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16話

 腹ごしらえも終わった2人は迷宮のゲート前に来ていた。駅の改札口の様な機械にステータスカードをかざすと通行可能になり迷宮に入れる様になっていた。ステータスカードは魔力を通していないとIDと顔写真、名前などしか記載されない身分証になっているのでこういった所にも使われている。

 

 「この迷宮は認定レベル1、階層は3階層っすね。兄さんはレベル1ですから、とりあえず1層から慣らして行きましょう。」

 

 2人で地下に続く階段を降りる二人。綺光結晶(きこうけっしょう)と呼ばれる大気中の魔力に反応して光る水晶が辺りをほんのり照らしているので移動にも戦闘にも支障はなさそうだった。


 今更だが瀬戸が幸人のことをいまだに兄さんと呼ぶのは本人が強く押したからだ。幸人は相手の方が年上ということもあり名前で呼んでほしいと言ったがこっちの方が良いとのことで、あまりの熱意に折れざるを得なかった。

 

 

 階段を降りると開けた空洞にでた。まばらに居るモンスターを数人のガード囲う光景があちこちに見える。モンスターは粘性体型、いわゆるスライムのようなもんの様なモンスターでまさにチュートリアルステージを言った感じだった。

 

 「ここじゃ落ち着いて戦えませんしもう少し奥で狩りますか。」

 

 「そうですね、個人的にもあまり装備を見られたくないですし。」

 

 自分の指に幻想級のアイテムが有ると思うと余り目立ちたくなかった。それとは別に、人のすくない所に行きたい理由もあった。そうこう話していると先程のガードの集団から火球か幸人達の間を通り抜ける。それは決して二人を狙ったものではないとすぐさま分かった。

 

 「おい下手くそ!俺はモンスターじゃねえぞ!」

 

 「うるさいわね!そっちに逃げたんだから仕方ないじゃない!」

 

 あちこちから罵声や怒号が聞こえてくる。新人しかいないからなのか連携もコントロールも無茶苦茶。今はまだ怪我人が出る様な状態ではないが、いずれもっと大きな戦闘になりかねないと感じていた。

 

 「まぁ協会のガードが巡回してますし大ごとにはならんでしょう。俺らは俺らの心配をしましょう。」

 

 瀬戸の意見にもっともと思いつつ、二人は奥へと進んでいった。

 

 


 1層の奥、2層へ続く階段付近で数体のモンスターを見つけた二人は戦闘体制に入る。

 

 「まずは俺が行きますね。俺の固有式は『四肢神城(しししんじょう)』といいます!」

 

 拳と拳を打ちつけ構えをとる瀬戸。その両手には青白い半透明の盾が展開されていた。拳を打ちつけた時の音に反応したスライム達が一気に瀬戸に襲いかかるが両手の盾に弾かれる。不規則に飛び掛かるも正確に弾き、展開した盾をまるで手甲の様に殴りつける。瀬戸の拳は粘性の体を突き破り、核と呼ばれる球体を砕く。すると覆っていた粘性物は溶け出し、崩れた核と中から魔石が現れた。

 

 「こんな感じの盾を両手両足に張れます。強度が高いんでそのまんま殴ったりに使えるんっスよ。」

 

 説明しながら残りのスライムも核を砕き倒してしまい魔石を拾う。低レベルのモンスターはこれくらいしか使い道がないため収入は少ない。逆に高レベルモンスターになれば魔石以外にも死体のあらゆる部位が使えるため高額を稼げるが幸人にはまだ縁のない話だった。

 

 「それじゃ今度は兄さんの戦闘を見せてください。」

 

 ひとしきり魔石を拾いウエストポーチにしまった瀬戸が熱い視線を向ける。また拳と拳を打ちつけると、どこからか数体のスライムが現れた。拳を打ちつけるのは挑発系のスキルだったのかと感心していると、一匹が幸人に向かって襲いかかる。

 

 「ちょっと兄さん来てますよ!」

 

 幸人が気付いてないと思いあわてたのも束の間、刃がスライムの体をすり抜ける。攻撃は当たらず着地したスライムを見て刀は当たらなかったのかと思った途端、粘性の体は溶け核は二つに割れていた。すかさず残りのスライムも切り裂きあっという間に戦闘は終了した。

 

 「凄いっすね兄さん。とてもレベル1には見えない動きでしたよ。これが付与魔法の力なんすか。」

 

 「…………。」

 

 あまりの手際の良さに舞い上がる瀬戸。しかし対照的に幸人は黙りこんでツユクサを眺めていた。瀬戸が何かあったのかと不思議そうにしているとようやく口を開く。

 

 「この刀凄い切れ味なんだけど!」

 「この刀凄い切れ味なんですけど!」

 

 幸人とツユクサのリアクションが重なる。ついつい声を上げてしまったツユクサだったが、声が被ったため瀬戸には聞こえていなかった。とにかくと一旦落ち着き念話に切り替える。

 

 「どうなってるんだこの刀。付与なしでこの切れ味って。」

 

 「夢想内じゃ比較対象がなかったですけど、もしかしたらこの刀結構等級高いのかもしれませんよ。道具系の鑑定が出来る人を探した方が良いかもしれませんね。」

 

 (はた)から見れば大声を上げた途端、黙り込んで動かない幸人を少し心配そうに見守る瀬戸。その様子が目に入ったのか何事もなかった様に振る舞う。

 

 「すみません、付与なしで思いの外火力が出たので自分でも驚いてしまって。」

 

 「えっ、今の攻撃は素の火力だったんすか。そうなるとちょっと作戦を変えますか。」

 

 1層のモンスターでは物足りないと感じたのか2層へ続く階段のほうへと視線を向ける。瀬戸は等級も高いため当然として、今しがた見た幸人の戦闘力から降ることが得策と考える。

 

 「1層の予定でしたけど、2層でレベリングに変更しますか。」

 

 「いや、むしろ3層でも良いと俺は思ってます。もちろん俺もタンクとして守りますけど、兄さんはどうですか?」

 

 思い切って最下層を提案する瀬戸に少し考えて頷いた。付与も夜帷も使ってない現状でこれだけ戦えるのならと自信も付いた。何よりすぐにでも強くなりたい幸人には好都合だった。

 

 「それじゃ行きますか!」

 

 決心の決まった表情に満足しているのか先陣きって歩き出した瀬戸に着いていく。ほのかな灯りが照らす空間に階段を降る音だけが響いていた。

 

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