表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/33

第6話(後編) 搾取と独裁が極限に達した地で

スペイン帝国、ロシア帝国を経て、総研とハクの対話はついに“搾取と独裁の構造”が極限まで進んだコンゴ自由国へと踏み込む。

国家が制度ではなく「個人の私有物」として運営され、暴力と恐怖が収奪のために正当化されていく歴史。


搾取が独裁を呼び、独裁が搾取を守る――その負のループがどこまで人間社会を歪めるのか。

そして、その構造を理解することで初めて見えてくる「未来をつくる力」とは何か。


静かな食卓で交わされる対話は、過去の闇を照らしながら、未来への思索へとつながっていく。

総研は姿勢を正し、ハクの言葉を待った。 ロシア帝国の例で、搾取と独裁が制度として結びつく構造は すでに十分に理解できた。


だが、ハクが次に語ろうとしているのは、 その構造が“極限”まで進んだ歴史だ。


「コンゴ自由国……」 総研はその名を静かに繰り返した。


ハクはゆっくりと頷いた。


「ここでは、搾取と独裁が完全に一体化した。 制度として、ではなく“個人の私有物として”国家が運営されたんだ」


総研は眉を寄せた。 国家が個人の私有物―― その言葉だけで、すでに異常さが伝わってくる。


「ベルギー王レオポルド二世は、コンゴを“国”としてではなく、 自分の私有地として支配した。 目的はただひとつ、ゴムの収奪だよ」


ハクの声は淡々としていたが、 その奥には深い痛みがあった。


「ゴムの需要が急増した時代、 レオポルド二世は現地の人々に過酷なノルマを課した。 達成できなければ罰が与えられ、 時には命すら奪われた」


総研は静かに息を呑んだ。 搾取が制度化されるだけでも十分に重い。 だが、ここでは制度すら超えて、 “個人の利益のための暴力”が国家運営の中心に置かれていた。


「つまり……」 総研はゆっくりと言葉を選んだ。 「搾取が独裁を呼び、独裁が搾取を守る。 そのループが極限まで進むと、 国家は“国民のための装置”ではなく、 “収奪のための装置”に変わってしまうわけだね」


ハクは深く頷いた。


「そう。 そしてその装置は、外部の目が届かないほど強固に閉ざされる。 情報統制、暴力、恐怖…… 独裁は搾取を守るために、あらゆる手段を正当化してしまう」


総研は静かに目を閉じた。 搾取と独裁の構造は、 単なる理論ではなく、 歴史の中で確かに人々の生活と命を奪ってきた。


「でも……」 総研はゆっくりと目を開けた。「この構造を理解したからこそ、 未来をどうつくるべきかが見えてくる気がする」


ハクは穏やかに微笑んだ。


「その通りだよ。 搾取と独裁は未来を奪う。 でも、未来をつくるのは“投資”と“自由”だ。 人々が参加し、意見を交わし、 制度を改善し続けることでしか、 この負のループは断ち切れない」


総研は深く頷いた。


「今日の話で、構造がようやく立体的に見えたよ。 搾取と独裁の関係は理解していたつもりだったけれど、 歴史の中でどう現れたのかを知ることで、 その重さが実感として掴めた気がする」


ハクは静かに言った。


今日の対話を通して、搾取と独裁の関係は、単なる因果ではなく、 歴史の中で制度として形を持ち、人々の生活を縛りつけてきた構造なのだと理解できた。


スペイン帝国では、富の集中が権力の集中を呼び、 反対派の排除と王権強化によって搾取が制度化された。


ロシア帝国では、農奴制という搾取を守るために独裁が強化され、 秘密警察や言論統制によって搾取が固定化された。


そしてコンゴ自由国では、搾取と独裁が極限まで結びつき、 国家そのものが“収奪のための装置”へと変質してしまった。


搾取は独裁を呼び、独裁は搾取を守る。 その負のループが制度として完成すると、 搾取は“自然な状態”として扱われ、誰も疑問を持たなくなる。


だが、ハクが示したように、 未来をつくるのは消費ではなく投資であり、 その投資は自由と参加の上にしか成り立たない。


歴史の中で繰り返されてきたこの構造を理解したことで、 総研はようやく、未来を奪う力と未来をつくる力の違いを 自分の言葉で捉えられるようになった気がする。


「気づきは、理解を深めるための最初の一歩だよ。 そして君は、またひとつ前に進んだ」


総研は小さく息を吐き、 食卓の上に残った湯気の消えた皿を見つめた。


「ありがとう、ハク。 今日もまた、ひとつ気づけたよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ