4話
どれだけ降っただろか、その距離が曖昧になる程石段を歩いた頃今度は石室に着いた。広さは通っている学校の教室程、天井も似たようなものか少し高いくらいだ。しかし何かあるわけもなく青白い火が壁から室内を照らし、また狭くなった通路が奥に続いている。
罠でもあるんじゃないかと慎重に部屋を抜け通路を進む。これまた通路は長く、何処までも続いてるのではないかと思わせる。しかしここで幸人は別の疑問を浮かべた。
「なんでモンスターが居ないんだ。正直モンスターでも居ればすぐ引き返すつもりだったのに。それに迷宮って割りに一本道ばかりなのは一体。」
そう、幸人がこの迷宮に入ってから生物すら見かけていない。そして一本道。本来迷宮と言うほどなのでモンスターは多数存在し、道も複雑に入り組んでいるはずなのだ。しかもここが言われていたレベル七の迷宮だとしたら、その規模は広大で入口から手厚い歓迎を受けていてもおかしくなかった。その為ここは生成されたばかりの低レベル迷宮だったのかもしれない。
そんなことを思っていると通路の先に広がった空間が見えてきた。
「これは本当に何も無いかもしれないな。まぁ、危なく無くて良いんだけど。」
安堵しつつ広い空間に出る。半円のドーム状の空間、天井は高く地面に円を模した模様が刻まれている。
その中央、円の中心と思われる場所に何かが落ちていた。恐る恐る、罠を疑いつつ近づくとそれがなんなのか分かる。
「これは、刀?でも鞘が短い、脇差か。」
そこにあったのは美しい装飾の施された白い刀。鞘におさっまったその刀は、よく見るガードの物の半分ほどの長さしか無い。
「これって一応戦利品ってことで良いのか?」
その刀を拾い上げる幸人。たいして鍛えていない幸人でも悠々と持ち上げられた。迷宮で見つけたものは基本見つけたものが持ち帰っていい。ただしこれはガードのルールで、一般人の幸人はその対象なのかは分からなかった。当然一般人が迷宮攻略なんてしたこと無いのだから。
「まぁ戻って考えるか。」
そう言って立ち上がる幸人。すると目の前にさっきまで居なかったはずの人影が立っていた。
「うわっ!」
突然現れたそれに後退る、が一歩引いたところで動けなくなる。人影の圧力か何かしらの力か、単純に震えて動けないのか。額から、手から、至る所から汗が吹き出し動悸が早まる。しかしここで死ぬわけにいかない。拳を握り歯を食いしばる。動きを見逃さないように人影を注視し目を凝らす。
「………………」
人影は何も発さない。よく観察するとその特徴を認識できた。最初黒いモヤに思えたのはボロボロの布で、白い手足は細く顔は布がフードの様になって分からないが首筋や口元、白い髪が柔らかくてなびきそれが女性だと分かった。
「………………」
幸人もまた一言も発さない。ほんの一瞬が長く感じる。打開の策が何かないか眼球だけが動き、影の手に光るものが見える。脇差、咄嗟に自身の手を見ると鞘だけを握っていた。
「見つけた。」
その声に視線を戻すと、ガラス細工の様な美しい黄色の光。それが彼女の瞳だと分かるや否や腹部の痛みに視線が落ちる。脇差がいくら短いとわいえ、鍔が当たる程に沈んでいた。先程の汗ばみ熱を持っていた身体は立ち待ち寒気が支配した。
「え。」
ここでようやく幸人も言葉が出た。次の瞬間には膝から崩れ落ち、倒れ込んでいた。体が動かない、指の一本さえ動かせず声も息ばかりで言葉にならない。唯一できたのは影の彼女に目をやること。言葉はもう聞こえないが口の動きに目がいく。
「のりこえて、きたいしてる」
まぶたが重く頭が回らない。そして幸人は意識を失った。




