第一章そのニ 「クロモミ探偵事務所③』
「くそ、また負けたっす」
「ふふん、まだまだじゃの」
ゲームを初めて三十分ほどでセンスは十を超える連敗を味わい、しかもハクトの使っているキャラクターの体力はほぼ減っていないという事で、プライドらしき物も崩壊しつつあった。
センスが下手というよりはハクトの操作が上手すぎるというべきだろう。ぶっちゃけその指さばきはプロにいてもおかしく無いレベルである。
「ハクトはゲームが超上手からな、よし、センス交代だ」
樅木はセンスからコントローラーを受け取るとナイフを持ったキャラを選択した。
「よっしゃいくぜ!」
そのキャラクターを見てセンスはすっかり忘れてしまっていた昨日の姿を消す能力を見せたナイフ男を思い出す。
「そういえば樅木さん」
「あ? 質問なら後にしろよ」
「そーじゃ、もーバトルが始まるのじゃ」
画面にはReady Fightの文字が映し出され二人はやる気満々の面構えになっていたが、センスは構わず続ける。
「昨日のあの消える能力者のおっさんどうなったんっすか?」
「あー奴なら警官達が連れてった、ナイフについてた血でDNA検査するらしいだとよ、まっ十中八九奴が犯人だろうけどな」
樅木はゲーム画面を見たまま興味なさげに答えた。探偵だというのに事件のことよりも今してるゲームの勝敗の方が大事らしい。
「そうすか」
「そーそー、お、どうしたハクト? 隙だらけだぜ」
ハクトがコントローラーの操作を止めると当然画面内のキャラクターも連動して動きを止め、その隙に樅木のキャラクターが攻撃を仕掛ける。
「ちょっ、ちょっと待つのじゃ」
「なんだ? 心理戦ならしないぜ」
「そーじゃねーのじゃ! センス、先程能力者と言ったか?」
「え? あぁ、それがなにか?」
「本当か、モミ!?」
「だから、そうだって」
興奮気味に問いただすハクトなど気にかけんとゲームの画面のみ見ている樅木は、対戦相手が既にコントローラーを手放し勝負を投げている事に気づかず、急にコンボがつながり出したことを自分の才能だと錯覚し全身に熱をこもらせる。
「なぜ、それをはやく言わんのじゃ!?」
「わりぃ、忘れてた」
「忘れてたって……そなたは超馬鹿じゃ!」
「よっしゃぁ!! 勝った! ーーあ、もう一個忘れてたけど、そいつも能力者みたいだぜ」
画面にはYOU WINの文字と樅木の操作していたキャラが表示され、ガッツポーズをとる樅木だったが、そんなこと全く気にせずハクトとカコは唖然とセンスを見て
「セ、センスくん、君が能力者ってほんと?」
「センス、そなた能力者なのか?」
ほぼ二人同時に聞いてきた。
「あぁ、ま、俺もよくはわからないんすけど、一応、体の感覚を操作できる……みたいな?」
「なぜ疑問文なのじゃ?」
「俺自身よくわかってないんすよ、何でこんな能力が使えるのか」
「センスくん」
カコはいきなり両手をセンスの肩に強く置き
「な、なんだよ」
「君以外にも、能力を使える人を知っているかい!?」
眼差しと口調を力強くして聞いてきた。
「いや、悪いすけどしらないっす、もしかしたら知ってたのかもしれないけど、俺記憶喪失すから」
「そうなんだーーよし!」
どういう意図があっての質問かは分からなかったが、正直にそう答えると気合を入れるように両手で頬を叩いて
「僕が、絶対に君の記憶を取り戻して見せるからね」
「ばーか、僕じゃなくて、僕たちだろーーまっお前が一人でやってくれんならありがたく任せてやるけどよ」
「そーじゃの、カコ、ガンバーじゃ!」
二人に肩を叩かれ、そんなことを言われたカコは必死に両手をブンブンふり、間違えただけですよと訴える。
「ははっ、冗談だっつーの」
「そーじゃ、そなたもわかりやすじゃの」
「もう、あんまからかわないでくださいって」
怒ったように口を尖らせるカコを見て笑う二人、そのうち樅木はセンスからの視線に気づくと
「まーお前の記憶はなんとかして取り戻させてやっからよ、も〜しかしたらちっとばかし時間がかかるかもしれねーけどよ、その間は仲良く、楽しくやっていこうや!」
「ありがとっす」
樅木からの言葉にセンスは今一度お礼を告げたのちに、先ほどから気になっていたことを聞いてみることにした。
「そういえば昨日樅木さんが言っていた能力者って二人の事なんすか?」




