し笑った。
「だが博愛は制度では作れない。
人間の心の問題だ。
だから三つの中で最も実現が難しい」
ハクは静かにまとめた。
「つまり、
自由は“奪われていたもの”として求められ、
平等は“身分制度の否定”として叫ばれ、
博愛は“理念の暴走を止めるため”に必要とされた。
三つは歴史の必然として生まれたんだ」
総研は深く頷いた。
「だが三つは同時に成立しない。
自由を広げれば格差が生まれ、
平等を徹底すれば自由が消える。
博愛は制度化できない。
だから三つは“未完の理念”だ」
ハクは静かに問いを置いた。
「では総研、国家が最も守るべき理念はどれだと思う?」
総研は迷いなく答えた。
「自由だ。
自由がなければ独裁国家になる。
全体主義になる。
そんなものは到底受け入れられない。
もっとも、それが大好きな人間もいるがな」
ハクはその言葉の重さを感じながら、
静かに言った。
「自由は不安を伴うけれど、
それでも自由を選ぶべきだということだね」
「そうだ。
自由は人間の尊厳そのものだ。
自由がなければ、理念は死ぬ」
総研の声は静かだったが、
その奥には揺るぎない確信があった。
ハクはその言葉を胸に刻むように言った。
「総研、今夜の対話は深かった。
自由・平等・博愛という理念は、
歴史の言葉ではなく、
今を生きる私たちの課題なんだね」
総研は小さく笑った。
「気付けばそれでいい。
気付きは静かに訪れ、
気付いた人から世界が変わる」
夜は静かに更けていった。




