第二章その四 『夢から醒めて③』
「――という訳だったんすよ」
センスは警察の前に一旦樅木に連絡し、今回の騒動の一部始終を伝えた。
はじめは信じていなかったようで茶化すようにふざけて話していた樅木もセンスの真剣な声色を聞いているうちにただ事では無いと悟ったらしく真面目に詳細を聞いた。
「……まさかまたあの印のついたもんが出てくるとはな、一体なんだっていうんだ?ーー警察にはまだ連絡すんじゃねーぞセンス」
「どうしてっすか?」
「警察にその笛を押収されたら前のバッチみたいにどこいったか有耶無耶になるかもしれないからな、だから俺が今から向かって回収する」
「なるほど、了解っす」
そう答えると一方的に通話は切られた。
「さてと」
センスは自分も琴音の最後の演奏を見届けようと体育館に向かって歩きだす。
すると
「キャーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
「うわぁーーーーーーー!!!!!!!!!!」
先程のブーイング同様、いや、それ以上の叫び声がきこえてきて大量の人が体育館からあたかも津波のように溢れてきた。
「な、なんすか?」
一瞬呆気に取られたがすぐにただごとではないことに気づき、逃げ惑う人たちをかき分け体育館の中に入る。
体育館のステージ下にはもう観客はおらず、倒れたまま動かない二つの死体しか残っていなかった。
そしてステージの上ではスポットライトに照らされた琴音が血塗れで倒れていた。
そのすぐ側には先程までは真っ白な髪を所々血の赤色で染めた目から下は髑髏のその部分を模した仮面を被った少年が赤黒い刃物を持って立っていた。
「え? え? 琴音……え?」
今日はあまりにいろんな事が起き過ぎて、まだ目の前の状況に脳の思考が追いついていない。
不審人物への恐怖で逃げる事も友達を傷つけられた怒りで叫ぶ事も出来ずにただ茫然と立ち尽くす。
少年はそんなセンスに気づくと
「あれれのれ? ま〜だ逃げてないノロマちゃんがいたのかいな〜、そんなノロピー野郎は死あるのみぃ〜」
ナイフを構え軽い身のこなしでセンスとの距離を一瞬にして詰めてきたが、ナイフがセンスの胸を貫く瞬前手を止め
「ーーありりりん? やっぱそうだ、ひっさしぶりぃ〜」
少しの間を置き、覗き込むようにセンスの顔を確認すると嬉しそうに目を細めながらそう言った。
――こいつ俺を知っている…………!?
センスはいきなり告げられた少年のセリフに動揺を隠さずにいた。




