第一章 そのニ 『クロモミ探偵事務所④』
「む〜、どーするモミ? 喋って良しかの?」
「まぁ、いんじゃね、こいつだってこれからは俺たちクロモミ探偵事務所の一員なんだぜ、それにそもそもお前もう使ってんじゃねーか」
――あれ?
「そっか、それもそーじゃのーーよし、センスわしの能力を話してやる」
「いや、その前に……」
「ん、ちょーどじゃ!」
ハクトはセンスの言葉を遮り窓外の上空を見上げ何かを見つけると言った。
「ほれ、窓の外を見てみよ」
「ん? どれどれーーって、うぉ! なんすか、ありゃ」
外には数羽のカラスが飛んでいて、それぞれ何かを咥えている。ハクトが満面の笑みで窓を開けるとそのカラス達は部屋の中へと入ってきて口に咥えたものを落とすと、役目は終わりだとまた自由の空へと羽ばたいて行った。
「ごくろーなのじゃ」
カラスが落としたものを見ると、高級そうなお肉が三パックに、豆腐、ネギ、えのき、椎茸、マツタケ、白菜に、いろんな魚の刺身であり、それは全て一万円を咥えたカラスへハクトが買うように命じていた食材だった。
「ふふん、どーじゃセンス、これがわしの能力じゃ、わしは動物と話ができるのじゃ!」
ハクトはとても得意そうに無い胸を張って自身の能力を説明した。
「へぇ、すごいっすねーーって、あれ? すいません」
「ん、なんじゃ?」
「樅木さんが出したのって一万円だったっすよね? このお肉、それぞれ三千円って書いてあるっすよ、あぁ! こっちのマツタケにおいてはもうはなから一万円超えて……むぐっん、んん!?」
いつのまにかセンスの口の中には大量の刺身が突っ込まれていた。
それも肉同様高級な物なのだろう大して噛んでいないのにすぐに溶けてゆき口内にその味が広がってゆく。あまりのうまさに頬がキュッと感じるほどだ。
「ーー食ったな、よーし、これでお前も共犯だ!」
幸せそうに後味の余韻を楽しんでいるセンスに樅木は眩しい笑顔で最低なことを言うと幸せな顔は一気に青ざめる。
「ちょっ、犯罪じゃないんすかこれ!?」
「ちがう、これはただ偶然カラスさんが持ってきてくれただけだーーもし警察が来てもそう言うんだぞ!」
――この人ヤベェな
「というかどうやって俺の口に一瞬にして刺身を突っ込んだんすか?」
樅木はそのセリフに待ってましたと言わんばかりの顔をして
「聞きたい? 聞きたいのぉ? 聞きたいよねぇ? えぇ〜どうしよかなぁ」
「別にどうでもいいっす」
なんか長くなりそうだし、めんどくさくなりそうだし、そもそも今空腹だしと、センスは樅木に背を向けた。
「ああ!! ごめんごめん! 言うよ! 言う言う! 聞いてってば!」
背を向けられるなり、樅木はあたかも駄々っ子のように気を引くのに全力を出し始める。
ーー始めからそう言えばいいのに、めんどくさい大人っす……
「で、結局どんな能力なんすか? 教えてくださいっすよ」
言えば、樅木の顔は途端にぱあぁっと明るくなってゆき、コホンと気取った咳払いをする。
「俺はな……時を止めることができるんだよ」
「時を……とめる?」
「あぁ、名付けて支配時間!」
樅木は顔に手を当て、ポーズを決めながら自信満々、意気揚々にそう言った。
――そんなすごい能力をなんでくだらないことに使ってんだ。あと能力名やっぱセンスねぇっす……
「……すごいすね」
頭ではいろいろ考えたが、口からは正直な感想が漏れ、高評価に樅木はとても嬉しそうにすると、ニコニコしながら長くなりそうな自慢話を始め出したので、センスは最後のメンバーもといカコにも質問する事にした。
「ーーカコも何か能力持ってるんすか?」
「え、あ、うん一応」
「へー、どんなのっすか?」
「えっとね、これ」
カコは人差し指を立てるとまるで着火ライターのようにそこから小さな火が灯った。
「おぉ! すごいっす」
「ぼ、僕はね、自由に火を出せるんだ」
「火っすか、カッコいいっすね!」
「そう? ありがと ーーでも僕はこの力が怖いんだ」
「怖い? なんで?」
センスのその質問にカコは一瞬困ったような顔を見せたあと、口元のチャックを下げるとそこに隠されていた首から右頬にかけて大きな火傷の跡が露わになった。
「……それは?」
「ぼ、僕はこの能力のせいで、大切な人を失ってしまった、家族も、そしてあの人も……」
カコはそこから先をなかなか話そうとしない。
――もしかしたら俺は何かいけないことを聞いてしまったっすか?
と頭に嫌な考えが浮かんだセンスは困り顔で聞く。
「俺なんか変なこときいちゃったすか?」
「あ、ご、ごめん大丈夫」
「おーい、何やってんだ、早く鍋の用意するぞ」
「手伝わんと飯抜きじゃよ」
「いつのまにか奥の台所に行っていた二人がそう言ってくる。
「ふふ、いこうか、センスくん」
「……そっすね」
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「それでは、センスの入社を祝ってカンパーイ」
「かんぱい」
「かんぱー」
色々あって一時間以上かけてステーキ用の肉や、マツタケ等がたくさん入っためちゃくちゃ豪華な鍋が完成した。
「あの、すいませんひとついいっすか?」
各々が鍋の中から好きな具材を取ろうとしている中センスだけは箸を持たない。
そしてずっと気になっていたことを聞く。
「んなんだ?」
「俺別に入社はしてないし、する予定もないんっすけど……」
「うるせぇ、小さいこと気にすんな」
「小さい事って……これ結構大事なこ」
「どーでも良しじゃから飲め、まずは飲むのじゃ」
「いや、俺まだ多分未成年!! うぷっ」
ハクトは瓶に入った酒をセンスの口を塞ぐようにして飲ませる。
すでに酔っているのか彼女の白い肌は少し赤みを帯びていた。
「ちょっとハクトちゃん! 無理に飲ませちゃダメだよ!」
「う、うぁな、なん、め、目がまわ………」
「ちょっ、だ、大丈夫!?」
「がうる、がうがう」
強いアルコールにより薄れゆく意識の中、ステーキ用の肉を嬉しそうに食べるケルベロスの姿が見えたのを最後にセンスの意識は途切れた……
※アルハラダメ絶対!!




