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ハイセンスワールド  作者: 桐生 ライア
幸福の音楽会編
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第二章その四 『掌握の笛③』

 その日を境に少しずつ僕の世界は変わっていった。誰一人観客のいなかった夜の笛の練習時にも掌握の笛を使うと、少しずつ周りに人が集まるようになったり、僕をいじめていたクラスメイトたちは


 「もう一度あの笛を聞かせてくれよ」


 などと言って僕をいじめるのをやめていった。笛の練習中集まってくる人は十人になり、二十人になり、そして三十人を越したくらいの時に誰かが提案した


「こんなに素晴らしい演奏ならどうだ、体育館かなんかを借りてそこで披露してみないか?」


 「おお、それはいいな」


 「私たくさん友達に声かけちゃう」


 提案に集まっていた全員が賛成し近所の体育館を借りて休みの日に演奏をすることになった。前置きはうまく話せなかったが、結果的に大成功といってもよかっただろう。演奏を終えた後の拍手の嵐はとても気持ちよかった。そしてすぐに2回目も開くことが決まった。僕は両親にその事を伝えた。


 両親に来ても来てもらいたかった。両親に僕がたくさんの人に認められているところを見てもらいたかった。しかし、二回目、三回目と何度演奏会を開いても両親は見にくる事は一度もなかった。両親は僕の事などどうでも良いと思っている事に改めて認識した。

 そしてもう一つ、その頃には掌握の笛には特別な力があると言う事にも気づいていた。


 それは掌握の笛の音を聴かせた相手に簡単な命令が出来るという事だった……。


 僕はもう限界だった。

 僕のことを何ひとつ理解しようとせず、そのくせ何も言わないくせに自分の想いを理解させさせようとし、できないと怒る。

 我慢してそんな自分勝手な両親に逆らわず十六年間暮らしてきたのは、友達や気軽に喋れる存在はおらず、いじめられていて家以外居場所が無かったからだ。


 といってもその唯一の居場所も苦痛だけを感じさせていたのだが――だからといって両親に逆らって万が一家を追い出されたら本当に死以外の選択は無い。

 両親の支配は洗脳に近かった。


 でも今の僕にはちゃんと“幸福の音楽会”という居場所がある。

 両親に捨てられてもきっと救ってくれる人がいるだろう。


 そう思うと両親に逆らう事への恐怖心は薄れていき、習い事を全て勝手に辞めそのうち学校にも行かず適当に毎日を過ごし始めた。


 もちろん両親は烈火の如く怒り狂っていたが、気にも止めなかった。


 しかし昨夜両親は僕が手に持っていた掌握の笛を奪って捨てようとした。僕は掌握の笛を取り上げようとする父さんを突き飛ばし家から逃げた。そして適当な場所で笛の演奏をし、笛の音に誘き寄せられた人たちに命令した。


 「ぼ、僕が自由になるため、邪魔な家族(ごみ)を処分してくれない……かな?」

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