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2話

 放課後、早々に下校準備をして席を立つ。まだ席で雑談をする一樹の後ろを通り教室から出ようとする。


 「それじゃあ俺はバイトだから先に行くな。」


 「おう、でも本当に気をつけろよ。」


 一樹の忠告にあぁと軽く返し駆け足で教室を後にする。





 幸人の住む七区域の隣、十二区域へは電車でおよそ二十分以内につける位置にあるり、そこからしばらく歩いた先に幸人のバイト先である喫茶店がある。


 「こんばんは。」


 「おや幸人くん、こんにちは。そういえば今日もシフト入っていたね。大丈夫かい、学生だと色々と大変じゃないかい。」

 

 温かみのある声。齢七十の老人がカウンターに立ってコーヒーミルを回していた。背丈は高いが歳のせいか手足の細いマスターの姿がそこにはあった。

 

 「いえ、うちは生活が苦しいですからむしろ助かってます。」


 「そうかい?なら今日もよろしくね。」

 

 いつ見てもにこやかなマスター。学生である幸人が働き口を探していたときに手を差し伸べてくれたその優しさに幸人はいつも感謝している。そんなことを思いつつバックヤードへと入り喫茶店の制服に着替えてバイトについた。

 

 その夜は客足は幸人が考えるより多かった。昼に放送で迷宮が発生したと言っていたことから、この辺りの人通りは滞っているものと考えていたからだ。


 「良かったです。昼間の放送で十二区に迷宮が発生したって言ってたからお客さんは来ないものだと。」


 「そうだね、もしかしたらもうガードの誰かが解決してくれたのかね。」


 料理をテーブルに運び、カウンターに戻ってきた幸人とコーヒーを入れるマスターは話す。一般人からすれば迷宮の早期攻略は何より安心することである。中には攻略開始から何日もかかる『大迷宮』もあるそうだが、今回はレベルの低い迷宮だったのかもしれない。


 「いいや、そんなんじゃないんだわ。」


 二人の会話を聞いたのかカウンターに座っていた二人組の男たちが口を開く。一人はローブ、もう一人は革鎧のような装いをしている。この世界ではもはや日常的な光景であるが彼らはガード、おそらく今日この辺りの巡回をしていたグループだろう。そんな彼らの違うという言動が幸人は気になった。


 「そんなんじゃないって言うのは、いったいどう言うことですか?」


 「実はさその迷宮、相当強い反応が出てたんだよ。協会が測定した時にはレベル七だったらしい、相当な奴だ。」


 幸人とマスターはゾッとする。ガードでなくてもそのレベルがどれほどか理解できるからだ。

 迷宮の危険性、難易度の指標で九段で評価されている。レベル一が最も低い値でレベル九が最大である。そしてそのレベル九は現在世界でただ一つだけ、砂海の上の巨大建造物『白い巨塔』と呼ばれる転変海砂事変の起きたその場所である。その次でアメリカで発生した『反転界』と呼ばれる、ガードだけでなく民間人にも甚大な被害を出した迷宮のレベルが八だったという。

 今回はそれに次ぐレベル七。よくよく見渡すと店内だけではなく、窓越しに見える道を行き交う人の中にも数人のガードが見てとれた。人が多いのは単にガードの人手が多くいたからだった。


「それで、その迷宮はどうなったんでしょうか。周囲を封鎖したとかですか?」


 マスターは落ち着いた声で、でも少し不安げといった様子でガードの男性に質問する。男性は口元に近づけていたビールをグッと飲み干し、口を開いた。


「それがさ、『消えた』んだよ忽然と。嘘かと思うかもしれないけど、突然跡形もなくなったんだ。俺たち3級が言っても説得力無いかもしれないけど、現場には『守座(しゅざ)』が二人も居たから冗談とかじゃないんだ。」


 男性は真面目な口調で説明する。それがどれほど現実味のない事だとしても。

『守座』は日本には七人しか居ない。だがその活躍は他のガードとは比較にならない。そのため日本に限った事ではないがメディアでも大々的に取り上げられているため、本当の英雄のように慕われている。

 そんな守座が二人いて消えたと証言するという事は、本当に消えたのだろう。迷宮は攻略すれば多少の例外はあるが消失する。とわいえ、レベル七の迷宮をそんな短時間に攻略出来るわけはない。攻略されずとも消失することもあるのだろうか。

 思考を回し考え込む幸人。その様子を見たガードの二人は「まぁ反応も消えたし、機材の故障か自然消滅したんだろうよ。」と笑い飛ばす。さらにビールの追加注文が入る。暗い雰囲気で接客する訳にもいかないと微笑み直し仕事に戻る。

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