第二章その五 『スカルアウトロ①』
自身の犯した罪などまるで何も思っていないかのように目の前の少年は心底嬉しそうな顔をしている。
捩じ切れて発火してしまいそうなほど思考を巡らせても、飛び出てしまいそうなほど目を見開いて確認してみても、やはり眼前の少年のことなどちっとも思い出すことはできない。
初めて記憶を失っていることが心の奥底から怖いと思った。
まるで何一つ見えない暗黒の中で背中に得体の知れない冷たい何かを押し当てられているかのような不気味な感覚がセンスを襲う。
「えっと? お、お前は一体……?」
恐怖に耐えきれずゴクリッと息を呑み込んでから、なんとか搾り出すように出した小さな声は少年の歓喜な笑いにかき消された。
「あっそうだこれあげるんちょ」
少年はセンスの言葉を聞こうとせず嬉々とした態度のまま持っていたナイフを差し出す。
「え?」
「約束してたじゃーん! わすれたんかいなー!?」
少年はケタケタと笑いながらそう言うが、やはりなんのことかさっぱりわからない。
そんなセンスの表情を見て少年は
「ありり〜? わかんねぇ? 俺ちゃんだよ〜俺、スカル様だぞ〜」
両手の親指で顔半分をしめている髑髏の仮面を指さしながら言うが、センスが表情を変えないでいると笑い顔をやめ
「あり? ……あぁ、そーやー消されてんだっけ? そだっけ?」
どこか不機嫌そうに頭をぽりぽり掻きながら目を細めると何処を見ているのか分からない目線で呟く。
「け、消されたって……もしかして…記憶…?」
「……そだよぉ〜、あっりぃ〜? もしかして心当たりあるんじゃねぇ〜?」
スカルと名乗った少年は目をギョロリと大きく開けると視線をセンスへと戻し再び嬉々としながら聞いてくる。
「……っ」
センスは聞きたいことが多すぎて、頭の中で整理しきれず、上手く言葉を出せない
「……お前……あいつに……なにしたっすか?」
ようやく出せた質問は自分のことではなく、無残な姿へと変貌している琴音のことであり、声と共に震える指でステージの上、血で染められている琴音を指さし聞いた。
「あ〜アレ? 殺したよ、んなことよりさ〜」
スカルはとんでもないことをなんでもない事のように言い、嬉しそうに話を逸らそうとする。
「……んで」
「はぃ〜?」
「なんっでだよ!!! なんで!? なんで!!?」
「なになに? 怒ってる? ハハッ君は笑顔以外似合わないさ〜、とか言ってみたりしてぇ」
「ふざっけんな!!」
ふざけた態度と言動を変わらず続けるスカルの胸ぐらを掴んだが、それでもヘラヘラとした態度は変わらない。
「答えろ、答えろよ!なんであいつを、琴音を殺した?」
「え〜別に僕ちんは殺したくて殺したわけじゃないんだなぁ〜これが」
「はぁ!? っんだよそれ!?」
スカルはポケットからあるものを取り出す
「俺っちは今日これを回収に来たのだ〜」
「それは……」
スカルの取り出したものを見て、センスはギョッと驚きのあまり尖っていた目つきを丸く変えた。




