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②本校舎2組目【円堂傑、雨岸有紗、三村柊、四季真梨奈】
あたし達は、本校舎の体育館側で6階倉庫の鍵を探すことになった。
「もう小体育館は見きったが、鍵はなかったな。」
「小体育館であんなゾンビがいるだなんて…体育館に行ったら一体どうなっちゃうの?」
幸運なことに誰も犠牲にならずに小体育館を捜索することが出来たけれど、ゾンビの数が1学年の半分くらいの人数いた。避難場所になっている体育館は、おそらくもっと多くのゾンビがいる。
「ねえ、本当に体育館の方に行かなきゃダメなの?」
「ゾンビが多けりゃ中に入る必要はないだろうけど、体育館の様子だけでも見に行こう。」
傑の言う通り、あたし達は体育館のドアの前まで来た。
ぴよぴよ♪
「あ、傑の通知なってるよ。」
「こんな時に誰だ?」
美術室に集まった人達で作ったグループで、『6階倉庫の鍵は愛華先生が持っている。』と送られていた。
「まじか見つけたのか!拓真ナイス!」
「でも、愛華先生はどこにいるんだろ?」
「…体育館だ。」
柊がそう言った。
「なぜわかる?」
「愛華先生は3年次に避難誘導をしていた。おれは元々それについて行ったが、ある子からの連絡が来たから体育館には行かずに済んだ。円堂、お前の話が本当なら、体育館に行った愛華先生はもう既に…。」
「ああ、手遅れだな。」
「じゃあ、一体どうやって愛華先生から鍵を奪い取ればいいの?」
「こういうの、ドラマとかだと大人数でゾンビと戦うんだが、今の俺らには武器も人手も知識も何も無い。だから、本当に体育館に愛華先生が居るなら、屋上以外の新しい策を考える必要があるかもしれないな。」
「じゃあ、あの、とりあえず体育館に行ってみませんか?もしかしたら、愛華先生はゾンビにならないで体育倉庫とかに隠れてるかも。」
「うん。真梨奈ちゃんの言う通りだと思う。」
「わかった。じゃあ、体育館へ向かおう。」
それから、あたし達はすぐに体育館の入口辺りまで辿り着いた。外にはゾンビはたくさんいたので、体育館の二重扉構造を利用して、1つ目の扉と2つ目の扉の間の空間でとどまった。2つ目の扉は上から体育館を覗ける窓があったので、協力して中を覗いた。
「おい嘘だろ…?こりゃゾンビだらけなんてもんじゃねえ。少なくとも100人以上はいるぞ。」
「愛華先生はいるのか?」
「一通り見た感じは、居ないな。」
「体育倉庫に行ってみませんか?」
「そんなリスキーなことそう簡単にできるかよ…。」
「だが円堂、四季の言う通りかもしれない。半日経つまでもうすぐだ。そろそろ行動を起こさないと、体育館側を探しに来た意味が無くなる。」
「だけど…なにも作戦無しに行くのは危なすぎる。」
「それならあたしに提案がある。」
「なんだ?」
「はぁ…まだわかんないの?あんたバカなの?二年もこの学校居るって言うのに。」
「え?まだ1年と9ヶ月…。」
「そんなんどうでもいいよ。体育館の横に、体育倉庫専用の出入口があるでしょ?愛華先生が体育館内に居なさそうってことは確認できたんだから、もうここに用はないよ。」
「あ!そういえばそんな入口あったね!」
「お前、気づいてなかったのか…。」
「ぼくはそんな入口があること知りませんでした。」
「まあ、真梨奈ちゃんはまだ1年生だから。」
「俺の扱い酷くね?」
「バカなのが悪いの!」
それからあたし達は体育倉庫の入口がある方へ、外にいるゾンビに注意しながら向かった。幸運なことに、体育倉庫に入ってすぐはゾンビに襲われることはなかった。
「まさか体育倉庫に一体もゾンビが居ないなんて。」
「有紗、静かに。」
「え?」
よく耳を澄ますと、荒い息や、たんが絡まったような声が聞こえる。体育倉庫と繋がっているステージや体育館の電気を操作する体育管理室にゾンビがいるのかもしれない。小声で話す必要がありそう。
「ステージへ行くのは危険が高すぎる。体育管理室の様子を見に行こう。」
傑がそう言って体育管理室への階段を登り始めたその時、真梨奈ちゃんがあたしの口を抑えた。
「───ん!」
「先輩、静かにしてください。すぐに済みます。」
傑…!助けて!!真梨奈ちゃんの目的は何?一体なんのためにあたしの口を抑えているの?
そして、傑が体育管理室のドアを開けたその時、どこからか柊が捕獲したゾンビを連れて、体育管理室の中へ入れた。
「は?おい!何してんだ!」
息付く暇もなく、すぐに体育管理室の鍵が閉められる。そして、まるで計画されていたかのように、椅子をドアに上手く立てかけ、内側からドアがあかないようにした。
「なんのつもりだ!!」
傑は手足が拘束されたゾンビを、なんとか蹴飛ばし、時間を稼ぎつつ、脱出を試みている。
真梨奈ちゃんが、あたしの口から手を離した。
「ちょっと!なんで傑を閉じ込めたの!?」
「…」
2人は何も答えない。
「四季、これで良かったのか?」
「ぼくはこれでいいんです。三村先輩、手伝ってくれてありがとうございます。」
「傑!!今助けるから!」
「有紗、だめだ!」
焦っていたあたしは頭が回っていなかった。大声を出してしまったのだ。
「有紗!行くぞ!」
柊がそう言う。ステージ上に居たゾンビたちがだんだんと迫ってくる。
「いやだ!!傑を助ける!」
「有紗、お前もアイツらと逃げろ!」
「傑を助けてからね!」
ダメだ、焦って椅子が抜けない…。
「いい加減にしろ有紗!こんな男捨てろ!」
柊があたしの手を掴んで引っ張る。力じゃ…勝てない…。
「こんな…男だと?」
その言葉に反応して、柊は止まった。
「ちょっと先輩方!!早くしてください、ゾンビを抑えるのも限界です!」
その瞬間だ。運命を変えたのは。
「うらああああああああ!」
傑は自らの左手を拘束ゾンビに噛ませた。ゴリッ、と骨が噛み砕かれる音がした。だが、傑は悲鳴一つさえあげない。
「おい、気が狂ったのか??」
あたしは、もう喋る気力すら無くなってしまった。だって、傑の助かる見込みはもう、ないのだから。
だが、傑はまだ抵抗していた。左手を噛ませたことでゾンビの身動きの軸を左手に抑え、右手で頭を殴る。
───ゾンビの内臓や骨は柔らかくなっている。傑がそう言っていた。信じられないことに、傑はたったの3発でゾンビの頭を破壊してしまった。
「はは…イカれたやつだ。だけど、噛まれたんだからもう助からねえぞ。」
「はぁ…はぁ…どうかな。知ってるか?感染源を絶てば、感染速度は限りなく遅くなる。そうすれば、まだまだ生きてられる。」
「そんなの…ただの脅しだ!ゾンビドラマを信じすぎだ。まず、感染源を絶つなんて無理だ。」
「俺はどこまででも探し出すぞ。生きる方法を。」
「もう…限界です!」
柊があたしの手を引っ張って、あたし達は体育倉庫から生き残ることが出来た。あのゾンビの量じゃあ、感染源を絶ててもきっと…。
「円堂のことは忘れろ。」
あたしはまだ、喋る気力などなかった。
◆◇◆◇
「金之打高校、到着しました!」
ついに到着してしまった。ぼくら7人全員が怯えているのが雰囲気だけでも伝わってくる。これから死にに行くのか…病みそう。
「初めは、体育館に居る生存者の救助をしてくれ。」
金山市長の指示で、体育館へ向かう。どうかゾンビが居ないことを祈るばかりだ。
───まあ、ゾンビがいないわけもなく、今ぼくらは体育館の入口に閉じ込められている。二重扉の外にもゾンビ、中にも大量にいる。絶望的としか言いようがない。
「市長!この様子だと、体育館に生存者はいません!」
「ならば、ゾンビを殲滅しなさい。」
ふぁ!?マジで言ってんの?誰か死ぬぞ、これ。
「金山市長、本気で言ってますか?」
「誰かが犠牲になっても、殲滅しなさい。」
「…みんな、今は市長が指揮官だ。言う通りにするしかない。」
「そんなの嫌だ!俺は逃げますからね。」
同僚の1人が反抗する。先輩が反抗した同僚を掴み、体育館の入口のドアの中に突き飛ばす。
「先輩、何するんですか!」
「今だ、撃ちまくれ!」
ぼくらは恐怖心と戦いながら、何も考えず本能のまま、同僚諸共体育館内のゾンビを撃ちまくった。
逃げるなんて負け犬のすること。生きるためには、戦うしかないんだ、と。ぼくは早くもそう学んだ。
ドドドドド───!
◆◇◆◇
…俺は死んだのか?ああ、左手が痛い。あの後なんとか左手を体育管理室にあったノコギリで切除したが、普通は1人でやることじゃないし、ノコギリで切れるもんじゃない。もう立つ気力すらない。今にも死にそうだ。いや、もう死んでるのか?
「───ダメだ。俺は生きる。どこまでも探してやる、俺が生きる方法を。」
俺は決心して目を開けた。立ち上がろうとしたその時だった。
ドドドドド───!
「あがああああああああああ!」
痛い、耳が痛い。痛い痛い痛い。誰か、助けてくれ!銃撃音か?なんで学校でそんな音が?しかも、どうして銃撃音でこんなに耳が痛くなるんだ?何かがおかしい。でも、今は立ち上がらなければ。もしかしたら、救助が来たのかもしれない!
「俺だけでも…助かってやる。」
俺は痛みに耐えつつすぐに立ち上がって、前へと進み始めた。必ず生き残るという意志と共に。
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【登場人物について少し詳しく人物紹介】
〔ペア3:円堂&雨岸ペア〕
円堂 傑:2年D組。重度のドラマオタク。彼女はいるが、自分勝手な性格で人からはあまり好かれない。そしてとても正直者。ワクチン接種済。
雨岸 有紗:2年A組。部活も入ってないギャル。1年の頃、拓真、花音、傑と同じクラスだった。陰で色々言うタイプ。表裏あって隠し事が多い。だが、こう見えて情に厚い。ワクチン接種済




