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24話


 黒い鎧の腕が宙を舞い、鈍い音と共に地面に落ちる。

 

 「キサマ!」

 

 痛覚はあるようで、表情はわからないが言葉は揺らいで聞こえる。しかし大技の後刀の棟から上がっていた炎は消え、刀身も光の粒になって消えてしまった。一矢報いることはできたがもう魔力も尽き、身体は指一本動かせない。そんな幸人に黒い鎧は黒い光を集めだす。予想外の一撃に憤怒したのか、万が一もあり得ないように最初の光線よりも大きな光が収束される。


 流石にこれはどうしようもないと諦める。妹のほのかに向けて呟いた「ごめん」を最後にそっと目を閉じる。

 

 「おらぁー!」

 

 その直後何かが黒い鎧に勢いよくぶつかり鎧を吹き飛ばす。危機的状況の変化に薄らと目を開けるとスーツを着た巨漢が身の丈ほどのタワーシールドを片手で持って立っていた。スキンヘッドと対照的にもみあげまで蓄えられた顎鬚と、頬の大きな傷がベテランを思わせる。一流であろうそのガードに幸人は見覚えがあった。

 

 「おっ?だれかと思ったら喫茶店のバイトの子か。ガードになってたのはともかく酷い有様だが大丈夫か。」

 

 見た目の厳つさからは想像もできないくらいに愛想がいい男性。どこで見たのかと思い出すと前に助けてくれた舞鶴と一緒にいた黒服の1人だった。あの後何度かバイト中に見かけていたが、覚えられていたなんて思っていなかった。

 

 「俺はまだマシです。ただ仲間が…。」

 

 「安心しな。向こうで倒れてたあんちゃんならうちの若いのが手当してっから。」

 

 男性の言葉を聞いて瀬戸の方に視線を向けるとちょうど治癒魔法を受けているのが目に入る。よかったと安堵していると瓦礫をかき分けて鎧が這い出てきた。

 

 「流石にあれで死んだりしないか。それじゃ頼みますよお嬢。」

 

 今ので終わっていれば楽だったのにといった様子でため息を漏らす男性。そんな彼が言う「お嬢」とはきっと舞鶴の事なのだろうと首の動く範囲を見渡すがどこにも姿が見えない。

 

「ガードになってまだ日が浅いだろうにイーベンティの腕を落とすなんて将来有望ね。」

 

 先程まで姿が見えなかった筈なのに声が響く。そして声は地上ではなく上から聞こえていた。視線を上げるとそこには丈の短いマントをはためかせ、ホットパンツの黒い戦闘服姿の舞鶴が杖を片手に浮かんでいた。初めて会った時との印象の違いに戸惑うも、それはあの時も助けてくれたのと同じ姿だった。

 

 「オ前マサカ…」

 

 その姿を見て動揺しだす鎧。幸人との戦闘の間、一度もそういった素振りも無かったのに目の前の女性1人に恐れを抱いていた。まるで彼女が何者なのか事前に知っていたかのように。

 

 「やっぱり、こっちの情報をいくらか知っているのね。だけどまさかここに私『天姫(てんき)』が来るとは思ってなかったみたいね。」

 

 身体が動かないながらも彼女の発言に反応する幸人。まさか喫茶店の常連で、自分を助けてくれた人が『天姫』だったとわと驚愕する。

 ガードの通り名は数多存在する。特に自称ともなればそれこそ数え切れない。しかしその中でも最も有名なものが7つある。それが守座の通り名。そして『天姫』とはその中の一つで、雷電系統最強にして日本の序列3位に位置する守座を表すものだ。

 

 「まさか舞鶴さんがあの『天姫』だったとは。」

 

 「まぁ守座は通り名ばかりで実名は公表してない人が大半だからな。特に『死神』と『武器将(ぶきしょう)』の実名は仲間と守座しか知らないしな。」

 

 幸人の言葉に捕捉してくれる男性。軽い口調に対して構えた盾を下げる事なく敵を凝視して緊張を保っている。しかしそんな緊張を振り払うように舞鶴が空を踏んで歩き始める。

 

 「さぁ、おしゃべりはそこまで。怪我人も多いし、さっさと倒しちゃいましょ。」

 

 言葉が終わるや否やすぐさま殴りかかる黒い鎧。しかし舞鶴もまた瞬間、空間に杖を突き地面に打ちつけたようなコンっという音をたてた途端、雷鳴が鎧を直撃した。眩しさに目を細めるほどの雷撃に、苦痛に満ちた絶叫をあげる。あまりの劣勢に方向転換しようとするも痺れてかウマス身体が動いていない。

 

 「流石に一撃じゃやられないか。なら次はもう少し強くいこっか。」

 

 杖をコンコンと2回突くと先程より激しい閃光と共に青白い落雷が落ちる。黒い鎧は落雷による灰の黒に変わり、塵のように跡形もなく崩れ去った。

 

 「さぁ、こっちは終わり。向こうもそろそろ終わるだろうし、今度は人命救助かな。」

 

 幸人が苦戦した強敵を難なく倒してしまいミノタウロスが暴れていた方に視線を向ける。舞鶴の戦闘に魅入っていたため気づいていなかったが異様に静まり返っていた。その方向には黒いフードにロングコートの一団が立っていた。

 

 「やっぱり『架焔会(かえんかい)』は仕事が早いね。『炎燕(えんえん)』さんは来てるのかしら。」

 

 聞いたことのある通り名とギルドの名前が聞こえてくるが、すでに限界の幸人は口を開く前に瞼が下がる。気になることは多いが、それを質問する事なく意識を完全に失った。

 

 「お嬢、俺はとりあえず彼を医療班に連れて行きます。向こうの守座への挨拶はお願いしますよ。」

 

 「えぇ、お願いね。」

 

 幸人を優しく抱え上げ、人だかりのある方へと歩いていく男性。オーバーフローを終息させた舞鶴は終わった終わったと伸びをしていた。

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