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31話


 ようやく退院した次の日、2人は淀んだ曇天の下都会の喧騒のなかにいた。平日の朝ということもあってか行き交う人の数は多く、足取りも遅くなっていた。

  

「これから人と会うって日に限って遅れるなんてどうなんだろ。」

 

「ほんとっすよね。しかしどんな人なんでしょうね、俺らの構成見たうえで組んでくれる人って。」

 

 申し訳なさそうな表情で歩く幸人と、ウキウキで対照的な笑顔の瀬戸が目的地に向かう。というのも今日は新しいメンバーが加わる予定だった。

 

 病院の入院中、瀬戸が協会のサイトでサポーターの人員を探していた。しかし等級が高くない上に1人が固有式無しである事からか、瀬戸の悪い噂からか募集に乗ってくれる人はいなかった。

 

「やっぱり難しいですかね。こうなったら低レベルの迷宮で呼びかけるしか。」

 

 瀬戸が操作する薄型のタブレットを横から覗きながらため息をつく幸人。瀬戸もそうするしかないですねと頬杖を付いているとピピっと通知音が鳴った。

 

「あれっ、応募来ましたよ!ロールはサポーターの女性ですって。」

 

「よく来ましたね。でも、あんまり情報載せてないけどイタズラじゃないよな。」

 

 送られた応募内容は名前と性別とロール、そして備考欄にびっしりと意気込みが書き込まれていた。情報は少ないが意気込みの強さから実際に迷宮に入ってみる運びとなった。そして今日がその顔合わせの日だった。

 

「確か黒い服に黒マスクて言ってたんですよね。でも正直そんな人いくらでも居ません?」

 

「あと髪色が白黒らしいですよ。」

 

 本当に見つかるのかと辺りを見渡しながら探していると、瀬戸が追加の情報を出してくる。しかしそれでもそれらしい人は見当たらない。

 

 しばらく歩いて待ち合わせの店舗に近づくと壁にもたれかかった1人の少女が目に留まる。ドレスのような黒い服に黒いマスク、右半分が黒く左半分が白いツインテールのその少女が探していた人物だろうと感じた。しかし携帯を見ながら俯く彼女はガードとは思えなほどめかし込んでいた。

 

「ああゆうのって地雷系って言うんでしたっけ。初めて見ましたよ俺。」

 

 周りは迷宮に向かうガードばかりでしっかりした装備のなか、とてもそういった雰囲気ではない彼女になかなか声をかけれずにいた幸人。しかし瀬戸がお構いなしに彼女に近づく。

 

「やあ姉ちゃん可愛いね。ちょっとお兄さん達と話さない。」

 

 完全にナンパのような口調で話しかける瀬戸に冷や汗が出る。周りもナンパ男と地雷系少女の組み合わせに見えたのかどよめきだす。マスクのせいで感情が読めないが少女も少女で、驚いた様子もなく瀬戸をマジマジと見つめだし一言つぶやく。

 

「いいよ。どこで話す?」

 

 あっさりとした返しにまたしても周りがどよめきだす。その答えに不気味に微笑む瀬戸がそれじゃあと続けるので幸人静止しようと彼の頭を殴りつけた。

 

「言い回しがいちいち胡散臭い!」

 

「いで!何するんですか兄さん、今から仲間として顔合わせの挨拶しようとしてたのに。」

 

 2人のやり取りで怪しい話ではなくガードのやり取りだったのかと人だかりは散っていった。大事にならなくて済んだとため息をもらす幸人に終始静かだった少女が視線を向ける。大きな桃色の瞳は口元が見えないからか少し不気味に見えたが整った顔立ちのためかそういった感情はすぐに消えた。

 

「とりあえずファミレスにでも入りますか。」

 

 ずっと見つめられて気まずくなったのか、落ち着いて話せる場所に移ろうと提案すると少女はそのまま頷き3人は場所を移した。

 

 

 

「いらっしゃいませ!3名様ですね、空いてる席へどうぞ。」

 

 歩いてすぐのファミレスに入った3人は席につき、各々がドリンクバーの飲み物を用意した。幸人は暖かいブラックコーヒーで瀬戸は炭酸飲料、少女はオレンジジュースをそれぞれテーブルに置いた。

 

「それじゃ軽く自己紹介を。俺は雪見幸人、3級でアタッカーをやらせてもらってる。それでこっちは…」

 

「俺は瀬戸慎也。等級は2級でロールはタンクっすお嬢さん。」

 

 瀬戸の口調に引っ掛かりはするものため息で一蹴するとコーヒーに口をつける。少女も一言も発さずマスクをずらしストローでジュースを飲む。口元の二つ並んだホクロが可愛げな上、妖艶に見える。そしてマスクを戻すとようやく口を開いた。

 

「私は高屋(たかや)さや、3級のサポーターです。回復魔法とデバフ付与が得意です。」

 

 擦り切れそうな小さな声で彼女が自己紹介をする。回復能力が有るだけでも十分なのにデバフ付与まで出来ると聞き期待だ膨らむ。瀬戸もおおと好感を抱いている様子。十分すぎるサポーターに喜ぶが、そうなるとどうしても自分たちの募集に応募してきたのかという疑問が浮かぶ。

 

「えっと要項に記載しましたけど、慎也はともかく俺は固有式がありません。それでも宜しいのでしょうか?」

 

 どう見ても年下だかつい敬語になりつつも確認をとる。すると高屋は小さく頷いた。そこで瀬戸がさらに突っ込んだ質問をする。

 

「でも3級とはいえ回復魔法が使えるガードは貴重だ。もっと好条件のパーティも有っただろうに、どうしても俺らと組もうと思ったの?」

 

 随分踏み込んだ質問に少女は視線を逸らしつつ俯く。言い過ぎだと言う幸人に対し瀬戸は真剣だった。幸人も思わなかった訳ではない、何か裏があるんじゃないかと。

 

 2人の視線が高屋に向くなか目を逸らしながら口を開いた。

 

「実はお二人のことが好きで、パーティ応募、しま、した。」

 

 だんだんと掠れていく高屋の声。しかしそんな事には気にもせず、目を見開いて硬直する2人。次に出たのは店内に鳴り響く彼らの驚愕の声だった。


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