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ハイセンスワールド  作者: 桐生 ライア
五感探偵編
7/84

第一章そのニ 『クロモミ探偵事務所②』

 「よっ、おまた」


 部屋を出てリビングに行くとそこにはセンスと年齢の近そうな少年少女がいた。

 一人は小柄で美しく艶のある白髪を腰まで伸ばし髪同様肌も色の白い、いかにも貧弱でおとなしそうな可愛らしい女の子で

 もう一人は緑と紫のパーカーを着て口元までチャックで隠しフードをかぶった少年で、灰色の髪色をしているのが見える。


 「モミ、そやつが、昨日(きのー)()とったやつか?」


 部屋へ入ってきた二人を見るなり、白髪の女の子が独特な話し方で質問した。 


 「あぁ、こいつが現在絶賛記憶喪失中のセンスだ、ほれ、なんか自己紹介しろよ」


 そう言った樅木はセンスの背中を軽く叩く


 「あっ、はい、え〜記憶を失っているので、今のところセンスと呼んでもらってるっす、記憶を戻す手伝いの依頼をお願いしてるので記憶が戻るまでの間協力よろしくお願いするっす」


 「うん、よ、よろしくね、センスくん、僕は火酉鹿子(ひのとり かこ)、カ、カコって呼んでね」


 パーカーを着たカコと名乗った少年は少しおどおどしながらも笑ってそう言いながら手を差し出してきた。センスも同じく手を差し出すと


 「よろしくっす」


 そう言って握手をした。次に白髪の女の子が


 「センスとはみょーな名前(ネーム)じゃの、どーせモミが名付けたのじゃろ、わしの名はハクトじゃ、よろしくのセンス」


 「え、あ、あぁ、よろしくっす」


 ハクトと名乗る女の子の見た目と話し方のギャップに少し動揺しつつも、ハクトとも握手をした。


 「ところでセンスとやら」


 急に真面目でどこか怖いような顔つきとなったハクトは声色を真面目なトーンに変える。


 「ん?」


 「そなた、ボンは好きか?」


 ――ボン?


 「ボン? ……ってなんすかそりゃ?」


 お菓子のことだろうか、それとも最近流行っているキャラクターなのだろうかとセンスはボンとは何か少し考えたが分からず結局質問をした。


 「ボンじゃよ、ボン、わからんか?」


 ハクトはそう言うと両手を使い胸の前でジェスチャーをする。


 「ん、あぁ、えっ〜と、ボンってボイン……巨乳ってことっすか?」


 「そーじゃ! そのとーりじゃ! っで、ボンはすきか?」


 ――何すかこの質問……?


 何故初対面、それも会ってから十分も経っていない少女にそんな性癖を聞かれるのかと戸惑っていると隣にいた樅木に肘でつつかれ


 「キライって言っとけ」


 と小声で言われた。


 「えっと、ボイン……は嫌いっすかね……」


 ――何で初対面のそれも出会って数分の女の子にこんな性癖を告白しないといけないのだろう……何か記憶を戻す事と関係あるんすか? まぁ、確かにデカイよりは控えめサイズの方が好きっすけど……


 よくわからない辱めを受け若干テンションが落ちた本人をよそに、センスの台詞を聞いたハクトの表情は一気にパァッと明るくってゆく。


 「そーか、そーかそなたもボンは()か、わしもじゃ! わしなんてボンが()すぎてボンを使わずにしてるのじゃよ」


 「へ? ボンを使わずってどう言うことっすか?」


 「つまりハクトは母音、あ、い、う、え、おを使わずに会話するんだよ」


 「僕たち出会ってからハクトちゃんが、母音を使ってるの聞いたことないんだ」


 「ふふん、そーゆーことなのじゃ」


 ――なんすか……そのこだわり?


 「……っ痛て!」


 何を言っているのかよく分からず、センスが呆れているととつぜん足元に痛みが走る


 「何だこの、犬?」


 「がうる!」


 見ればそこには白いトイプードルのようだが、頭に1本小さな角のようなものが生えている謎の生き物がいた。明らかに既存の種ではない。


 「あ、忘れてた、そいつはケルベロス、謎の生き物だ」


 「わしが見つけたのじゃ」


 「こ、こいつって新種の生き物なんじゃないんすかね?」


 「多分そうかもな」


 樅木はサラッとかなりやばいことを言う。


 「んなことより、センスの歓迎会しようぜ、鍋だ、鍋」


 「んなことって……えぇ〜?」


 「そーじゃの、ほれ、センスそなた、新入り(しんーり)ならぎゃーぎゃーゆわず歓迎会(かんげーかー)の準備をせんか」


 ――え、おかしくない?


 ケルベロスという謎の生き物の事をさらりと流した事もそうだが、歓迎会の準備を歓迎される人にさせると言うのはいかがなものだろうか


 「そうだ、そうだ、お前昨日、家事全般引き受けるって言ってたろ、ほれ、昨日結局買い物行けてないから行ってこいよ」


 ――あれ、俺パシリ?


 「もー、2人とも、今日はセンスくんの歓迎会でしょ、主役に何やらせようとしているんですか、ご、ごめんねセンスくん」


 唯一カコがまともらしいのが救いだ。


 「しかたねーのー、モミ、金」


 ハクトがそう言うと樅木は財布から一万円を取り出しハクトに渡し、お金を受け取ったハクトは窓を開けて口笛を吹くなり一万円札を上空なげた。


 「え? は? な、何やってんすか?」


 その光景に驚いていると、次の瞬間もっと驚く光景が目に写った。なんとカラスがその一万円札を咥えて飛んで行ったのである。そしてハクトは空に向かって


 「肉、トーフ、ネギ、てきとーなキノコ、白菜はくさー、てきとーな魚」


 とまるで呪文のように鍋の材料であろう食材の名前を次々と言った。


 「何言ってんすか!? 早く追いかけないと」


 「まーまー大丈夫だから少し待ってろって」


 「けど」


 「でーじょーぶじゃ、心配しんぱし無用むよーじゃ」


 ――こいつらじゃ話にならん


 とセンスはカコの方を向に視線を移す。


 「だ、大丈夫だよ、センスくん、し、心配いらないよ」


 「そ、そうすか」


 センスはその言葉を信じることにした。 


 「そんなことより、鍋パーテーはまだじゃが、歓迎(かんげー)ーゲームパーテーを始めると始めるとするかの」


 ハクトはテレビの前のソファーに座り隣をポンポン叩いた。センスがそこに座るとコントローラを手渡す。


 「お、おぉやってやるっす」


 センスがコントロールを受け取るとハクトはゲーム機の電源を入れた。数秒ほどでゲームが起動するとテレビにタイトルが表示された。どうやら格闘ゲームらしい。

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