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12話

 電車に乗ってまたしばらく揺られ、目的の四区に到着した。

 商店街の様に多数の店が軒を連ねている。店舗の種類も豊富で飲食店から武具を取り扱う店、ポーションやアイテムを取り扱う店など様々である。また店舗だけでなく出店も盛んでガードたちで混雑していた。

 

 「回復ポーションが大量入荷したよ!迷宮に潜る前に買っていかないかー。」

 

 「良い鎧を取り揃えてるよ!今だったら解体用のナイフも付けるよ!」

 

 客引きの声がそこらじゅうから聞こえてくる。近寄って商品を確認するがどれも要求身体強度が高く装備できない。それどころかどれも高額でとても手の出る様な金額では無かった。

 

 「まさか革防具でこんなに高いなんて。最悪は迷宮の入り口で協会支給の最下級ポーションだけで潜るしかないか。」

 

 最下級ポーションは協会が新人の生産職ガードのレベルアップを目的に量産している物で、回復力は低いが材料が安価であることから新人でも作りやすいのだという。そして迷宮に潜る時に毎回1人5個が配られるらしい。新人ガードの間はそれでなんとかなるそうだ。

 

 「いくら修練を積んだからって、道具なしは不安じゃないですか?防御系の付与魔法も覚えましたけど、主人(あるじ)様の魔力量では火力に回す分を引くと厳しいですし。」

 

 確かにそうなんだよなと悩みつつ歩く幸人。うつむき考えているとフードの子供の横を通り過ぎる。

 

 「おや、この感じは。」

 

 フードの子供は立ち止まり幸人に視線を向ける。少し観察するとうんうんと頷き幸人に駆け寄る。

 

 「お兄さんもしかして新人さんかい?もしよかったらうちの商品見ていかないかい?もちろん新人向けの要求値で安物もあるからさ。」

 

 背中を指で突かれ振り返る。急なことで驚いたのもつかの間、腕を引っ張り店舗の間にある路地に連れてこまれる。路地裏には良い思いのない幸人は急に現れたその子供にも疑惑の視線を向けて足を止める。

 

 「ちょっと待て!君は何者だ。悪いが押し売りなら俺は大して金は持ってないぞ。」

 

 手を振り解き距離をととる幸人。突然の出来事に身構え、カバンに手をかけた。

 当然だがガードも皆んながみんな善人という訳ではない。数年前にはガードによる国家転覆を企てた事件や、カルト集団と呼ばれている「終世教」が迷宮からモンスターが外に出てきてしまう現象「オーバーフロー」を意図的に起こす事件も多発している。

 子供の仲間が居るんじゃないかと周囲にも意識を向けつつ、目の前の子供から視線を外さない。すると流石に雰囲気を察したのか子供がフードを脱いでみせる。肩まで伸びた銀髪に赤褐色の肌、輝く大きな赤眼が幸人を映していた。そしてすぐさま両手を上げてみせた。

 

 「ごめんごめん!そんなつもりじゃなかったんだよ。ただ本当に僕は有望そうなお兄さんに協力したいだけなんだよ。」

 

 焦った様に弁明しながらパーカーのポケットからズボンのポケットまで全てひっくり返して危ないものは何も持ってないと証明しようとした。その間もずっと慌てた様子のその子供に気が抜けたのもあったが、必死に疑いをはらそうとする姿にいつかの自身の妹を重ね幸人は姿勢を正した。

 

 「わかったよ。そこまで言うなら君のことを信じよう。実際装備が欲しいのはほんとだし。」

 

 「本当かい!わかった、それじゃお詫びも兼ねて商品を一つサービスするよ。」

 

 はぁとため息をつく幸人に対して天真爛漫に笑いかけて歩き出す。客引きの子供がそんな約束をして良いのかと思いつつ、その後ろについていく。

 

 

 路地に入って一悶着あったものの、ほんの1、2分で言っていたであろう店舗に着く。

 

 「これは、本当に騙されたかもしれないな。」

 

 店舗と思わしき建物の前立って自分は見る目がないのかと眉をひそめながら足を止めた。それもそのはず、そこにあったのはどう考えても場違いな、豪勢な家が建っていた。

 清潔感の感じる白い外壁に神殿でしか見ない様な石柱、挙句には路地裏というのにあたりには街灯も立っており暖色の灯りが周囲を照らしていた。

 何より異様だったのはどう見てもガードとしか思えない、スーツにサングラス、帯刀した女性が扉の左右に立っている。ヤクザの事務所にでも通されたのかと思うしかなかった。

 

 「これは戦ってどうこうなると思うか。」

 

 「無理でしょうね。階級は分かりませんけど片方だけでも主人様より全然強そうですから。」

 

 「だよなぁ。はぁ、初日からツイてないなぁ。」

 

 現状をツユクサに相談するもまともな打開策も思いうかばず虚空を見つめる様な目をしていた。

 

 「お兄さん早く入って下さい。ここが僕のお店ですよ。」

 

 スーツの女性たちがが両開きの扉を開き幸人を迎える。扉の中から発せられる眩い光に目を細めながらも、それ以前に発せられた言葉に疑問符を浮かべる。

 

 「僕の店?」

 

 「そうですよ。言ってませんでしたっけ?僕の店に招待するって。」

 

 言っていない。だがその幼い容姿でこれだけ立派な店の店主という事にそんな所まで考えが回らなかった。

 

 「それでは改めて。ようこそ私、(のぞみ)お店『大いなる精霊』にようこそ。」

 

 両手を広げ希も改めて幸人を歓迎する。急に色々なことが起きた事で不信感を抱いていることは変わらないがその場に立ち付くわけにもいかず、渋々といった様子で店内に足を進めた。

 

 

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