33話
迷宮の中、3人は二層に到達していた。というのも多くのガードが一層で戦闘をしているため、ほとんどモンスターは居らず2層に降りてきていた。
「ここもモンスターはホブゴブリンなんだよな。」
「2層はそうっすね。ここは全4層らしいっすけど、2層以降は全てホブらしいですよ。」
階段を降りた直後の広場で辺りを見渡すと何組かがホブゴブリンと戦っている姿が目に入るよう。流石にここでは戦いづらいと考え、更に奥へと進んでいく。流石にこのレベルになると誤射も飛んでこないため安心して進んでいく。
少しして人気の少なく広い場所に出た。早速戦闘の姿勢に入りいつも通り瀬戸が拳を突きつけ敵を惹きつける。
「とりあえずは雰囲気で戦って、あとで連携の擦り合わせをしましょっか。」
瀬戸のスキルによりホブゴブリンが2体引き寄せられる。それぞれを男勢がそれぞれを引き受ける。瀬戸は振り下ろされた棍棒を、今回は受け流さず受け止める。その瞬間盾の光と共にホブゴブリンが吹き飛ばされる。
『カウンター』
瀬戸が覚えたスキルでダメージを反射する。夢想でスキルレベルが上がったこともあってか高威力で吹き飛ばされたモンスターは壁に磔になる。更にそこに連続で拳を繰り出し、耐えかねたホブゴブリンは血しぶきのなか息絶えた。
一方幸人はいつも通り付与を施すが、その内容は二つのみだった。
『ストレングス』
『シャープネス』
瀬戸の時と同じで振り下ろされる棍棒だが瞬きひとつなく紙一重でさけ斬撃を入れる。すかさず2回3回と振り回される棍棒を悠々とさけ、その都度反撃を加え気がつけばホブゴブリンは絶命していた。幸人のゆさまじい動体視力もまた、新たに得たスキル『魔眼』の力だった。
「終わったな。」
「いや〜これも修行の成果ですかね。」
あっという間に終わってしまった戦闘に高屋が呆然とする。援護するつもりだったのにその間もなかった。
「2人とも強いんですね。それも前見た時より格段に。」
入院してたのにどうやってそんなに強くなったのかと疑問に思われる。仲間とはいえまだ1日目の仲、夢想のことを話すわけにもいかず2人して言葉を濁す。
「ま、まぁそんなこともあるさ。」
「そうっすよ。」
明らかに不審な2人に特にそれ以上聞こうとはしない高屋。2人のことをよほど信頼しているのか彼女は怪しいと分かっていながら踏み入ろうとはしなかった。
「それより魔石を取りましょう。これが1番面倒なんだよな。」
ぼやきながらナイフを取り出しホブゴブリンを解体しようとする幸人。そこに高屋が割って入った何をしようとしているのか胸の近くに手をかざし何かのスキルを発動する。
『アポート』
次の瞬間彼女の手には卵ほどの大きさの魔石が握られていた。すぐにそれがホブゴブリンから抜き出されたものだと分かった。
「すごい!こんな簡単に魔石を取れるなんて。でもこれってすごく強力なんじゃ。」
あれだけ苦労していた魔石取りがいとも簡単に行われ幸人も瀬戸も大いに驚いた。しかし同時にこのスキルは悪用が出来る危険なスキルに感じた。もし生きているモンスターからも魔石を抜けるなら、それは必殺と言っていいものだ。そうでなくても物を取るスキルならガードの間で問題になるかもしれない。そんな幸人考えを読んでか高屋はそのスキルについて話し出した。
「でもこのスキルは射程が短いし、今みたいに体内から取るのは生命活動がない状態じゃないと出来ないの。」
彼女が言うには有効距離は1メートル以下、しかも無生物限定らしい。魔石はモンスターが生きている時は内臓の一部という判定らしく、それを取ることはできないらしい。しかも明確に位置が分かっていないと失敗の可能性もあるとのこと。
なるほどと理解した幸人たちは、それでも魔石の取り出す手間を考えると十分ありがたい話だった。
「いいスキルだな、ありがとう高屋さん。」
感謝の言葉を幸人がかけると彼女は目を逸らし照れたように目を細めた。
「お役に立てて良かったです。」
赤面して小さな声になる高屋。照れている姿も可愛らしく場が和む。瀬戸にいたっては可愛いと口に出すほどだった。
「しかしこれなら、今まで以上に多く狩れるかもしれないな。慎也、余裕があるなら複数相手しようと思うけど行けそうか?」
「もちろん行けますよ!あのスパルタ修行に比べたら余裕もいいところっすよ。」
一気にやる気になる2人は高屋にも確認する。すると彼女はすぐさま頷き出来ると返す。早速戦闘に入ろうとするが近くには敵が見当たらないため瀬戸が『ウェイブヘイト』を発動し周囲のモンスターを引き寄せようとする。しかしそれでもモンスターがやってこない。
「おかしいですね。『ウェイブヘイト』に反応がないなんて。この迷宮は広いからホブゴブリンが全滅したとは考え難いんですけど。」
瀬戸が首を傾げて考えていると高屋が横穴の方に視線を向ける。何かを感じ取ったのか急に振り向き、そして怯えたように震え出した。
「何か来る、嫌な気配の、人間?」
暗がりから足音が聞こえ、次第に人影が見えてくる。迷宮にも関わらずサンダルの足元が見えてきて、次第に半ズボン半袖と姿が見えてくる。顔が見えるようになると、その顔はフードに赤い模様の入った白いベールで隠れていた。




