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11話


 

 「次の方どうぞ。」

 

 明るい受付の女性の声が聞こえ、幸人の順番が来たことを伝える。奇しくも先ほど怒鳴っていた人の受付をしていた人だった。可愛らしい容姿に明るい表情、協会の選考基準は随分とハイレベルなんだと思ったところで「何考えてるんですか」とツユクサに思考を邪魔され本題に戻る。

 

 「新規登録お願いします。」

 

 「分かりました。それではお手元の機械に手を乗せて下さい。」

 

 青白く光るディスプレイの様なものに手を置くと何かしらの機能が幸人を解析しているのかモスキート音の様な甲高い音が鳴る。しかしそれも一瞬のことで終わったのか青白い光は消え、受付の女性がパソコンに向かいデータを精査する。

 

 「お客様の解析データが出ました。向かって左のスクリーンをご覧ください。あっ。」

 

 カウンターの左側にデータを共有するためのスクリーンが置かれており、そこに仮ステータスカードで見た情報と似た内容が表示される。違う点はレベルの表記と総合評価の階級、そしてスキルが一つ増えていた。

 女性が言い淀んだのはおそらく固有式が空欄の為だろう。しかし幸人はそんな事は気にもせず表示された内容を確認する。

 

 レベル1

 魔力:C

 肉体強度:D

 固有式:(空欄)

 スキル

 魔力強化Lv5 肉体強化Lv2 付与魔法Lv1 与名Lv1

 階級:3級

 

 「肉体強化が増えてるな。でもレベルアップもしてないのに、なんでスキルが増えてるんだ。」

 

 「よく分かりませんが主人様が筋トレで肉体作りをしてたから追加されたのでは?アスリートには肉体強化のスキルが発現しやすいらしいですし。」

 

 「まぁ肉体強化はいいとして、俺付与魔法も結構練習したのにレベル上がってなかったのか。与名は仕方ないにしても…」

 

 スクリーンを見たまま、ああでも無いこうでも無いとツユクサと念話する幸人。受付の女性からは黙り込んでスクリーンを覗き込む様子から自身の固有式がない事でショックを受けているのだろうと思われていた。

 

 「えっと登録の方はどうしますか?ステータスにご不満の場合は…」

 

 「あっ、すみません。問題ありませんので登録お願いします。」

 

 登録を諦めると思い声を掛けた女性だったが幸人の返答に驚いた表情を浮かべる。決して固有式の無い者が登録した事が無かったわけでは無いが、そうした人達は現実が受け入れられず悪態の一つや二つ受付に浴びせていたからだ。

 しかし幸人はのそういった素ぶりのなさに女性は驚かずにはいられなかった。

 

 「かしこまりました!それではステータスカードを発行しますね。身分証の提示とこちらの用紙に記入をお願いします。」

 

 先程よりも明るい笑顔。正直恋愛経験のない相手なら勘違いしそうなその愛嬌に隣のレーンからも視線が集まる。と同時に男性陣からの妬みの視線が幸人に注がれる。視線に敏感な方でない幸人もそれに気付き、これが一樹の感じていたものかと肩をすくめた。

 

 学生証を提示し、渡された用紙に記入して受付に提出する。確認が終わった学生証を受け取って記入内容を確認する。その時受付の女性は首を傾げた。

 

 「えっとお名前は雪見幸人さんで間違いありませんか?」

 

 「はいそうですけど、何かありましたか?」

 

 どういう訳か名前の確認をされる。学生証の確認は顔写真の確認で名前の読みまで確認していなかったのかこのタイミングで確認された。特に犯罪歴が有るわけでもないが不安に思う幸人。

 

 「あっいえ珍しい苗字だと思って。苗字と名前の音が似てるから不思議に思って。」

 

 あははと笑いながら謝る女性。幸人もほっとした様子で肩を落とした。

 

 その後はとんとん拍子に事が進みステータスカードが発行された。仮ステータスカードと同じで紐付けした対象の魔力に反応してリアルタイムのステータスが確認出来る。だがこちらは魔力を流せば半永久的に使用出来る優れものだ。

 しかしそこにも表示されないものも有る。HPやMPの残量の様なもの、攻撃力や防御力といったものは表示されない。ゲームとは違いそういったものを数値化する方法がないからであろる。

 身体のレベルというのも曖昧なもので、魔力や肉体強度のの微細な上昇を感知してそれを基にレベルアップを表示する仕組みとのこと。

 

 またレベル上限に関しても表記はない。これに関しては未だ開発中との事だが、個々人にはそれぞれレベルアップ出来る回数に上限があるとされている。と言うのもとあるガードはレベル30を超えられない中、同期は40を超えたといった事があり、上限があるかあるいは一定のレベルを超えるのに条件が有るのかは現在研究中との事だった。

 


 そうこう説明を聞いていると幸人の後ろには長蛇の列が出来ていた。随分話し込んでいたのか、受付さんの愛嬌による集客効果なのかは分からないが早々に切り上げた方が良い様子だった。

 その雰囲気を察したのか受付さんも話を締めくくり、さらに初心者におすすめの迷宮が書かれたガイドブックを用意してくれた。

 

 「ありがとうございました。おかげで色々分かりました。」

 

 「頑張って下さいね。いってらっしゃいませ。」

 

 ガイドブックを手に列から離れると「次の方どうぞ」と女性の声が聞こえてくる。本を開き一番近い場所を確認する。

 

 「一番近いのは四区みたいだな。ガード向けの市場もあるからそこで準備を整えよう。」

 

 「そうですね、ところで主人様。」

 

 「なんだ?」

 

 「正直、鼻の下伸ばしてましたよね。」

 

 ツユクサのその言葉に幸人は何も言わない。その態度にツユクサはこれだから男子はと騒ぎ立てる。この時ばかりは喋る刀を恨めしく思った。

 

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