第二章その七 『幸福エンドロール③』
「――で、昨夜は一体何があったんだ?三雲ってやつがあの印のついた笛で人を操っていたってとこまではきいたけどよ、あの物騒な骸骨マスクのガキはなんだったんだよ?」
「あいつはスカルって名乗っていたっす」
「スカルだぁ?見た目を裏切らねぇバカみてぇなニックネームだな」
「それであの印のついた代物を作った組織の一員らしく、印のついた笛を回収しにきたらしいっす」
「なに!?それ本当か!?」
「えぇ奴は組織名を“算数スカン”って言ってたっす」
「“算数スカン”だぁ?それが組織名だと?なんつーか」
「センスねぇっすよね」
「だな」
2人は暫し笑い合うと
「――本題に入るぞ」
「はい」
穏やかな空気が一転する。
「お前スカルと何か話したか?」
「……何かって?」
「そりゃ組織のこととかスカルの他にも能力を持った奴がいるかどうかとかさ、そう言う情報見たいなもん聞いてねえか?」
――君は僕たちの組織の一員だったのだ〜
樅木の問いかけにスカルから言われた言葉がセンスの頭をよぎったが
「……特に聞いてないっす」
一瞬言うべきか迷ったが、黙っておく事にした。
「そうか、謎は深まるばかりだな」
「そうっすね」
そう言って、センスはある事を思い出す。
「そんなことより琴音は!?琴音はどうしてるっすか!?」
樅木は答える代わりにスマホを取り出し操作をすると、画面を見せてきた。
「……これは」
それはネットニュースで『家族全員殺害 複数名から暴行の跡』と言う見出しの下に体育館の写真が載せられていた。
「そのニュース通りだ、三雲家は全員死んだ……いや殺された」
センスは記事の隅から隅まで目で追うのに夢中で樅木の声が届いていない。
「どう言う事っすかこれ?」
時間をかけて記事を読み終えたセンスは呟くように言う。
記事では、琴音や琴音の両親が怪しい宗教で詐欺をしていてそれに腹を立てた信者たちが琴音と琴音の両親を殺害したと綴られていた。
そしてその記事のどこにも『スカル』という人物や、『算数スカン』と思われる組織の名前のことなど書かれてはいなかった。
「違う……出鱈目っすよこんなの……あいつは……琴音のしたことは確かに許されないことだったっす…けど琴音は元々人の……人の心に幸せを届けていたんすよ………」
「………俺は三雲琴音に関しては実際会ったことも話したこともねーからなんともいえねぇがよ、それにしてもなぜ琴音を殺したスカルの事は何も触れられてないんだ?あいつ俺に向かって躊躇なくナイフを振ってきやがった。ありゃ間違いなく何人かは殺してるぜ」
「………俺もそう思うっす」
「しかしそんな話聞いた事ないな、あんな目立つ格好した奴ならすぐさま噂くらいにはなっていいと思うんだが」
「――そういえば」
「ん、なんだ?」
「スカルが投げつけてきたナイフってどうしてるっすか?」
「あぁ、それならここだ、ホレ」
樅木は机の引き出しから刃の部分をガムテープでぐるぐると巻いたナイフを取り出し渡してきた。センスはテープを剥がすとまじまじと見つめる。やはり奇妙なナイフだ。形こそは一般的なサバイバルナイフだが、持ち手から刃先に至るまで全てが赤黒い色に染まっている。
「なんなんすかねこのナイフ?」
「さあな、あっ、それお前が持っとけよ、もしまた襲われるようなことがあったらそれ使って自分の身を守れ、ほれそのままじゃ危ねえからこれ巻き直しとけ」
「はいっす」
センスは答えると樅木から渡されたガムテープを刃に巻き直す。
「………俺が怪しくないんすか?」
「ん?どう言う意味だ?」
「あっ、えっ、いやなんでもないっす」
樅木の問いで思っていた事が口に出ていた事に気づいたセンスは慌てて誤魔化したが樅木が納得するはずもなかった。
「うそつけ、何だ?何かあったんだろ?」
隠せそうにないとセンスは話す事にした。
「……俺が怪しく無いのかって聞いたんすよ」
「怪しい?なんでだ?」
「だって普通そうっすよね?記憶がないなんて嘘じみた事言ってる俺が1人の時にあんな奴と会ってたら怪しく思わないっすか?」
「そんな事ねぇよ、俺たちは仲間だろ」
「……センスない嘘つかないでくださいっす」




