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32話


「22区のオーバーフローの時、あそこに居たのか。」

 

 先程までの曇り模様が嘘のように晴れた街中を話しながら歩く3人。ファミレスで騒いでしまったことで居づらくなり、迷宮に向かう道すがら経緯を教えてもらうこととなった。高屋が2人を知ったのは一月前のオーバーフローでの事だった。

 

 あの時彼女もまた別のパーティと一緒にあの場に居たらしい。そしてオーバーフローに巻き込まれた仲間を回復していた時、意図せず救われていたとのこと。というのもイーベンティの攻撃を瀬戸から離した時、その直線上に彼女達はいた。そのため幸人があの時攻撃の方向を変えていなかったら高屋は死んでいたかもしれなかった。その後彼女のパーティはリーダーが引退することになり解散した。その後ちょうどあの日見た特徴と一致する2人がメンバー募集をしていたので応募したとのことだった。

 

「偶然でも私は助けてもらったので、お二人の力になれるならなりたい。」

 

「好きってのはファン的な意味だったのか。あぁびっくりした。」

 

 彼女の話に胸を押さえて、言葉とは裏腹に少しガッカリした様子を見せる瀬戸。備考欄にびっしり書かれていた理由も分かったところでもう一つの質問をする。

 

「それでそんなにめかし込んで来てたのか。そのメイクは時間がかかるだろう。」

 

「兄さん今時めかしこむなんて言いませんよ。あと女性にお化粧のこと言うのはデリカシーがないっすよ。」

 

 質問の内容に待ったをかけつつ2人は高屋に視線を向ける。長いまつ毛に陰影のついたアイシャドウ、とにかく整った顔立ちに着ている服もあってか周囲の男性陣の視線を集める。その視線に彼女も気づいてから窓ガラスに映った自分を見る。

 

「私ほとんど化粧してないんです。目元はいつもよりはしてますけど、それは寝不足でクマができてたからで。」

 

 その話にへぇと感心する2人。そもそもの素材が良いのかと話していると高屋は何かに怯えたように幸人の腕に抱きついた。

 

「えっ、なに?どうかした。」

 

 不意に美少女に抱きつかれ驚く。瀬戸がいいなぁと茶化してくるが、そんなことは置いておいて高屋の視線の先を見ると少し先の人混みに中年と思われる男性が目に留まる。まるで舐め回すかのように彼女のことを見るその視線に幸人もつい顔をしかめる。

 

「もしかして知り合いだったりする?嫌なら俺らが直接言いに行くけど。」

 

「いえ、知らない人です。でも視線が嫌だったので。」

 

 口数が少なく感情が読みにくいと思っていた彼女が心底嫌そうな顔を見せる。これだけの容姿となれば色々な注目を受け大変だろうと思う。不意に自分の妹にも同じなのではと思い、1人で勝手に憤慨しながら迷宮に向かった。

 

 

 

「久しぶりの迷宮だし軽く慣らしていくか。」

 

「そうっすね。修行は散々しましたけど実際身体を動かすのは久しぶりですもんね。」

 

 深呼吸をするように両手を大きく広げる2人。かくして3人はレベル2迷宮の一層に来ていた。今回は比較的都心に近いところを予約できたため、他のガードも多かったが一つの階層の広さがそこそこ広いためか前回の迷宮ほど手狭な印象は受けなかったよ

 早速戦闘しようと各々が武器を構える。瀬戸は光る盾を両手に展開し幸人はツユクサをアイテムボックスから取り出した。高屋は武器らしいものを持ち歩いていなかったためどうするのかと思っていると空中に手をかざした。

 

『心象武装・霞凪(かすみなぎ)

 

 その言葉で高屋の手には短いワンドが握られる。白い柄に白いクリスタルが嵌め込まれ、丸い鎖が垂れ下がった変わった形状をしていた。だがそれ以上にそれが心象武装ということに驚く。

 

「もう心象武装を出して良かったのか。必殺技みたいなものなんじゃ。」

 

 幸人は自身の心象武装と比べてこんな最序盤に出していいのかと質問する。それに対し高屋は小さく頷く。

 

「大丈夫、私のは効果は弱いけど常時発動型だから。」

 

 そういうと彼女は自分の心象武装について説明してくれる。その能力は高屋自身の身体強度が落ちる代わりに使う魔法の効果を上昇させることができるとのこと。更に24時間に1回限定ではあるが特殊能力もあるとのことだった。サポーターなら身体強度はさほど必要としないため魔法強化の強力な武装だ。


 彼女の教えてくれたその能力に幸人は羨ましがる。自分の心象武装も常時発動型なら良かったのにともらした。

 

「そういえば兄さんも心象武装使えるんですよね?なんで修行中は使わなかったんですか。」

 

「使わなかったんじゃなくて、使えなかったんだよ。条件が面倒でさ。」

 

 高屋が心象武装の能力を開示した事で幸人も自身の心象武装の能力を開示する。その能力は消費した魔力量に応じて火力が上昇するというもの。しかしそれだけ聞けば強力な能力なのだがデメリットも当然ある。それは発動中常に魔力を消耗し続け、ゼロになった場合は自動で解除されてしまう事だ。つまり燃費が悪く、魔力がなくなったあと戦い続けることはできないという事だ。

 

「それでですか。確かにあの空間は魔力を消費しますから下手に使えば維持時間が減っちゃうわけですか。」

 

 理解した瀬戸にそういうことと答える。高屋は2人がいう空間がなんなのかわからず疑問符を浮かべていた。

 

「さぁ、とりあえずお話しはここまでにして実際に戦って互いの連携を確認するか。」

 

 話し込んでいた3人はまた気を引き締めて体勢を立て直す。そしてモンスターを探して奥に進んで行った。

 

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