第二章その九 『偽り幸福(夢)から逃げて③』
「な、なんだか分かんないけど、助かったみたいだね、大丈夫かい?センスくん」
「………俺なんかよりカコは大丈夫っすか?巻き込んで悪かったす」
「僕は正直ちょっと……いやかなり全身痛いや、こればかりは痛みを消せるセンスくんが羨ましいな」
「俺も今は痛みを消してないんすよ」
「え?な、なんでさ」
「……ん〜大切なことに気づかせてくれたカコヘの恩? いや仁義? みたいなもんっすよ」
「…ッハハ、っいてて、なんだよそれ、あはは、ったた」
「――ったく、やはりそなたらはわしがつーとらんとダメダメじゃの〜」
いつの間にか近くにケルベロスを抱っこしたハクトが立っていた。
「ハクトちゃんが助けてくれたんだね?」
「そーじゃ、鳥達に奴等目掛けてフンをするよーに頼んだのじゃ」
「ありがとうっす、お陰で助かったっす」
「礼は無用じゃ――そんなことよりホレ、そなたもこんか」
ハクトは目線を上げて言う。その視線の先には気まずそうな顔をした樅木が立っていた。樅木は表情を変えずにすぐそばまで歩み寄り、センスとカコを立たせると
「――センス、疑ってすまなかった。仲間を疑うなんてどうかしていた。許してくれ」
センスに頭を下げてそう言った。
「……樅木さん顔上げて下さいっす」
樅木は顔を上げると、センスはその顔目掛けて思い切り拳を振った。が、拳は樅木の顔を捉えることなく空を切った。
「っえぇぇぇ!!?今許してくれる空気だったじゃん!?なんで殴るのさ!?なんで!?」
「……いや、樅木さんこそ、何時止めてまで躱してんすか?」
「そーじゃ、モミ!貴様何躱しとるんじゃ!男なら覚悟を決めて一発や二発殴られるのじゃ」
「嫌だね、だって俺正直謝って許してもらえると思ってたし、殴られる覚悟なんてしてねーよ」
「………樅木さん本気で謝る気あるっすか?」
「謝る気はあっても殴られるつもりは無い!!」
「何どーどーと言っとんのじゃ」
「そうですよ、謝りに来たって言うんならもっとこう………」
「まぁまぁ、殴られるっつーのは嫌だが、なんでも好きなもん奢ってやるからよ、コレで」
樅木はポケットからあるものを取り出しながら言う。
「ちょっ、樅木さんそれ一体どうしたんですか?」
樅木が取り出したものは見覚えのない三つの財布だった。
「ん、コレか?時間止めてお前らをリンチしてた奴らから盗ったんだよ」
「なにやってんですか!?一般人に能力使うなんて……ていうか思い切り犯罪じゃないですか!!」
「バーカ、慰謝料だよ慰謝料、あんだけ盛大にボコられたんだ、この程度の金もらってもバチは当たらねーよ」
「……カスじゃの」
「本当に返した方がいいですって!」
「ちゃんと返すさぁ〜、ただし中身を使った後でだがな!」
「ちょっと!!」
「…………ふ」
「ん?どーしたんじゃセンス?」
「センスくん?」
「ぷっ……クククっ、ふふ、あっはっは、あははははははは!!!」
三人の話を聞いていたセンスがいきなり盛大に笑い出した。




