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20話


 遊歩道を歩いていると次第に人が多くなっていき、山中のひらけた場所に出た。山肌に昔の炭鉱の坑道のような横穴が見えてくる。そこが迷宮の入り口だったようで昨日と同じく改札のようなゲートを通り階段を下った。

 

 1層は昨日より明るくなっていた。大気中の魔力量が多いのか綺光結晶の発光が強まっているようだった。

 

「確か色々調べてきたって言ってましたよね。この迷宮のモンスターは何なんですか?」

 

「1層は昨日の迷宮でも出たゴブリンですね。でも昨日のよりも強くなってるんで油断せずいきましょう!」

 

 瀬戸が盾を両手に展開したのに続き幸人も刀を構える。更には昨日は使わなかった夜帷の影を手に纏わせ防御も固めた。

 

 準備が整うと拳を突き合わせ挑発を行う。すると通路から数体のゴブリンが姿を現した。外見の変化は少し大きく感じる程度だったがその手には剣や槍、弓などが握られている。そして弓を持ったゴブリンは2人が視界に入った瞬間、即座に矢を放った。流石にこの行動は読んでいた瀬戸が前に出て、盾をいつもより大きく拡張させ弾く。

 

『ブースト』

『ストレングス』

『シャープネス』

 

 再装填のタイミングで付与をかけた幸人が前列のゴブリンをすり抜け、弓持ちに切り込む。慌てて陣形を崩したところから1匹2匹と順番に斬りかかり、全ての弓持ちにを切り伏せる。剣や槍を持ったゴブリンが一斉に幸人に標的を変え、畳み掛ける様に攻撃を仕掛ける。

 

 「まだ付き合ってもらうっスよ。」

 

 拳を突きつけ再度ゴブリンを挑発する。先ほどまで幸人に向かっていたモンスターたちは一斉に瀬戸に敵意を向ける。反転したゴブリン達だったがその瞬間、背後から幸人に斬りかかられ鮮血を上げながら地面に転がる。しかし最後の一体は劣勢に気づいてか恐怖してか、大声を上げながら逃げてしまった。

 

 「逃すか!」

 

 刀に魔力を纏わせ斬撃をゴブリンを向かって放つ。背後から確実に当たった斬撃だったが、斬りはしても両断には至らずしばらく地を張っていた。止めを刺す様に背後から喉目掛けて刀を振り下ろし、確実に息の根を止める。


 明らかに昨日ほどの威力は見られない。付与が切れた訳でもなく、威力が下がったわけでもない。単純にモンスターの高度が上がっているようだった。

 

 


 魔石を抜き取り死体を片付け終わると幸人はため息をついた。

 

 「はぁ、まさかこんなに急に通用しなくなるなんて。」

 

 「まぁこうして倒せたんですから良かったじゃないっすか。」

 

 昨日より濃い緑色をした魔石をポーチとアイテムボックスに収納しながらそんなことを話す2人。しかし危なげなく戦えてかつ、十分な収益が見込める現状に満足している様だった。

 

 「この濃さなら一個あたり昨日の倍以上になりますし、徐々にレベルアップしてけば良じゃないっスか。」

 

 「それもそうですけど、出来ればもう一つくらい武器が欲しいですね。」

 

 「なんですと!私というものがありながら浮気ですか主人様!私の刀身(からだ)のどこが不満なんですか!」

 

 幸人の発言に過剰に反応するツユクサ。変な言い方をするなと言いながらなだめる。


 幸人も別にツユクサが弱いと言っている訳ではない。実際ツユクサの切れ味やその威力は初心者のガードからは考えられないほどのものだ。しかし幸人のステータスでは十分にその威力を活かせないうえ、脇差のため刀身の短さが扱いづらくなっていた。

 

 「攻撃は影で受ければ良いし、左手にもう一本武器を持った方が効率が良い気がするんだよな。」

 

 「かといって兄さんの武器と同等はなかなか無いですし、あっても数千万円とかしますよきっと。」

 

 あまりにも現実的じゃない額にすぐさま諦めるしかないかともらす。そんな話をしているうちに次のゴブリンたちが2人に近づき戦闘に入り、それを数回繰り返した。

 

 

 

 戦闘がひと段落ついた頃幸人のレベルが上がる。1レベル上がるまでかなりかかった昨日と比べやはり経験値が入りやすいと感じる。しかし続いた戦闘の中で数カ所のかすり傷を負った2人は配布のポーションを取り出し服用した。

 

 「うえぇ、やっぱり最下級ポーションは不味いっすね。ランクが高いとマシらしいですけど高いっすからね。」

 

 「こまめに飲んどかないと、即効性もないから戦闘中は飲めませんしね。」

 

 渋い顔をしながらポーションを飲む2人。最下級ポーションはガードの回復力を一時的に強化するもので、直接傷を癒すわけじゃないので戦闘中に飲むのに向いていなかった。そんな隙を見せようものならそれ以上の大怪我に繋がりかねないからだ。

 

 レベルアップで体力や魔力も回復しない。その点もゲームの様なら良かったのにと思わざるを得なかった。

 

 「やっぱり、サポーターのロールも欲しいですよね。いくら効率が落ちるとはいえ、安全には変えられませんし。」

 

 瀬戸の提案に確かにと返す。しかし自分達を見て考える。方や雰囲気がチャラい高身長男性、方や高校を卒業したばかりの固有式無しの青年。ここに加わってくれるメンバーを探すのは困難なのではと思う2人。

 

 「さて、どうやって探したものか。」

 

 「いっそヤバそうなサポーターを加えて異色パーティ結成しますか。」

 

 突拍子のないそんな会話に大笑いするが次第に声は小さくなりため息に変わる。安全のためのメンバー探しだったのに危険が増えては本末転倒だと気付く。この話は後日考えようと2人は狩りを再開した。

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