第二章その四 『夢から醒めて②』
「大丈夫っすよ……とは気休めでも言えないっすね、今回琴音がしたことは重罪っす、あの二人はもう死んでいるっす……実際琴音が手を下したわけじゃないっすからどうなるかわかんないっすけど、きっと世界は琴音を裁くはずっす……」
「……うん……わ……わかってる……わかってる」
「だけど」
「……え?」
「もし……もしも琴音が罪を償うことができたとしたら、今度こそは本当に友達になるっす!」
胸の痛みを押し退けて、石のようにつっかえている思いをなんとか言葉に、そして若干の強張りがあるものの表情にしても出した。
「ありがとう……でも……僕のしたことは……償いきれるものじゃない…… だから……だから」
「罪を償いきれないって言うのなら俺も罪を償えるよう友達としてじゃなく“クロモミ探偵事務所”の正社員として手助けしていくっすよ」
「ありがとう…ありがとう…ありがとう………」
琴音は泣き止む気配がない。センスは何も言わず琴音の肩を優しく叩く。
それ以外何をすればいいのか、自分に何ができるのか分からなかった。
■ ■
「……ごめんね」
数分後泣き止んだ琴音は開口一番そう言った。
「なんかの謝ってばっかっすね」
「仕方ないよ、今までの人生ずーっと謝り続けて、誤り続けたんだから」
苦笑しながら冗談混じりに言ったその言葉にセンスも口元を緩めた。
「なんすかそりゃ」
それからセンスたちはとりあえず話をした。
今までのこと、これからのこと、何気ないこと、将来の夢、なんでもいいからと話し続けていた。
話をする事で嫌な現実から目を逸らしていたのだ……。
「――それじゃあ現実から目を逸らすのは終わりにしよう」
突然、なんの前触れもなく、いきなり夢から醒めたかのように三雲はそう切り出した。
それでもセンスはおどろく事もなく首を縦に振った。
「……そっすね」
「僕はこれから最後の“幸福の音楽会”を開く、そして命令するよ『今までのこと……幸福の音楽会の事を忘れろ』ってね」
「それが、いいかもしれないっすね」
「悪いんだけどさ、センスくんは僕が演奏している間に警察に電話してくれないかい?」
「……本当にもういいんすね?」
答えは決まっているのだろうが、センスはそう聞いた。
もしかするとその言葉は三雲の覚悟を聞いたものなのではなく、まだ 三雲と別れたくないというセンスの本心が漏れたものなのかもしれない。
「うん、これは友達としてじゃなく、依頼として頼むよ」
「……わかったっす」
センスが答えると三雲は命令に従いずっと黙ったままおとなしくしていた観客の方を向いて言う。
「皆さんすいませんが“幸福の音楽会”は今日で最後となります」
ずっと静寂が貫かれていたステージ下だったが、三雲の言葉によって嵐のようなブーイングが起きた。
「琴音、うるせーから外で電話してくるっすわ」
「うん、よろしくね……」
センスはステージを降りて外へ向かう。
少しすると耳障りなぴたりと止み、代わりに美しい笛の旋律が辺りに広がった。




