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28話


 ひとしきりの説明と経緯を話し終え、のんびりし始めていた幸人と瀬戸はツユクサの柏手(かしわで)で彼女に視線を向けた。

 

 「はいはい、お話はそこまでですよ。お二人にはもっと強くなってもらいたいので早速戦ってもらいますよ。」

 

 ツユクサの話が終わると水面から影が這い上がって現れる。その大きさからホブゴブリンと戦うのかと構えて戦闘体制に入る2人。出てくる影は一体だけのため2人で攻めれば勝てるだろうと目配せをしていると、その姿に驚愕した。

 

 「まさかコイツと戦うんっすか!」

 

 這い上がった黒い影。黒いのは影だからではなく黒い鎧だったからだ。

 

 「イーベンティかよ。」

 

 目の前に現れた自分達が大敗をきした相手を前に先程以上に緊張が走る。違いがあるとしたら右手には白く光る剣が握られ、戦った時以上の危機感を感じた。

 

 「とりあえず光線には気をつけて…」

 

 バリアでガードを固める瀬戸に鎧が突っ込んでくる。予想していなかった行動に焦りながら振るわれる剣を防ごうとするが、大きなヒビが入りながら吹き飛ばされる。

 

 「コイツ!」

 

 剣を振り切ったところで幸人は懐に入り魔力を纏った一撃を入れようとする。しかしそれに反応した鎧は剣を振った勢いのまま片足立になり蹴りを入れる。咄嗟のことにもギリギリで夜帷の影で防ごうとするが勢いのついた蹴りは止まらず、腕と肋はメキメキと鈍い音を立てて蹴り飛ばされる。


 着地後にすぐさま立ち上がろうとするが折れた肋骨がどこかに刺さったのか強烈な痛みに足が止まる。そして視線を鎧に向けたときには光線が放たれる直前で、その後すぐ焼ける痛みと共に意識を失った。

 

 


 気が付けば2人は仰向けに倒れ星空を見上げていた。幸人はまたかといったふうに立ち上がるが、瀬戸は死の衝撃に直ぐには起き上がれなかった。

 

 「死ぬってこんな感じなんですね。慣れないかもしれないっす。」

 

 「俺もいまだに慣れないよ。まぁ慣れるようなものでもないですけど。」

 

 ストレッチをして剣を構える姿を見て瀬戸は上体を起こし座り込む。するとそのに白髪のほのか、つまりツユクサが近づいて来た。

 

 「どうです主人様。良いリハビリになりましたか。」

 

 「何がリハビリだ。前に戦った時より強くしやがって。そんなことまで出来るようになったのかよ。」

 

 突然のスパルタに罵声も出る。何よりその明らかな上方修正はどういう事なのか問いただす。しかし彼女はそれに対して首を横に振った。

 

 「あれは別に何も変えてませんよ。言ったじゃないですか、私の見た『今』の強さを再現できるって。あれはあの黒い鎧の本来の戦闘能力です。」

 

 笑みではなく真面目に淡々と話すツユクサ。確かに鎧が舞鶴と戦おうとした時の動きは幸人を相手にした時より俊敏だったと思い出す。思い出せば、鎧は幸人たちを相手にする時片手しか使っていなかった事から本気で相手などしていなかったと気づいた。その瞬間、不甲斐なさも込み上げるが同時に、苛立ちも込み上げて来た。

 

 「ツユクサ、もう一回出してくれ。」

 

 大敗をきした上にそれが手を抜いた上での敗北となると、もし次遭遇すれば確実に死ぬだろう。そう考えた上で幸人は再戦を申し出た。大切なものを守るための一つ目の関門を乗り越えるために。


 意気込む彼に当てられてから座っていた瀬戸も立ち上がり構えた。

 

 「兄さんがやる気なら、俺だって負けてられませんね!俺だって強くなりたいんですから。」

 

 2人の意気込みに真剣な表情だったツユクサも微笑む。そしてまた水面から黒い鎧を生み出す。

 

 「そのいきです。時間はたっぷりありますから思う存分戦ってください!」

 

 言葉が終わると共に突っ込んでくる鎧。上段の構えから瀬戸に向けて剣が振り下ろされる。しかし今回は受けるのではなく、剣を張ったシールドで滑らせいなした。振り下ろされた剣は硬い地面に突き刺さり容易に抜けはしない。そこに足にシールドを張った状態で鎧の足に攻撃する。体制を崩しもう片足の膝をつくと、待っていたように幸人が畳み掛ける。

 

 『ストレングス』

 『シャープネス』

 『ブースト』

 

 付与を重ねがけし、躊躇なく首を狙う。しかし鎧はその態勢から腕を盾にし距離を取る。両断とまでは行かずとも深傷を負い、剣から手を離した鎧は怪我を感じさせないような速さで殴りかかる。

 

 「くっそ、素手でもこんなに強いのかよ。」

 

 凄まじい手数をいなして防ぐのがやっとな瀬戸は、それでも防ぎきれない数打を受け流血が増える。そんな防戦一方な様子に好奇とみたのか強力な一撃を入れる。腹部への抉るような一撃に足が浮き吹き出すように吐血する。だがその吐き出した血を鎧の顔めがけて吐き出した。視界を塞がれたのか血を拭おうと手を避ける。


 その瞬間、下顎から首まで一気に刃が引き裂いた。瀬戸の作った隙を幸人がキメにかかる。更にそこから鎧の隙間めがけて何十回と刀を突き刺す。何ヶ所も滅多刺しにされた鎧は身体中鮮血に濡れ、今にも倒れそうだった。

 

 「いまだ!」

 

 チャンスと思いトドメを刺そうと詰め寄る2人。幸人の刀が、瀬戸の拳が鎧を突き刺すその瞬間、ガッと2人の腕を掴み取った。鎧は既に虫の息だというのに握られた腕を振り解けない。すぐさま攻撃しようとしたとき、鎧の腹部が青白く光肥大化する。何をしようとしたかは一目瞭然だった。

 

 「やばい!にげ…」

 

 あたりが眩い光に包まれ次の瞬間大爆発を起こす。掴まれて逃げきれなかった2人がどうなったかは、想像に難くなかった。

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