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15話

 大きなガラス張り近くの席に腰掛けた2人がコーヒーを飲みながら落ち着きを取り戻す。時刻も昼に近かったことから軽食も机に並んでいた。

 

 「それであなたは何者なんですか。」

 

 突如として接触してきて、更にはチームを組もうと言ってきた男にその意図を問いただす。男は先ほどとは打って違いソワソワしている。淹れたてのコーヒーが熱くて飲めないと分かっているのに何度も口元に運んだり、髪先を指でいじったりしていた。その行動に不信感を抱いた幸人は小さくため息をついた。

 

 「すまんね。まず自己紹介させてもらうよ。俺の名前は瀬戸慎也(せとしんや)。実は訳あって誰にもチーム組んで貰えなくて。そこで1人だった兄さんにチーム組んで貰いたかったんだよ。」

 

 前髪のせいで目は見えないが真っ直ぐ幸人を見て話し出す。最初の印象とは随分違い真面目そうに見える。

 

 「別に俺じゃなくても良いのでは?見た感じ弱い訳じゃなさそうですし装備も整ってますし。」

 

 初対面の時より弱々しく話してはいる瀬戸だが高身長でガタイも良く、手足の防具見るに等級も防具の質も高そうに見える。幸人と違い固有式もあることなんだろう。


 その発言に頭をかき苦笑いを浮かべる。

 

 「実は俺、誤解で変な噂が出回ってて他の誰とも組んで貰えないんですよ。」

 

 というのも瀬戸が言うには、初めて組んだチームが男女のカップルのチームでそこに混ぜてもらう形になった。最初は順調だったが女性の方が危険になった時に身を挺して助けた際に吊り橋効果か近接の法則なのかその女性に惚れられてしまったらしい。更にはその後カップルがギスギスしだしてそのチームは解散した。なおその女性とは何もなかったとのこと。

 

 「それだけでどうして他のチームに入れないんですか。どう考えても瀬戸さんは悪くないのでは?」

 

 「それが、その後その男性の逆恨みか出まかせの噂を流されて。他人の彼女を奪うとか女性を取っ替え引っ替えしてるとか、悪い連中と付き合いがるとか。まぁ諸々です。」

 

 いくらなんでもひどい。しかしそんな噂がどうして多くの人に信じられているのか。そう思い瀬戸に視線を移すと、自然と納得できた。

 

 「その見た目と笑い方のせいですか?」

 

 「ゔっ!」

 

 地から響くようなうめきを上げ机に突っ伏した。自分でも自覚していたのか、それとも他にも似た指摘を受けたのか目に見えてダメージを受けていた。しかしだとしたら髪を切るなりあげるなりすれば印象は変わるのではと考える。

 

 「前髪を切るとかすれば、それだけで印象も違うと思うんですけど。」

 

 「それはちょっと。別の問題があって。」

 

 手で前髪を押さえる瀬戸。その行動に幸人は口を閉ざす。ガードをしていれば当然怪我もする。しかし一般人からすればやはり印象は良くないだろう。それが顔ともなれば。コーヒーを飲みながらそれ以上は何も聞かなかった。

 

 

 話してみると瀬戸は見た目や初対面での印象こそ良くなかったが、人となりは真面目で努力家のようだった。等級も2級で固有式持ち、更にここ一ヶ月噂のためとはいえ1人で迷宮には潜っているという。しかし徐々にレベルアップが見込めなくなってきた事からチームを組もうと考えたが上手くいかず、1人でいる幸人に声をかけたとのこと。ちょうど誰かしらとチームを組んだ方が良いと考えはしていた、がしかしそうなると別の問題が浮上した。

 

 「それならチームは難しいかもしれませんね。」

 

 「やっぱり俺みたいなのじゃ無理っスか。」

 

 「いや、瀬戸さんどうこうじゃなくて俺の方に問題が有るんです。俺、固有式無しの3級なんで瀬戸さんが俺とチーム組んでもメリットは何もないですよ。」

 

 自分で言ってて少し惨めになる。固有式を有していても他人に翻弄(ほんろう)され満足に活動も出来ない。それでもガードとして頑張っている人を目の前にして足を引っ張るのは気が引けた。彼にはもっと相応しい相手が居るのではないかと。

 

 「ちなみに聞きますけどロールは。」

 

 「え、付与による自己バフアタッカーの予定ですけど。」

 

 不意の質問に反射的に答える。夢想での修練で確立した戦闘スタイルは、足りないステータスを付与によって補うというものだった。そのためレベル1にも関わらず認定レベル1の迷宮なら余裕がある程の火力が見込めた。


 どうしてそんなことを聞いてくるのかと幸人が呆けていると瀬戸はテンションを上げて喜んだ。

 

 「ならなおさら問題ないですね。俺タンクなもんで効率悪くて。なのでアタッカーってだけで有難いです!」

 

 タンクが1人で迷宮に入っていた事実にも驚くが、それ以上にアタッカーであることを知った時の舞い上がり方のほうが衝撃的だった。


 「そうですか。それじゃあチーム組みますか。」


 あまりにも喜ぶ相手に対し多少戸惑うも、これ以上断っても失礼だろうと瀬戸とチームを結成すると運びとなった。何より彼の人となりからこのチームはきっと楽しいと、そう感じていた。

 

 「それじゃ速くご飯食べてダンジョン潜りますか。せっかくですしここは俺の奢りでいいですよ!」

 

 舞い上がって懐の紐も緩くなる瀬戸に感謝しつつ軽食に手をつける。食事の間、瀬戸からガードのノウハウを教えてもらう。効率の良い経験値の稼ぎ方に金策の方法、オススメの店舗から果ては守座の最近の活躍まであらゆる情報を提供してくれた。


 気になったことはその中に聞き知った名前が出てきたが、同姓同名の別人だろうと気にはしなかった。

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