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ハイセンスワールド  作者: 桐生 ライア
幸福の音楽会編
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第二章その四 『掌握の笛①』

 ーー少しだけ昔話をしようか……。


 父さんは昔からとても厳しい人だったし、母さんも僕の教育に熱心だった。

 そんな二人のもとに産まれたからだろうか? 子供の頃からいくつもの習い事をそれこそ寝る間どころか食べる間も惜しんでやらされていた。

 ピアノ、ソロバン、書道、塾、英会話、通信教育、そのほか多数……。


 自分で言うのもなんだけど、どれもそこそこできた方だと思う。

 どれも何度か賞を取ったこともあるし、学校のテストだって九十点以下を取った事は一度もなかった。


 しかし、両親が欲しかったのは、優秀な息子じゃなくて、“完璧な息子”だったらしい……。

 

 「誰にも負けるんじゃない」これが父さんの口癖だった。

 よく言うよ自分だって社会という大きな歯車の中では勝者どころか何者にもなれない癖に……。


 「貴方に遊んでいる暇はないの」耳が腐りそうなほど繰り返し母さんから言われた言葉だった。

 そんなこと言って自分は付き合いが大事だなんて言って下らないお茶会に出席するため何着も無駄な服を購入しているのを僕は知っている……。


 なんで勝たないといけないのか、どうして楽しんで生きてはいけないのか、答えは全て「僕のため」だった……。

 

 両親にとってニ位は、一位の次じゃなくて一位になれなかった負け組という考えであると同時に、僕は二人が他人から羨まれるためだけに存在する道具なのだと小学生低学年の時にはすでにそう気づいていた。

 

 父さんの笑顔など幼稚園の時に一回見たきりで以来見ていない。


 その一度だけ見た笑顔というのが僕が横笛を始めて吹いた時だった。僕がおもちゃの横笛を何気なく、ただ思うがままに吹いている時


 「上手いな」


 それだけ、ただその一言だけ言って父さんは微笑んだ。

 それからどんなに理不尽に怒られたとしても横笛を吹けばその思い出が蘇り、父さんのことを好きにはなれないが嫌いになりきる事はなかった。


 例え話すたびに「勉強したのか?」と言われ続けても、休日に数冊の問題集をノルマの様に押し付けられても、その問題集を解き終えるまで深夜になっても寝ることはおろか食事すらとらせてもらえなくても、夏休みなど長期休暇中は習い事以外の時間で外に出してもらえなかっとしても……。

 

 それでも……それでも僕にとって両親はかけがえのないものだった。

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