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18話

「ふー、ようやく終わりましたね。」

 

 「お疲れっす。流石に数百も魔石を取り出すと疲れますね。戦闘時間より魔石の回収時間の方が長いなんて俺初めてっすよ。」

 

 手をブラブラさせ、疲れを取ろうとする幸人。対して慣れた様に解体し終わった瀬戸は死体を洞窟のはじに寄せていた。最初に数百体を相手にしてから数時間、既にこの最下層にゴブリンが居なくなるまで狩っていた。そのせいで今いる広場以外足の踏み場もない状態になっていた。次に来るガードのことお考え端に寄せはしたがあまりの多さに飽き飽きしていた。そして今日のところはもうゴブリンは湧いてこなくなっていた。

 

「打ち止めみたいですし今日はもう上がりますか。」

 

「そうっすね、上がって魔石の換金もしないとですし上がりますか。兄さんも結構レベル上がったみたいですし。」

 

 パンパンのポーチを揺らしながら残りの死体を放り投げる。幸人も作業の合間に自分のステータスカードを確認する。

 

 ステータス、スキルレベルに変化はないがレベルは7になっていた。一桁と思うと成長が遅く感じるが、これは十分早いことだった。何より数字には出ていないが自身が強くなったことは幸人が一番実感しており、体感で倍は強くなったと思えるほどの成長率だった。

 

「兄さんはもう7レベルですか。俺も上がって18になりましたけど、すぐに追いつかれそうですね。」

 

「とは言っても解体に時間かかっててあまり効率が良くない気がしますね。どうしたものか。」

 

 1日で6レベル上がったとはいえ、これからどんどんレベルは上がりにくくなっていくと思うと解体の時間をなんとか短縮できないかと考える。もちろん大きなチームやギルドとなれば回収班がおり戦闘と魔石の回収を分担出来るのだが、幸人達にはそれが出来ない。アイテムにもそんなものは無かっただろうし、有ったとしてもきっと高額だろうといい案は思い浮かばなかった。

 

 仕方ないかと諦めつつ、考えを巡らせていると死体を片付け終えていた。魔石も全て指輪のアイテムボックスにしまい身軽そうに背伸びする。

 

「兄さん、もしかしてそのまま出るつもりですか?」

 

 不意の質問の意図を考える。モンスターも居ないし、この迷宮は永続型迷宮ということもあり隠し要素もないはず。更には服の返り血は帰りのゲートに洗浄効果のアイテムが備え付けられており、外に出れば自動で綺麗にしてくれる。そう考えるとこれといった問題はない様に思えた。

 

「そのつもりですけど何かマズいですか。」

 

 幸人の発言に無言で頷き、そして幸人の手を指差した。

 

 「そのまま出たらアイテムボックスがバレますよ。ただでさえ俺たちは3層にずっと居ましたし、途中他のガードも何人か見ましたからポーチ1つに入る魔石量じゃないのはバレてますから。」

 

 確かにと幸人もハッとする。それに魔石の換金には近くの協会窓口に持って行く必要があるがそこに出す時、指輪から出してはアイテムボックスがバレてしまう。

 

「ちょうどカバンを持ってきてたのが役だつとは。」

 

 アイテムボックスから背負ってきていたカバンを取り出し、回収した魔石を詰め直して背負った。

 

 

 2階層1階層を抜けて2人はゲートに辿り着く。来た時と同じでステータスカードをかざしゲートを抜ける。体に飛び散っていた返り血もその時に綺麗に洗浄された。こんなアイテムがあったらコインランドリーは商売あがったりだと思いながらすぐ近くの協会の換金窓口に向かう。


 夕方ということもあってガードが数多く並んでいた。しかしほとんど初心者ということもあってか列はスムーズに流れていった。

 

 「次の方どうぞ。」

 

 すぐに幸人と瀬戸の番となり用意された箱にカバンから魔石を流し込む。どんどんと積み上がり、箱からはみ出しそうになる魔石に受付も後ろに並んだガードも目を丸くした。

 

 「これで全部です。」

 

 「か、かしこまりました。精算しますのでしばらくお待ち下さい。」

 

 一つ一つは小さいとはいえ山の様に積み上がった魔石を後ろの精算機に流し込んでいく。幾らになるのかと期待しながら待つこと数分、ようやく精算が終わった様でトレイに現金が乗って2人の前に置かれる。

 

 「こちらが明細と精算額、10万8千円になります。」

 

 まさかの金額に驚愕しながら、しかし慌てず半額ずつ封筒に入れてもらい受け取る。それぞれが封筒を持ったまま一言も発さず精算所を後にした。

 扉を抜けた時2人は足を止め、向かい合って強く手を組んだ。

 

 「よっしゃーーーー!」

 

 人目があるにもかかわらず2人は雄叫びを上げた。幸人は言わずもがな、瀬戸もずっと1人だったためここまで稼いだことはなかった。それが急に手に入れた大金に舞い上がらずにはいられなかった。

 

「初日でこんなに稼げるなんて幸先いいですね。」

 

「明日にはレベル2に挑むんで、もしかしたらこれ以上に稼げるかもしれないっすよ。」

 

 最初の不安はなんだったのか、もはや希望しか感じてわなかった。瀬戸も同じだったのか早速レベル2の迷宮を調べ出す。

 

「ちょっと詳報を集めて良いところ探しときますね。そうだ連絡先交換しときましょう。」

 

 そういえばまだ連絡先を聞いてなかったと、互いに連絡先を登録する。迷宮の情報が集まったら連絡すると、瀬戸は足速に人混みに消えていった。きっとすぐにでも情報を精査したいのだろうと思いつつ幸人もまた、帰路を急いだ。

 

 

 

 最寄駅から歩きつつ家を目指す幸人。ガードとしての初任給の舞い上がりながら、軽い足取りで歩いていた。すっかり日も落ち街灯の灯りが照らす道がいつもより明るく思えるなか、不意にツユクサが話しかける。

 

「つかのことを聞きますが主人様、そんなにゆっくりで良いんですか。」

 

「別に良くないか。こんな日はのんびり歩くのも悪くないだろ?」 

 

 気分がいい幸人は何を言い出すんだと思いつつ歩き、気づけば家の前まで着いていた。ドアノブに手を伸ばし開けろうとした時、もう一言声をかける。

 

 「妹様と約束してたじゃないですか。」

 

 その瞬間ハッとしたが、同時に扉の先にたったほのかが目にはいった。可愛い妹が腕を組み、いつも無愛想なその顔は満面の笑みを浮かべていた。しかしその笑みには明確な怒りが読み取れた。

 

「おかえり兄さん。遅いお帰りで。」

 

 今までこんなに怒っているほのかを見たことがあっただろうか。今日出会った全てのモンスターを合わせてもここまでの圧はなかった。そんな彼女が笑顔のままリビングへと入って行く。

 

 「早く上がってください。ご飯は話の後です。」

 

 そこから怒涛の説教が行われた。解放されたのは1時間後のことだった。

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